Gladiolusー
『日が暮れるの早くなったなぁ』
シギルは専門教科講習を終え帰宅していた。
日はすっかり暮れて、電灯がつき始める。
ノクトやプロンプトと帰らない時は、終わったらトークルームに連絡してイグニスが迎えに来るか、家からの迎えを待つようにしていたが
今日は歩きたい気分だった。
なんとなく胸のモヤがあって、いつものようにノクトたちに会う気がしなかったのだ。
下を向きながら足取り重く歩いていると、前から他校の男子生徒数人が歩いてくるのが見えた。
特にこちらを見てるわけでもないが、何となく1人だと心細く感じる。
だんだんと距離が近づいてくるうちに1人の男子生徒と目が合ったが、シギルは目を逸らした。
後ろから肩に温かい手が触れ名前を呼ばれ
立ち止まり振り返るのと同時に
すれ違い様に男子生徒たちもこちらを見て行った。
『…グラディオ』
『よぉ、遅くなる時1人は危ないから連絡しろって言われてんじゃないのか?』
シギルの横を数歩歩いて行った男子生徒たちがデカいなーと小さく話してるのが聞こえた。
流れるような動きでグラディオが自分と男子生徒たちの間に入って呼び止めてた事にシギルは気がついた。
『ごめん、歩いて帰りたかったから』
そんなに厳しい口調で言ったわけではないが、叱られた子どものように下を向いたシギルの頭を軽く撫でてグラディオは歩くように促した。
『俺が連絡しておくからたまには家に寄って行けよ。イリスに会うのも久しぶりだろ?』
◆
『これはこれは、お久しぶりでございますね』
グラディオの家に着くとジャレッドが出迎えてくれた。
『お兄ちゃん…だあれ?』
玄関先の賑やかな声を聞いて2階からイリスが顔を出した。
『イリス、シギルだ。小さい頃に会ったきりだもんなぁ』
こんばんは、と挨拶をするとグラディオの後ろに隠れていたイリスは恥ずかしがりながらも挨拶を返してきた。
夕食はとても賑やかでイリスが学校での出来事や友達のことをしきりにシギルに話していた。頷きながら聞いているグラディオを見ると、可愛くて仕方がないというのが伝わってくる。
ちゃんとイリスの友達の名前を繰り返しながら話を聞いてるのを見てると、なるほど女性にモテるわけだと妙に納得した。
『あー、沢山食べちゃった!すごく美味しかった!ごちそうさま』
『頭使ったんだろ?よく食べよく眠らないとな』
グラディオはそう言って笑い、イリスは2階の自分の部屋を見て欲しいとシギルの手を取り連れて行った。
『これはねぇ、』
自分の部屋にあるコレクションをイリスは嬉しそうに説明している。
懐かしい、小さい頃自分もこんな風に集めていたとシギルはイリスと遊びながらコレクションを眺めた。
ノックがしてグラディオが入ってきた。
『イリス、宿題は終わったのか?風呂入れよ』
『まだシギルと遊びたい!』
『シギルもそろそろ帰らないと行けないから、また今度な』
えー、と言うイリスをグラディオは抱き上げて階段を降りて行った。
その後に続きシギルも降り、イリスへまた必ず遊ぶことを約束した。
『少しは気分転換になったか?』
ソファに座るとジャレッドが温かいミルクティーを用意してくれていた。
気を利かせてそっとその場を去り、ドアがパタンと閉まる音が聞こえた。
『うん、ありがとう。賑やかな食卓で楽しかった』
アイツは良く喋るからなぁとグラディオはカップを取り、紅茶を飲む。
『30分後に迎えに来るようにイグニスに連絡しといたからな。』
飲もうとしたミルクティーから口を離しシギルはギョッとした。
『なんで家じゃなくてイグニスなの!?』
『いつもなら喜ぶだろ、どうした急に』
そう言われて口を噤むシギルの様子を見てグラディオは笑った。
『ちゃんと話せよ、このまま気まずいのも嫌だろ?』
何をどこまで知ってるのか聞こうとしたが、グラディオの顔を見たらその必要はないと感じた。
『ありがとう…』
気恥ずかしそうにするシギルを横目に
グラディオは読みかけの本を開いた。
秒針の音が静かにリビングに響いていた。