暗いのはいや(4)
「ごめんなさいキン肉マンさん。さっきから貴方に嫌な思いばかりさせて」「沙希さんのせいじゃない。い、いやぁ〜!信じがたいことだが真実なのに、まったく困ったものだわい!」
「そうですね……」
頭の固い連中め!と空元気のキン肉マン。
沙希は今までに会った人達を思い返して、腹を立てた。
拳を固く握り締めていると、緊張していると思ったキン肉マンが、肩をポンポンと宥めるように叩いてきた。
「大丈夫じゃよ。警察がちゃんと手続きしてくれるから、沙希さんはドンと構えておけばいい」
「はい…」
しばらくして警官が戻ってきた。
結局、彼女の被害届けが出ていないかや以前の戸籍など諸々の調査が平行して行われることになるらしく。
「戸籍取得まで時間が掛かります。早くても、結果が出て手続きに入るまで1ヵ月程時間が必要です」
「どうしよう…」
沙希は途方にくれた。
(家も無いし知り合いもいないし、お金も昭和に発行された物使わないといけないからあまり無いし…)
困った彼女の顔色はどんどん悪くなる。
これから手続きが終わり、戸籍や就職先が決まるまで。何日間風呂にも入れず、食事も摂れずに過ごすのだろうか。
(うわぁ……もしかしたら飢え死にしちゃう)
「じゃあそれまで、私の家に住むといい」
「え?」
「嫌かもしれんが、一時じゃ。な?」
ばちこーん、とウィンク付きで言われ思考が止まる。
「あ、はい」
署内が一斉に静けさに包まれるが、彼女は気づかない。
渡りに船。キン肉マンの心根の良さは分かっている沙希は、唐突な彼からの申し出を承諾した。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「よぉーし決まりじゃっ!」
「今日は私がご飯作りますね」
「わーい!」
睦み合う恋人のように仲の良い二人。
必要書類を作成し、沙希とキン肉マンが帰宅後。
警察署が揺れるほど大騒ぎになることを、二人は知らない。