未染められし者(7)


「死ねぇ!!クロスクラーーッシュ!!」
「危ない万太郎君!」
「うわぁっ!?」

迫る鉄柱をなんとかかわした二人。
さらに沙希は、なんと万太郎を背に庇い、ブラッド・キラーと向き合った。

「何だぁお嬢ちゃん?そんなところにいると危ないぞぉ?フハハハハっ!」
「なっ…サキさん危ないよぉ!」
「万太郎君。ミート君を連れて逃げて」
「で、でもサキさんは…」
「……子供に守られてばかりなんて、大人が廃るってもんでしょ?」
「何をごちゃごちゃと」
「ほら走って!!」
「わっ、わあああああああ!」

万太郎はミートを抱え走り出す。
その姿に驚愕しているブラッド・キラーに向かい沙希は全力疾走し、顔面に砂を思い切り投げかけた。

「歯向かおうってのか!」
「おらぁ!」
「グムゥッ!?このっ…クロスクラッシュ!」
「ふっ!」
「サキさん!?」
「ク、クロスクラッシュの上に乗っただと!?」

鋼鉄の柱は十字。上の平面の部分を駆け抜けて彼女はブラッド・キラーに辿りついた。
急いで柱を戻そうとするが間に合わない。

「これでも、くらえぇええええっ!!」
「ぐあぁああっ!?」

柱を踏み台にし、思い切り踏み切りながら前方に跳躍。彼女は勢いのまま相手の顔面に膝蹴りを命中させた。

「シャ、シャイニングウィザード……」
「はぁ、はぁ…」
「か、勝ったの?わぁい!サキさんすっごーーい!!」
「そんなわけないでしょ、いいから早く逃げ」
「このクソアマァ!!!!クロスクラッシュ!!」
「あぐぁっ!?」
「「あぁ!?」」

敵が動かなかったのは頭を打ち付けて眩暈を起こしていたせいだった。
技を受けて沙希の身体は軽々と吹き飛び、万太郎とミートの傍らに落ちる。
そして、万太郎も攻撃を受け、手に持っていた風呂敷とミートを落としてしまった。

「い、てて……」
「サキさん!!それに、せっかく母上が作ってくれたカルビ丼がぁ…」

風呂敷の中で器は割れていたが、土で汚れた部分は無く、まだなんとか食べれそうだった。
しかし、いつの間にか近づいていたブラッド・キラーに無残に踏み潰されてしまう。

「あぁっ!」
「けっ!後生大事に持っているからなんだと思いきや、こんな粗末な食いモンだったとはな。笑わせてくれるぜ」
「人の、食べ物台無しにしといて…っう、そりゃないでしょ」
「黙れい!この死にぞこないがぁ!」
「げほぉっ、ごふっ!」
「サキさん!」

沙希の身体中に蹴りを浴びせる敵に、ミートは悲鳴を上げた。

「よくも…」
「ハァ?何か言ったかぁ?」
「よくもカルビ丼を…母上の真心とサキさんを踏みにじったなぁあ!!」
「!?」
「何ぃ!?」

突如万太郎の筋肉が発達し、肉体がたくましくなる。
怒りによって彼の闘争本能が刺激され、額には『肉』の文字が浮かび上がった。
先程まで怯えていた彼とは思えないほどだ。

「ブラッド・キラー…お前だけは、絶対に許さん!!」
「そうかいそうかい。やっと戦う気になったようだな。無抵抗の者を殺すよりいいってもんだ…フフフ」

二人の戦いが始まった。
ブラッド・キラーからのエルボーをかわし、万太郎は後ろを取った。そのままバックドロップをかけようとするが外され放り投げる。
空中で姿勢を建て直し着地した万太郎は、ブラッド・キラーの放ったクロスクラッシュとの力勝負に勝った。

「あ、あれは"火事場のクソ力"!万太郎様はお父上の力を受け継いでいたのですね!」
「今度はこちらから行くぞ!!」

万太郎から相手に仕掛けた技は、キン肉族48の殺人技の一つ。

「五所蹂躙絡み!またの名を…」
「キン肉バスター!!」

相手を背負いながら飛び上がり、まるで稲妻の如く鋭く地面に落下した万太郎。地面は陥没し、驚愕の色に染まったブラッド・キラーの表情と倒れ伏した姿を見れば、その威力は一目瞭然。

「そんな、馬鹿な…ぐはぁ」
「うわぁ…」

食べ物の恨みは恐ろしい。
そう思いながら、決着を見届けた後に沙希は意識を失った。