お騒がせ会見 クリスマス編−5
緑谷から爆豪にバトンタッチしたのと同様、轟も最後の学校で爆豪がいなくなった後に校庭で合流した。
轟が現れた瞬間の女児たちの悲鳴たるやすさまじかった。有名人なので男児たちもそれなりに歓声を上げていたが、だんだん彼らは轟を見て笑いを漏らし始める。
この面白さに気づけるのは高学年だろう。かくいう応利も、轟を見て噴き出した。
轟自身は、応利と同じサンタの格好でスタイリッシュに決めている。しかし、焦凍が乗っているのは茶色い毛並みの馬だった。馬の頭にトナカイのような角がついている。
「いやそれ馬じゃん!」
「トナカイだ」
馬なのにトナカイの角をつけている、という高度なギャグは、明らかに男性層への受けを狙っている。
「てかトナカイになるんじゃなかったっけ?」
「この頭見ろ。どう見てもサンタのが自然だろ」
「それはある」
確かに紅白頭なのだからサンタの方が良いかもしれない。そういえば前に、白馬に乗って現れたことがあったな、思い出しつつ、応利は焦凍の後ろにまたがった。そうして轟は、馬を慣れたように動かした。教室の窓から手を振る子供たちに、2人で手を振り返してから敷地を後にした。
コンクリートの上を蹄の音を響かせて歩くシュールな光景。道行く人々は、これまでと違ってすぐ近くにいるため、少し笑いつつも声をかけてくれた。
「パスカル〜、ショート!」
「格好いい!」
「何あれウケる」
「馬…トナカイじゃねぇ!」
ギャグに笑う者もいれば、ファンなのだろう、極まったように声を上げる者もいる。その後ろで、手綱を握る轟の代わりに手を振っていると、サンタってこういうものだったっけか、と一抹の疑問が生じる。だが、皆が笑顔になってこちらを見てくれるのは、やはり嬉しいものだ。
「回る学校の数は少ないけど…ゆっくり街の人といられるのはいいな」
「そうだな。俺も、もう少し街の人たちにオープンになった方がいいのかもしんねぇな」
轟は比較的きちんと目的を果たそうとしているらしく、イメージアップのためのヒントを得ているようだった。
緑谷たちに比べてペースは落ちるので、回る学校は少ないが、濃い時間と言えた。
やがて目的の学校に着くと、馬を校門に止めて裏口から校内に入る。やはり女の子たちの悲鳴が響き、その甲高い声は、今までで一番きつかった。何とかプレゼントを渡し終えると、再び裏口に向かって馬のところへ戻る。
すると、轟は足を止めて応利の顔を覗きこんだ。
3人の中では一番身長が大きい轟は腰をかがめて目を合わせる。
「寒いか?」
「へ、なんで?」
「鼻、赤くなってるぞ。応利の方がトナカイみてぇだな」
「…うるさいな」
少し気恥ずかしくなって顔を逸らすと、轟はふっと大人っぽく笑う。轟はこうした大人の男というような笑みを浮かべることが増えたように思う。
それでも次があるため馬に乗ると、轟はじわりと体に熱を込めた。個性を使ってヒーターのようになっているのだ。馬に伝わらないよう上半身だけである。
応利を気遣ってのことだ。
「…ありがと」
「おう」
さらりとこうした気遣いをしてくれる轟はきっとモテまくりだろうに、応利を追いかけるのだから世の女性たちに申し訳なかった。
「礼はベッドの上でいいぞ」
前言撤回、すぐ欲望を口に出すデリカシーのない男だ、世の女性のところに行かなくてよかった。