そこに何かがある
旅行に行こう、という話になった。じゃあどこに行くのか。そう私が言えば彼は「九度山」と言った。どこにあるんだそれ、と地理にも歴史にも疎い私にこんなところだと言った彼はなんだかいつもよりも嬉しそうに見えた。

まあ彼が言うんだから、その話に乗ってみようじゃないか。そう思って足を踏み入れたのだが、意外と……というのは失礼だが、思っていたよりも楽しいものだった。ふと、彼が意味ありげに寺を見つめているのが横目に見えた。

「どうしたの」

「いえ……懐かしいな、と思いまして」

「懐かしい……? ここに来るの、初めてだって言ってたよね」

「……」

彼はそれきり黙って、また何でもなかったかのように歩き出した。
彼には一体、何が見えていたのだろうか。

(20240803)
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