彼と恋人になってから、1ヶ月目。
「ん?この本か?仕事のために読まねばならない本だ。お前が読んでもつまらないと思うぞ。」
…エルヴィンが、私のことを君ではなくお前と呼ぶようになった。
「最近残業続きのせいであまり寝ていなくてな。すまんが、今夜は先に寝させてくれ。」
…エルヴィンの弱音が聞けるようになった。
「そうやって何でも人の頼みごとを聞くからやることが増えるんだ。それはお前の悪い癖だぞ。」
…エルヴィンが私の悪いところを見つけはじめた。
「昨日買ったアレはお前のあのカバンに入れておいた。確認しておいてくれ。」
…エルヴィンとアレとかあので話が通じるようになった。
「お前の好きそうな店を見つけた。次の休みにでも行くか?」
…エルヴィンが私の好みをしっかり把握して、休みにデートに誘うようになった。
「男友人との付き合いも大事だということは分かるが、かと言って必要以上に近づくことはやめてほしい。特に、じゃれ合いの延長で互いの体に触れることは、言語道断だ。男は腹の中で何を考えているわからない。」
…エルヴィンが他の男に警戒したり、嫉妬するようになった。
「ふむ。そうか。そのことについて、俺の考えだが…、」
…エルヴィンの一人称が私ではなく、俺になった。
「…おいで。なんだ?たまにはいいだろう?俺だって甘えたくなる。」
…エルヴィンが不意打ちに甘えてくるようになった。
「ハハッ。相変わらずお前は抜けているな。」
…エルヴィンが声をあげて笑うようになった。
「…どうした?顔色が悪い。少し休むといい。」
…何も言わなくてもエルヴィンは私の異変にすぐ気付くようになった。
エルヴィンと恋人になってから、新しい一面が見えてきた。今まで知らなかった一面…、それは惚れ直す一面だったり、少し頼りない一面だったり、面白い一面だったりと様々だけど、どれも私しか知らないもの。長年の付き合いのリヴァイさんやハンジさんでさえわからない。
私の大事な大事な特権だ。
さらにエルヴィンと付き合って、3ヶ月目。
私の家に物が増えた。それは、歯ブラシ、パジャマ、男物の部屋着、整髪料、ネクタイ、難しい本、などなど…全部エルヴィンのもの。家や部屋に入れば、私以外の存在を感じる。1人じゃないという、暖かで安心できる心地よさ。
「おやすみ。明日も早い。」
1日の最後に会うのはエルヴィンだ。夜は目の前にエルヴィンの寝顔がある。
「ぐぅ…んん…。」
エルヴィンのいびきがかすかに聞こえる。これでたまに私は起きることがある。唸っているエルヴィンの胸板をポンポンと叩いてあげると、すぅと静かに眠ることに最近気づいた。
「朝か、おはよう…。」
朝一番に視界に入る人は寝起きのエルヴィンだ。日によっては髪がボサボサでかなりワイルドヘアーなエルヴィンを拝むことができる。
「好き嫌いは言わずに全部食べるんだぞ。」
朝食は隣にエルヴィンがいて、苦手な食べ物があると食べる前にくぎを刺される。
恋人になってから、
日常の中にエルヴィンがいる。生活を共有して、2人でいる時間がとても増えた。2人でいることが当然で、いないととても寂しくなる。それは嬉しいことにエルヴィンも一緒だった。
「あーあ、お二人さんを見てると妬けてくるよ!エルヴィンのやつ、仕事中だってのに、早く○に会いたい、なぁーんて言うんだよ?はぁ、とことん締まりのない団長になっちゃったもんだよ!」
ハンジさんはからかってくる。
「あいつも変わったな。やっと人間らしくなってきた。」
リヴァイさんは真顔でつぶやく。
彼と恋人になって、私は毎日が楽しい。片思いの時よりも彼のことをもっと大切に思う。片思いをしている時は、彼は遠い存在で、どこか諦めもあって憧れと淡い恋心を抱いていた。その淡さは今はない。今はとても強い想いで、ずっとそばにいてほしいと心の中で思っている。
「そろそろ寝るか?」
今夜も当然のように私の部屋にいて、ベッドに入っているパジャマ姿のエルヴィン。その無防備な姿に安心してしまう。チラリと見るとまだ寝てもないのにもう後ろ髪が乱れていて面白かった。ふふ、と私が笑うと後ろ髪に気付いた彼も笑う。
「お前と付き合えて俺は幸せ者だよ。」
不意にエルヴィンは言った。キュン、と胸が切なく締まる。私も同じ想いだと伝えれば、頬が緩んでいく彼。
エルヴィンと恋人になってから…私はとても幸せです。
end
彼と付き合って、4ヶ月目、5ヶ月目、半年目、一年後…、私たちはどんな2人になっているかな?