あれから数時間たち、今私は奴等が待つ“真選組”へと向かっている。私も夜の女の端くれ。夜道なんて慣れてるし、怖くもない。


だけど…────


ブゥーーン


「ギャーーーー!!今なんか手に当たったなんか当たった!!」


虫が、大嫌いなのです。


「もぉ〜なんでこんなに街灯多いの!!ギャーーー!また来たあぁああぁ」


あと、もう少し。あと、もう少し。この角を曲がれば……。


トンッ


「ギャーーーーー!!!!」
「のわぁああああぁあ」



なんなんだ!なんなんだ!やけにデカイよ!この虫やけにデカイよ!!しかも声が………


え?
……───声が?


「に、人間!?」


あ、あれ?


「うそ、気絶してるの?この人」



少女漫画でよくあるパターン。曲がり角で異性とぶつかる。そして倒れた少女を少年が助けてそれがきっかけで恋愛ストーリーが始まる。ちょっとは期待した私が間違いでした。


「おーい!お、起きてもらえます?」


あれから数分。私はペシペシと倒れた男性の顔を叩いては殴り叩いては殴りを繰り返した。


「………っていうかこの人マヨ臭っ!一体どんな食生活をしたら衣服からマヨネーズの匂いがするんだよ」


殴り疲れた挙げ句に襟を掴んで吹っ飛ばそうとしてたけど……。


「マヨ臭っ!」

「………あ゙?誰がマヨネーズ撲滅運動実施中だって?」

「ぃ、いやぁ〜……あのー……」


起きちゃった起きちゃった!
いや起こそうとしてたけどさ!

このタイミングかよ!


「………って誰も『マヨネーズ撲滅運動実施中』なんて言ってませんよ!!」

「ほぉ、じゃあこの手はなんだ」

「あ、あぁすいません」


謝りながら……ってなんで私が謝らなきゃいけないの!

……まぁいいや

だってなんかこの人瞳孔開いてるよ!
素直に謝らなきゃなんかされるよ!


「で?テメェはこんなところで何をしている」

「!!そうだよ!そうだった!」

「あ゙ぁ゙?」

「私、真選組に行かなきゃ!」

「真選組ぃ?テメェみたいなハナ垂れ娘がなんのようだ」

「は、ハナ垂れぇ?失礼な!マヨ臭いアンタなんかに言われたくありません!では急いでるので失礼します!」


腹がたったから思いっきり肩にぶつかってやった。

なんなの!?あの人は!


「おい、ちょっと待て」


機嫌が悪そうにズカズカと歩いて去ろうとしたら、後ろからまた声をかけられた。


「なんですか?私は急いでるんですけど」

「お前、もしかして凪渠屋の娘か」

「そうですけどそれがなにか!」


誰?この人……私の事を知ってるみたいだけど。


「フッ」


かすかに笑ったと思ったら懐からタバコを出して火をつけた。そして一言。


「俺は真選組副長『土方 十四郎』だ」


『土方はんだけはいつも警戒心をとかないのや、だから気ぃつけな』


姐さん……私はこの人を殴ってしまいました……。


「どうしよう………」