正月太りは無関係−2


翌日、さっそく太志郎は近くのデパートでまとめておせちと日本酒を買ってきてくれた。ビールもある。田作りや昆布巻きとの相性は最高だと思う。
ただ、その量は非常に多く、とても2人で消費できるようなものではなかった。太志郎の脂肪回復という目的をもってしてもである。


「なんでそんな大量に…」

「ん?あぁ、環も来る言うてたさかいな」

「え、環君も?」


朝からしこたま買い込んで事務所に帰って来た太志郎の話によると、どうやら環も応利と同じような境遇らしい。家族が旅行に行ってしまい家に1人なのだという。
インターンがあると思って家族は環を頭数に入れなかったようだが、さすがに高校生を三が日に働かせたりしない。だが、雄英だから、と思われていそうだ。つくづく闇が深い。

そんな環から、三が日の期間中に事務所に言ってもいいか太志郎に窺いのメールが来たらしく、太志郎はおせちを多めに用意して快諾したとのことだ。

環は早くも昼前には江洲羽に到着した。


「正月早々に申し訳ない…俺なんて家族にも旅行に誘われないようなヤツだから…」

「いやそれこそ正月早々にネガティブやってんじゃねぇよアホ」


事務所の扉から現れるなり初ネガティブを披露して見せた環の額を、応利はデコピンしてやる。のっそりと額を押さえる環の頭を、応利はガシガシと撫でてやった。


「俺も家族に旅行誘われなかったんだ。一緒じゃん」

「…、応利さん…」

「にしても、環君、仲の良い幼馴染いたよな?サー・ナイトアイのとこでインターンしてるっていう」

「ミリオは…確かに家にいるけど、さすがに幼馴染といえど正月に邪魔するのは……」

「あー…うん、それは確かにそうだ」

「そんなとこで何しとるん2人!はよ入り、寒いやろ」


そりゃそうだ、と納得していると、室内の太志郎に急かされる。応利は環を室内に迎え入れた。


「何はともあれ、気にせずゆっくりしていきな。今、お吸い物作ってるから」

「っ!応利さんの手作り…!」


パッと顔を輝かせる環。そんな特別なことでもなかろうにとは思うのだが、奥から「マジで!?」という太志郎の声も響く。2人とも何度も応利の料理を食べているはずなのだが。


そうしてお吸い物も用意し、事務所内のソファーに座ってローテーブルにおせちと並べる。豪勢な料理の数々に、応利もテンションが上がった。体格が大きい太志郎が正面に座り、応利と環が並んで座る。
それぞれ用意ができたところで、「ほな、いただきます」太志郎が言ってから食事が始まった。

食べ始めて早々に、太志郎と応利は日本酒を呷る。爽やかな吟醸の甘味とフローラルな香りが非常に美味だ。


「やっぱこっちのは味薄いね」

「俺も思った…全体的にしょっぱい気がする」

「そうか?」


おせちを食べていると、関東との味の違いに応利と環が気付く。なんとなく全体的に、関西のものの方が関東よりも薄味で塩気があるような気がする。あくまで気がする、というだけだが。
特に伊達巻きや昆布巻きが顕著に違う。


「まぁでも日本酒に合うからいいや」

「…、いいな」

「環にはまだ早いで〜」


ぐい、と応利が飲むと、それを羨ましそうに環が見る。正月っぽい感じだ、この子供が大人の飲む酒を物欲しげに見る光景は。


「ちなみにぜんざいもあるから」

「応利〜、さすがやわぁ」

「来てよかった」


やはりオーバーなリアクションの2人に、応利は小さく苦笑を返し、誤魔化すようにまた酒を飲んだ。


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