PAR AVION 酩酊メーデー−2
それから少しして、応利は切島に花見の誘いを受けた。同期で休みを合わせようということで、応利は有給の消化のためにも参加することにした。
応利が参加すると聞いてから、爆豪と轟も珍しく休みを取って参加することにしたらしく、2人の誘いを断った応利としてはこれで埋め合わせになると踏んだ。もしあの日ベランダで断ったことを引き合いに出されたら花見のことを言うつもりである。
場所が応利の家の近くだったこともあり、応利と切島、として上鳴の3人は早くから場所取りがてらもう酒をいれることにした。
それが、すべての間違いだったのだろう。
***
切島は、花びらの舞う中を歩いてきた轟と爆豪の姿を見たとき、助かったような、むしろ大変なことになってしまうような、相反する複雑な感情を抱いた。だが来たことに変わりなく、2人が応利を見て顔をしかめるのを見て、もう苦笑するしかなかった。
「よっ、轟、爆豪」
「…応利はどうした」
「いやー、場所取りかねて朝からここいたんだけどよ、応利が上鳴と飲み始めて、それが結構ヒートアップしてよ…他の花見客に絡んで飲みまくって、俺がさっき回収してきたとこだ」
2人はシートの上に靴を脱いで上がると、応利を挟むように座った。応利はといえば、もうすでに、べろんべろんに酔っている。
上鳴は応利に潰され、二の舞になることを恐れた瀬呂や緑谷、麗日たちはシートの少し離れたところでのんびりと飲んでいる。切島は、悲しいかな生来の性格が災いして、そんな応利を放っておけず、適当にいなしながら轟たちを待っていた。
「おっ、来たな残念なイケメンパイロットども〜」
「てめぇ酒豪のくせに何酔ってんだ」
「酔ってねぇわハゲ!」
同期の中でも最も酒に強い応利がここまで酔っているところを見るのは初めてだ。爆豪たちも同じで、少し面白そうにそれを見ていた。
「まぁ飲めよ」
「うるせぇな」
「応利、俺にもく…やっぱなんでもねぇ」
「遠慮すんな轟ィ、ほら」
応利は顔を赤らめながら、存外しっかりとした手つきでカップに焼酎を注いだ。適当に氷を入れて爆豪に渡し、もう一杯を轟に渡した。明らかに轟の方には氷が入っていない。
珍しく轟は応利から引いたようにするが、応利は強引にストレートの焼酎を押し付けた。爆豪はにやにやとしながらそれを見て、自身のロックに口をつける。
「っ、げほっ、げほっ、おい応利これ…!」
「ん〜?」
しかし爆豪は口をつけたカップに咳き込んだ。轟はそれを恐ろしそうに見ている。
「これウォッカだろ!!」
「匂いで分かるだろ〜、俺ん家で小分けにして保存してたの持ってきてやったんだ感謝しろよ〜、はは」
「……、」
焼酎の瓶に入っていたのはウォッカだったらしく、不意打ちを食らった爆豪はすでにつらそうで、轟はストレートで渡されたものの正体に戦慄し、こっそりと氷を入れていた。
こんな調子で酔っている応利に近づくヤツなど同期にはおらず、応利に恋する2人がうっかり隣に座ったことで、瀬呂あたりはあからさまにホッとしていた。
切島は一応、応利たちが暴走しないよう見張ってはいるが、迂闊に声をかけるような真似はしない。とは言っても、先ほど「水の水割り欲しい」と応利に言ったら、水を水で割って差し出してくれたので、恐らくどうとでもなる。
しかし応利に恋する2人が殊勝にもウォッカを飲むのを見ていると、それが面白くて見守ることにした。
もちろん、パイロットとしての自覚はあるし、応利にも相手がパイロットであることは分かっているようなので、羽目を外すようなことはないだろう。