「ちょっ、ちょっと待って下さいよおとっつぁん!」

「なんだ?名前も賛成じゃなかったのかい?」

「え?そ、それは……」


実はどうでもよかったとか言えないよ!
本当は自分たちで歩いてきな!ハンッなんて思ってたとか言えないよ!!


「とにかくこれは主人命令だからおとなしく従いなさい」

「……………はい」

「よし、いい子だ。他の皆にも伝えてきてもらえるかね?」

「はい、分かりました」


おとっつぁんは私の頭をポンポンッと叩き部屋を出ていきそうになるところでまた私に話しかけた。


「そういやぁ、名前もそろそろだな。今夜は裏方じゃなく座敷を主に働きなさい」

「……はい!」


そう、私も遊女のはしくれ。
今はお手伝い程度でもいずれは姐さん達みたいに本物の遊女になるときが来るのだ。その時が刻一刻と近づいているのは身に染みている。おとっつぁんは優しいから初めては“自分自身が気に入っている男の人と”という密かなルールを作ってくれた。


「真選組かぁ……」


ハッキリ言って真選組にはいい噂はほとんどない。噂ばかり信じるのもどうかと思うけど他に情報がないのだから仕方がないと思う。そんな事を考えながら姐さん達におとっつぁんからの伝言を伝えに階段を上る。

襖を叩き姐さん達がいるのを確認した。


「姐さん、名前です」

「まぁ名前ちゃんか」

「おとっつぁんから伝言を預かってきました」

「そら珍しいなぁ」

「今夜、この凪渠屋は真選組が貸しきるそうです」

「真選組の皆さんが来はるんか?」

「はい……って桜木姐さん怖くないんですか?」

「怖い?フッ、フフフ」

「なにがおかしいんですか?」

「そやな。名前ちゃんはいつも寝てはる時間やからなぁ」

「へ?」

「真選組の皆さんは怖くなんかあらしません。皆優しいお方ですよぉ」

「そう、なんですか?」

「まぁ皆さんお酒だけ飲んで帰ってしまはりますがな……でも、土方はんだけはいつも警戒心をとかないのや。だから気ぃつけな」

「はぁ……」

「さてと、そろそろ他の皆のところにもいかんと遅れてしまいますよ」

「は!そうでした!失礼します!!」


桜木姐さんの言葉はなんだか信用できる気がする……。少しだけお迎え役になってしまったという緊張感がとれたように思えた。