未染められし者(6)
日が落ちて暗くなった公園の中を疾走する彼は。
「足早っ!!」
急いで追いかけるミートと沙希。
万太郎はあっという間に墜落していた小型宇宙船に乗り込んだ。
しかし、彼は何かに弾かれたように、中から飛び出してきた。
「やだああああああ!どわぁっ!?」
「うわっ!」
「いてててて…今度は何?」
妖しい眼光。巨大な手。
内部からアルミ缶のようにやすやすと変形し破壊された宇宙船。
「うわぁあああ〜!?」
「悪行超人!」
「あ、あれが……」
数メートル先で止まった悪行超人はこちらを見て話しかけてくる。
「落下したカプセルの信号を辿ってここまで来たが、とんだ奴に出くわしたものよ」
「カプセル?…今壊したやつか」
「何!?まさか…」
「貴様がキン肉マンの息子、万太郎か?」
正義超人かと思って追跡した宇宙船もといカプセルは、偶然にも万太郎のものだったのだ。
この悪行超人、ブラッド・キラーの狙いは、万太郎に絞られていた。
だが、命の危険に、万太郎は。
「何のことやら?(裏声)」
「えっ?」
「ボクは通りすがりの小学生。今塾の帰りなのさぁ〜」
「はぁ?」
「それにしても、なぁにおじさんいい年こいてコスプレのつもり?」
「確かにその格好、見てて寒そう。風邪ひきますよ?」
「ほらお姉さんもそう思うでしょ?付き合ってらんないや。じゃあ、そういうことで!また会いマッスル〜」
いつの間に着替えたのか。
どこかで見たような小学生の服装に着替えて、人違いだと誤魔化そうとした。
ガシッ
「うぇ?」
「とぼけるな!その不細工なツラ、伝説のキン肉マンとそっくり同じだぜ」
「いやぁ、人違いです。ほらぁ(キラーン)」
「ぶふっ」
(どうやったらそんなにマスクの形が変形すんの?)
「いい加減にしろ!」
「ぐふぅっ!」
「「あぁっ!?」」
ふざけた態度に焦れたブラッド・キラーは胸倉掴んでいた万太郎を地面に叩き付けた。
ブラッド・キラーの先輩にあたる悪行超人達は、万太郎の父親であるキン肉マンに散々な目に遭わされていた。
長年の恨みを晴らすため、今後の破壊活動に障害を無くすため、喧嘩もしたことが無い万太郎は処刑の標的にされた。
「そんな歴史を繰り返さぬよう、お前を処刑してやる…」
「ひぇええええ助けてぇえええ!」
「クロスクラァアアッシュ!!」
「ぎゃああああ!!」
「万太郎様!」
ブラッド・キラーの胸にある十字マークは鋼鉄の柱であり、それを自在に出し入れすることにより攻撃を仕掛けてきた。その一撃は万太郎の背後にあった木を真っ二つにへし折るほどだ。
公園内を走り逃げ回る万太郎は遊具に登り一息ついたが、ブラッド・キラーは自身の怪力でもってそれを破壊。万太郎は空中に高く放り投げられた。
「落ちろ落ちろぉ…」
「万太郎様!」
「うわああああああ!…あ?」
だが、偶然掴めた鉄棒でそのまま大車輪。
落下の勢いは回転により消費され、ダメージは0であった。
「決まった…」
「片手なんて、すごいよ万太郎君っ!」
「すごい、なんて運動神経なんだ…」
しかし、逃げてばかりでは勝てない。
ミートは沙希と共に万太郎に声をかけた。
「逃げてばかりではダメです!戦うのです!」
「えぇ〜!?でもぉ…」
「万太郎様ならできる!」
「きっとできるよ!だってさっきホントにすごかったもん!」
「ミート……サキさん……」
声援に勇気をもらい、万太郎は意を決して敵と向かい合った。
「うるぁああああ!!」
「ぎゃあああこわいぃい〜!」
「あぁ、ダメかぁ(若●ボイスは確かに怖いもんなぁ)」
「そ、そんなぁ……」
その光景に、ミートはひどくショックを受けた。
自身がセコンドを務めたキン肉マンも、始めはドジ超人やら豚面やら襲来した怪獣が呆れて帰ってしまうくらい弱かったが、戦うたびに強くなった。
困難に打ち勝とうと努力していた。
だが、万太郎は。
戦えない一般市民である沙希と、悪行超人と超人強度で劣るミートを置いて一目散に逃げてしまった。
「ま、万太郎様は、お父上の力を受け継いでいると思っていたけど…その御心までは受け継いでいなかったのですね」
「ミート君…」
「僕の愛した地球の守護神、キン肉マンは…もういないんだ…っ」
ぽろぽろと涙を流すミート。
その姿を見て沙希は顔をしかめた後、彼の頭を撫で、すぐさま走りだした。