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1000文字未満のSS夢
ダイゴチリ

2023/01/31
【とけた魔法】

Character: ダイゴ

 その時のわたしは特に深く考えもせずに喋っていた。誰に言ってもどうしようも出来ないことだったし、今目の前にいる相手はこの手の愚痴に一切手を差し伸べることはないと思っていたから。だから、
「えっ…、今なんて、」
「だから、ボクにすればいいんだよ」
 にこりと微笑むダイゴさんに頭が真っ白になった。
「それとも、ボクじゃ役者不足かな」
 言葉こそ謙虚だったけれど、強い眼差しは自分こそ相応しいと言わんばかりにきらりと輝いている。まさかこんな展開になるとは思っておらず、わたしは「えーっと、」と言葉を濁して視線を逸らした。
 両親が過保護で、恋人もまだ出来ないなら親の紹介する人と結婚を前提に付き合えと言ってきて困ってる――それは事実ではあったけど、それを口実にダイゴさんと付き合おうだなんて考えていなかった。だからダイゴさんが機嫌の良さそうな笑顔で「ご両親への挨拶はいつがいいかな」なんて尋ねてくることへ呆気に取られてしまう。
「そうだ、ボクのお気に入りの石も手土産に持っていこうか」
「えっと、その、」
「もちろんご両親の好みの物を用意するよ」
「あ、りがとうござい、ます…、でも、」
「どうしたんだい? まさかボクに言ってしまった事を後悔してるのかな」
「そんな事は……」
 後悔なんてしていない。ただ、こんなにも乗り気になるとは思っていなくて、ただただ状況が飲み込めない。だってダイゴさんはこんな嘘みたいな話を真に受けて自分を彼氏にしろと言う人間じゃない。ダイゴさんはもっと清く正しい人間のはずだ。
「じゃあいいよね。これからよろしく、ナマエ」
 ダイゴさんがうっすらと赤い頬で微笑む。わたしの中のダイゴさんはそんな人じゃない。ダイゴさんはこんな馬鹿らしい口実で恋人を作ったりしない。
 けれどダイゴさんはたしかにそう言って満足そうにわたしをぎゅっと抱きしめるから、魔法はとけてしまったけれど恋心は変わらずダイゴさんに時めいていた。

2023/01/21
【曖昧プロポーズ】

Character: ダイゴ

「ダイゴさんって宝石を探す事もあるんですか」
 わたしには何がどう貴重なのか分からない地味な石を楽しげに眺めているダイゴさんに尋ねる。どう見てもその辺に落ちてる石ころにしか見えないんだけど、なんでも稀少的価値のある鉱物なんだとか。
 ダイゴさんは石からわたしへと視線を向け、少し首を傾げてから「時々ね」と笑った。けれどテーブルに広げられた『お気に入り』は宝石からは程遠く、特注の展示ケースに飾られている石もとても宝石には見えない。
「何か、欲しい石があるのかい?」
「えっと、その……」
 わたしは探すのかと聞いただけなのに、勘のいいダイゴさんは質問の意図に気付いたらしい。透き通る青の瞳が柔らかく微笑む。けれど情けないことに勇気が出せなくてわたしは言い淀む。
 欲しい石は確かにあった。そしてそれはダイゴさんから貰うから意味があるもので、けれど我がままを言ってねだる物ではなくて。わたしの唇はどんどん重くなった。
「遠慮しないで言っておくれよ」
 ダイゴさんは笑みを浮かべつつも困ったように眉を下げていた。そんな表情をさせた事に胸が痛む。こんなに深刻に聞かれたら言うしかない。
「ダイヤ、モンド」
 重たい唇を無理やり持ち上げ宝石の名前を紡ぐ。清流のような透明な瞳が大きく見開いて、ぱちぱちと数回瞬きを繰り返した。
「もっ、もしその指輪くれるなら…、これからもずっと一緒に居てもいいかなぁ……、って、でもその、」
 冗談だよ、と続く言葉はしかしダイゴさんの意外な声に遮られる。
「本当かい?」
 きらりと光ったのはダイゴさんのアイスブルーの瞳で、それはわたしをまっすぐに射抜いてくる。
「ナマエ、ボクにはあまり冗談は通じないんだ。今の言葉、本気にするよ?」
 ほんのちょっとした雑談で、決してこんな大層な話になる筈なんかじゃなかった。けれどダイゴさんの眼差しは真剣で、今さら冗談だとは言えない。
 わたしは「いいよ」と頷いてこの曖昧なプロポーズを赤くなった頬で受け入れた。

2023/01/18
【だって可愛いんだもん】

Character: チリ

 時々、自分は適当に言葉を発しすぎじゃないかと思うことがある。
 ちょうど今もそうで、評価シート記入の為に午前中の実技テストの録画映像を見ながら何度も「かわいい」を連発してしまっている。一緒に見ているチリちゃんがその度に不可解だと言わんばかりに眉を顰めているけど、普段あまり表情の変わらないアオキさんがバトル中に見せる表情の変化は少なからず可愛い成分を含んでいる。もちろんそれだけじゃないのは分かってるけど、でも可愛い部分を見付けたらついその言葉を言ってしまう。
「ポピーの事可愛い言うた口でアオキさんの事も可愛い言うんか」
 大袈裟に顔をしかめるチリちゃんの口調は明らかにわたしを咎めている。確かに言いたい事は分かるんだけど、それがわたしの精一杯だから仕方なくて。なのに、
「言葉はな、ちゃんと使た方がええで」
 少し残念そうに、憐れむようにわたしを見つめてぽん、と肩を叩いた。そう言うチリちゃんだって頻繁に「かわいーなぁ!」って言ってるくせに、自分の事を棚に上げてよく言えるものだ。
「じゃ、これ頼むわ」
 そんなチリちゃんはいつの間にか書き上げていた挑戦者の評価シートをわたしに押し付けひらひらと手を振った。でもデータ入力は各自でするようにとつい先日トップが言ってたばかりだし、デスクには今日中にやっつけなきゃならない仕事が積んである。ここは毅然とした態度で断らなきゃ。
 けれど「次の面接の準備があんねん、頼むわナマエ〜」チリちゃんが両手を合わせてあざとく小首を傾げる。普段はキリリとした眉をほんの少し下げて垂れ目がちの深紅の瞳を柔らかく細めて作る微笑みに、一体誰がノーと言えるのか。わたしはここでもまた「かわいい」と零して、入力作業を引き受けていた。
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