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1000文字未満のSS夢ダイゴ|チリ2023/02/17【デイジーのワルツ】
Character: ダイゴ
あっ、と声が出た時には世界が90度回転していた。ふかふかのソファに押し倒され、起き上がるのを遮るようにダイゴさんが覆いかぶさっている。その体が部屋の照明を隠し、ダイゴさんの形の影がわたしに落ちる。影になったダイゴさんの顔は笑っているようだったけれど、何かが違うようで少し恐ろしく見えた。
「ナマエちゃんって本当に隙だらけだね」
ダイゴさんの右手がわたしの頬を包む。じゅっ、と音がしそうな程熱い手のひらが頬を焼いてゆく。そんなにぎゅっと手を押し付けたらファンデーションが付いちゃう、混乱する頭がどうでもいい事を考える。今考えることはそんな事じゃないはずなのに、目の前のダイゴさんと目を合わせていると何も出来ない。
ダイゴさんが悪戯したココドラを目の当たりにした時のように困った顔で笑う。状況が状況でなければ釣られてわたしも笑っていただろう。でも頬は石のように固くて動かない。どうしていいか分からず、ぎこちなく視線を逸らしてダイゴさんの次の行動を緊張して待った。
「抵抗しないなら、このまま手出しちゃうよ」
ダイゴさんの声は軽かった。コーヒーに入れる角砂糖の個数を聞くように、よくある会話の一つのように、からりとした声でわたしに訊ねた。現状とのちぐはぐさに、今すぐにでも冗談だと言われたくて視線を戻す。顔に広がる薄闇の中で綺麗な青い瞳が不気味に光っていた。
「うーん、その顔はちょっと狡いかな」
頬に添えられていた手が離れ、ダイゴさんが身体を起こして天井へ重たいため息を吐いた。視界が明るくなって、空気が元に戻った気がした。わたしもほっと胸を撫で下ろす。と、視線を下げたダイゴさんと目が合う。そこに居たのはいつものダイゴさん――笑顔が可愛くて格好良くて、わたしの憧れる大人の人だった。
「旅に出るつもりなら、どんな時でも気を抜いちゃいけないよ。女の子は特に危ないんだから」
差し出された手を引っ張って起き上がる。ああなんだ、そういう意図だったんだ。突然の行動の理由が分かってすっかり不安がなくなる。
なのにどうしてだろう、胸がちくりと痛い。どうしちゃったんだろ、わたし。にわかに速くなる鼓動に、押し倒された時以上に困惑して耳が赤くなった。
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