「事故・・・?」

あの電話からさらに3週間ほど経ったある日。

セフィロスの部屋に一人の男がやって来た。
オートロックのインターフォンではない、直接部屋の前に来て鳴らしてきた。

寸分の狂いのない仕立ての良い黒いスーツに身を包み、漆黒の髪をきれいに束ねていた。
神羅カンパニー総務部調査課の者だと名乗った。

セフィロスが事故により殉職したと、それだけを伝えた。

nameはぎりぎりの意識を奮い立たせたが、言葉が出ない。

数分間の沈黙の後、調査課の男は口を開いた。

「荷物を」

セフィロスの部屋である以上、自分はここを出なくてはいけない。

「わかりました、まとめます。今日中には・・」

「取り急ぎ、今必要な物だけで良いです。それ以外の物は追って送ります。身分証、現金、貴重品、当面の衣類・・ひとまずそれをまとめてください」

何を言いだすのかとnameは怪訝な顔で男を見つめた。

「お腹の中に、子どもがいますね?」

nameは咄嗟に腹部を抑えた。

「私は調査課の人間です。セフィロスの近辺を調べてあなたに辿りつきあなたの事も調べています。通院歴も」

俯き何も言えなかった。

「会社が・・あなたに辿りつけば必ず拘束されます。お腹の中に子供がいると分かれば研究材料にされます、あの英雄の遺伝子を持った子供だと」

男は話しながら脳裏に、人を人とも思わない研究をし続ける研究者の姿を思い浮かべた。
相手が子供だろうとなんだろうと容赦はしないだろう。

「あなたは、どうして・・」

「今あなたの事を知っているのは私だけです。会社から命令が下されればあなたを今ここで捕まえなくてはならなくなる。その前に、このミッドガルを出てください」

表情が読めない目の前の男は、何故自分にこんな風にしてくれるのかは分からなかった。



「ここで、大丈夫です」

ミッドガルを出て、フェリー乗り場へと来た。

男はバッグをnameに渡した。

「あなたのIDや情報はこちらで操作します。何かあればこちらに・・」

受け取った瞬間にnameは涙を流した。
嗚咽を漏らしながら泣く姿をみて男は肩を掴み目を見据えた。

「どうか、生きてください。子供と一緒に」

船の中に乗り込むnameを見送り、男は車へと戻った。



あの日から数年。

英雄と呼ばれた男の姿は最早なかった。

正確に言えば英雄の姿をした別の何かになってしまっていた。

「セフィロス・・・」

古代種の神殿でまさか会うとは思わなかった。

動揺した一瞬の隙に刀が突き付けられ激痛が全身を巡った。

「くそっ・・・!」

銀の髪を揺らし神殿の中へと入って行く姿を意識が朦朧とする中見つめた。

暫くするとクラウドたちがやってきて何かを叫んでいる。

その時最後に見たnameの姿が脳裏に浮かんだ。



In Love Again