20241111







「オイ。人の仕事部屋でなにをしている」

 夕食を兼ねた長い会議のあと、執務室に戻ったリヴァイを待ち受けていたのはコソ泥のような動きをする居眠り野郎だった。扉を開けた瞬間にビクッ!! と大仰に驚いてみせ、かと思えばなまけものよりものろのろふり返り、奇妙な笑顔をはりつけて両手を後ろに隠した。百点満点、はなまるのつく怪しさだ。これは問い詰めなくてはならない。

「な、なぁ〜んにも!」
「なあーんにも。……なわけあるか馬鹿野郎。いま隠したものを出せ」

 デスクと自身の身体とで挟み撃ちにするようにして、居眠り野郎を囲う。ナマエからは変な汗がだらだら出ている。

「お、お断りします! あ! 兵長! やめてくださいっ……!」
「うるせえ、黙れ」

 まずナマエの股下に片脚をさしこみ、ガッとハーネスごと胸ぐらを掴んだ。げほげほ咳き込むのにも知らん顔で強く引き寄せ、自身の右手を居眠り野郎の後ろにまわす。なにかが隠蔽された背中側に。それでもどうにかモノを隠そうとしているようで、激しい反抗心が窺えた。リヴァイはさらにきつく胸ぐらを絞める。

「抵抗すんな。痛いのは嫌だろう」
「う……はい……でも今回だけは見逃、」
「さねえよ」

 ぎりぎりまで引き寄せていた居眠り野郎の耳もとに囁き、ナマエが力を抜いた隙に隠されたなにかを奪い取った。即座に。現れたのは壜だった。ピンクのラベルにはふにゃふにゃの文字。

「彼も彼女もこれでイチコロ♡=c…?」
「よ、読み上げないでください〜!!」

 どうやら中身は、媚薬らしかった。しかも胡散臭くて安っちい、そこらへんの商店で買えそうな。

「ほう。これを俺の飲みもんに入れようとしてやがったのか……」

 デスクの上をちらっと見やる。そこにはご丁寧に水と水差しが置かれている。いましがた注がれたばかりのように、たっぷりと。

「……はい」

 居眠り野郎はばつの悪そうな顔をして、しょぼしょぼと小さくうなずいた。

「でも、壜のふたが開かなくて……だから、」
「開けろと?」
「違います、み、未遂ということです……!」
「で?」
「え?」
「もしこれのふたがひらいて、俺が媚薬にやられていたら……そのときお前、俺をどうするつもりだった」

 胸ぐらは掴んだまま。わずかに目を細めて訊ねると、ナマエはボボボッと頬や首、耳の先までも赤く染めた。

「オイ。返事がねえが。……ああそれとも、俺にされたいことがあったか?」
「い、言えませ、ん……」
「言えねえようなことを企んでいたのか」
「……!」

 ぱちぱちと回数の増えていくまばたき、潤んでいく瞳。大きくなる鼓動や、明らかな焦り。ばか正直な反応が愉快で、リヴァイはさらに言葉を続ける。

「なあ、ひとつずつ言ってみろ。……言えたことから順に、していってやる」

 そのとたん、居眠り野郎はカチコチに固まった。限界がきたらしいナマエに呆れ果て、リヴァイはただただため息をついた。







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