3ケリ

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もう一度雨に打たれたい気分だった。
予想通りの返事に、ああ…やっぱり、と馬鹿正直に答えてしまった。すまない。と彼の一言が今日まで温めて来た想いを静かに消していく。うつむいて、ポタポタと髪先から滴る雫を見つめていたけど、いきなりその雫が止む。エルヴィンがタオルを肩にかけてくれたからだった。


「君は、昔から無茶をする部下だった。今もそれは変わらないな。」
「エルヴィンはいつも面倒見てくれたよね。」
「ああ。だが、きっと、これから面倒を見るのは俺じゃない。」
「っ、…大丈夫だよ、エルヴィンのことは諦めるから…。」


追い討ちをかけられた気がして、涙目になる。すると、私の顔を真っ白いタオルが覆った。エルヴィンがタオルの端を私の顔に優しく当てて、涙を拭ってくれたからだった。


「…泣かないでくれ。俺が泣かせたと知ったら、あいつはこのドアを蹴破るだろうからね。」
「え?」
「壊される前に開けた方が良さそうだ。」


苦笑いをしたエルヴィンは、団長室のドアを開ける。そこにはリヴァイが腕を組んで立っていた。私の泣き顔を見ると、目を見張り、エルヴィンをギロリと睨む。


「どんだけこっぴどいフリ方をしたんだてめぇは。」
「エルヴィンは悪くない。」
「いちいち庇うな泣き虫。」
「痴話喧嘩はよそでやってくれると嬉しいんだが。」
「ち、痴話喧嘩なんかじゃっ!私はエルヴィンのことが2年も前からずっと好きで好きでたまんなかったんだからぁーっ!…いててて!?」
「オイ、てめぇはエルヴィンからフラれたんだろ?今しがたお前の口からエルヴィンのことを諦めるとしっかり聞こえたはずだがアレは冗談か?アァ?」
「ははは、まぁ続きは2人でじっくりやってくれ。」


いろんな涙が流れる中、リヴァイのハンカチで目元を覆われ、エルヴィンに背中を優しく押し出されながら団長室を後にした。


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