『今日バイト』


土曜日、昼。開放されている食堂で弁当とコンビニで買ったパンやら何やらを広げて手をつける前に携帯を見る。通知バナーにはあまりにシンプルなメッセージが表示されていた。送信時刻は1分前。どうやら帰りに言ったことは覚えているらしかった。


『何時から』
『にじ』
『ふーん』
『興味ないだろ』
『あんまり』
『なら聞くなよ』
『まぁ頑張れよ』
『お前もな』


こいつ打つのはえーな。いや俺もか。つか反応すぐだし暇なのか。暇なんだろーな。


『なにしてんの』
『さっきまで寝てたわ』
『マジか』
『まじ』
『脳みそ溶けんじゃね?』
『溶けねーよ』
『もう溶けてるからな』
『ぶっとば酢』
『新商品かよ』
『ミスったんだよ!!流せよそこは!!』
「…んふッ」


やべ、変な声でた。誤変換までは我慢できたのに、急にテンション上げてくるから不意打ちくらったわ。


「…マッキーがやばい」
「末期だな」
「マッキーなだけにな」
「まっつんからそう言うの聞けるとは思わなかったよ」
「お前ら人の名前で笑ってんじゃねーよ」
「お前こそ携帯見て一人でニヤニヤしてんじゃねぇよ」


松川それ人のこと言えんの、ってくらいお前もニヤニヤしてるけど。それをみた及川が「ははーん」と漫画みたいなセリフをこぼし、同じくニヤけた顔で俺を見る。


「誰とラインしてんの、マッキー」
「トモダチ」
「へぇ?」
「トモダチねぇ〜」
「…ナニ」
「べっつにー?」
「仲良いトモダチいていいね」


あれ、なんだコレ俺めっちゃアウェーじゃね?助けて岩泉…ってもう寝てやがるよ食うのはえーしもっとお前は協調性というものを学べ。会話に参加しろ。


「みょうじちゃんと普段なに話してんの?」
「別に何もー」
「同じクラスなのに?」
「三沢たちとつるんでるし」
「あぁ、三沢クンね」
「知ってんだ」
「まぁね。みょうじちゃんと同じ中学出身らしいよ」
「ふーん」
「あれっ、妬いちゃった?」
「ごちそーさまでした」
「はやっ?!もっとゆっくり食べなよ!お腹痛くなるよ?!」
「及川サンと違って丈夫なんで平気ですぅ」
「そーゆーこと言ったら協力してやんないんだからね」
「なにをだよ」


弁当箱をしまい、菓子パンの袋を開けて食いつきながら携帯を持つ。『笑わせんな』と送ったら予想以上に早く既読がついた。いやだから暇かよ。


『勝手に笑ったんだろバーカ』
『お前暇なの?』
『うるせーです。』
『早くバイト行けば?』
『なんでわざわざアイツと一緒にいる時間長くしなきゃなんないのさ』
『今日いんのか佐々木笑』
『笑じゃねーよ笑えねぇっつってんだろ』
『お疲れ』
『ほんと疲れる。もうヤダ』
『部活終わったら行くからそれまで耐えろ』
『えっ』
『なに』
『それマジに言ってる?』
『当たり前でしょ。なんの為にバイトある日連絡しろって言ったと思ってんの。』
『いやいいよ、毎回とか疲れるじゃん、家帰って休みなよ』
『そうかそんなに佐々木と帰りたいのかそうかそうか』
『お願いしマッス』
『おー』
『ありがと』
『別に』
『あんたって意外と優しいよね』
『意外とは』
『パフェ残しといてくれたりとかさー』
『そこかよ』
『うん。感動した』
『あっそ』
『鼻に生クリームの写真めっちゃ可愛いけど見る?』
『見ねぇよ消せ』
『ムリ』
『俺がムリ』
『いま待ち受け』
『ふざけんな』
『また新しいの取ったら変えるわー』
『やめろ』
『てかそろそろ休憩終わるんじゃないの?』
『おー』
『じゃぁ夜待ってるから。部活頑張ってね。』


あ、やばい、心臓口から出る。


「…ぅわ!?びっくりした何でいきなり立つの?!怖い!」
「便所!!!」
「あ、ハイ、イッテラッシャイ…」
「転ぶなよー」


やばいやばいやばい、心臓っつーか身体の中の臓器全部でてくんじゃねぇのって感じ。ドクドクドクドクうるさいし血のめぐり良すぎて血管破裂しそうだし顔あっついし。待ってるって、何だよ!


「マッキーのあんな顔初めて見た」
「すんげぇ赤かったな」
「なに言われたんだろ」
「さぁ?」
「いいな、楽しそうで」



せぐりあがる
恋心