
どんとむーびんぐ!(4)
勢いよくオプティマスの手のひらに叩きつけられてそのまま床にダイブ。
床に直行便よりは良かったかもしれないが、もう無理。
「うっ、ウェエ゛エーッ」
激しくえづき、嘔吐する。
我慢していた分その場で全てを出すんじゃないかという勢いで。苦しくて涙が出てきた。
いきなり来た未確認情報満載の人間が目の前でゲロ吐いてる。
(うわぁ、きっと嫌われた…)
嫌われる要素満載。
それでさらに涙を流していると。
背中に固いが、上下に動く優しいひんやりとした感触。
『…すまない。君に酷いことをした』
あぁ。金属の指先から労わりと優しさを感じる。
彼はもうこの時から、あのオプティマスなんだ。
「……」
無言で首を横に振る。
オプティマスは悪いことなんてしていない。
『こんな貧弱で矮小な侵入者に謝ることなどするなオプティマス!』
悪いのはこの野郎だ。
こちらを見下しながら鼻で笑う仕草を見た私の堪忍袋はぶち切れそうだ。
背中をさすってくれていたオプティマスの指先を振り返りながらゆっくり触り、微笑む。
『落ち着いたようだな』
「はい、ありがとーお兄ちゃん!」
『……私の名はオプティマス、オプティマス・プライムだ』
「オプちマしゅ・ぷりゃ…長いね〜」
呂律回らなくて噛んじゃったよ。
『なら君の好きな呼び方をすればいい』
『『オプティマス!!』』
目を細めながらそう言ってくれたオプティマス。
これはいけないと思ったのか、今まで傍観していたラチェットも止めに入る。
しかし今の私を止めることはできない!
「じゃあププ兄かオプって呼びたい!」
本当はイボンコ、アゴ、ムチャゴリラが候補にあったが、今のオプティマスすげー優しいから本当に許可貰えそうなので辞める。
『君には名前で呼んで欲しいと私は思う』
『何を言うか!国家元首に一番近しいとされる者が!』
「ありがとうオプ!でもぉ……」
さっきから文句言うんだよ目がトロンがさぁ…こんのガン●ちゃんめが!
星一徹って呼ぶぞ!
『なんだ。原始的な下等生物の分際で、不満でもあるのか?』
チラリと上を見上げると間髪入れず脅すように喋るメガトロン。
つまり[あ゛あ?俺に文句あるなら言ってみろよオイ]状態である。
ブチンッ
『『『『ブチン??』』』』
「燻し銀色のおじちゃんは、あたしが気にくわないんだね。おじちゃんは怪しい輩を疑うのもお仕事なんだろうね……オプお兄ちゃんが優しいからおじちゃんが厳しいのかな?飴と鞭っていうんだっけ?こういうの。バランスが取れてていいんじゃない?おじちゃんはいいねぇ強くて大きくて偉くて能力があって周りに恵まれていて。あたしはそのどれでもないから自分の存在意義も分からないし、秀でているものも分からない。だからかな?いままでみんなあたしを蔑ろにして1人にしてせせら笑うんだ。暴言だって吐かれるし暴力だって振るわれたよ。おじちゃんは自分の実力があるから言われないのだろうけれども、わたしたち人間は生まれてくることや場所や能力を選べないし、そちらと比べての全てが劣っているから、おじちゃんは自分の優れた境遇に少しは感謝したほうがいいよ」
『……』
「あと、仲良くしたいって思ってるのに…何もしてないのにいじめられたら、どうしていいか分かんない……」
どんどん噴出する不満、怒り。
朧気なはずの記憶から浮かび上がる負の感情。これはおそらく氷山の一角。まだまだ腹の中に嫌なモノが入っている気がして。自分が嫌になる。
これではただの八つ当たりではないか。
まぁ、途中で泣き出してしまったが言いたいことは言った。すぐ泣いてしまうのは私の悪い癖。
1、潰される
2、殺される
3、生きたまま解剖
どれだろうか。
さっき解剖させろって言ってたから3、かなぁ…なんてネガティブ思考にとらわれた幸縁は、涙に濡れた頬をそのままに下を向いたままメガトロンに向かって歩く。
『………』
「ゲロ吐いてごめんなさい。おじちゃんの手に吐いちゃいけないから気づいて欲しくて手を叩いていたけど、気がつかなかったようなので飛び降りました。床を汚してしまってごめんなさい。…言いたいことはいいましゅた、泣き喚いてすみませんでした。あと」
存在してゴメンナサイ。
おじぎして、アイセンサー辺りを見つめる。
『……』
無言でメガトロンに手を伸ばされる。
(ああ、潰されるのかなぁ)
『やめろメガトロン!』
オプティマスが叫ぶように言うが、幸縁もメガトロンも顔から視線を逸らさない。
近くに酔ってきたメガトロンと目が合う。
もう彼女の首には鋭い指が触れていた。
『下らない。』
そう吐き捨てられ、少し指が離れる。
(いや、顔も離そうよ。近いよ、そしてビミョーに光って眩しいよ!)