宇宙旅行はうたた寝のうちに(4)


「…を、ぇく」
「え?」

聞こえてきた声に沙希は目を開ける。
何故か辺りは霧に包まれたかのように白い。宇宙船の中ではなさそうだ。

「なんだここ?万太郎君は?皆は?」
「頼む…ぃ……いで」
「はい?…何つった?」

何処からか聞こえる声を辿り彼女は歩く。
宇宙船の中にいたのだから、これは夢だと分かってはいた。
しかし、聞こえてくる声を無視することはできなかった。
何かを訴える声は、迫るような悲哀が含まれている。
視界が悪い中歩けば、そこには、ぼんやりと浮かぶ黒い影があった。

「大丈夫ですか?具合でも悪いんですか?」
「…いで」
「うん?」
「りに、独りにしないでくれ」
「え゛…」
(これはもしかして…)

OBAKE。

「いやいやダメだって!物事にはですね収まるべき場所的なアレがあって」
「お前がいてくれないと…俺は」
「え!?ちょっ…」

黒い影が自身に覆い被さって来る。
もうだめだと思った瞬間。
着陸の振動が伝わり沙希は目を覚ました。

「きゃああああああ!!」
「わぁっ!?」
「どうし、ムグッ!?」
「ひえええっ!」
「サキさん!?落ち着いてください!」
「ズルイ!!じゃなかった!サキさんも離れて!」

抱きつかれ胸の中に顔を埋めてしまったキッドが必死になって沙希の肩を叩くと、やっと彼女は気づいた。

「ゆ、夢かぁ〜……怖かったよぉミートくぅん」

今度はミートを抱き枕代わりにして。
小さい手で頭を撫で慰めながら、ミートは話を促した。

「怖い夢でも見たんですか?」
「う、うん……すっごく怖かった。寂しそうな声がしてね?大丈夫かって声かけたら大きい影が覆いかぶさってきてね、どこかに連れて行かれそうになったの。いやぁおばけに同情したらいけないって今学んだよ」
「「おばけ…ぷっ、あはははは!!」」
「…」
「子供かよアンタ!」
「あははは!サキさん可愛い〜!」

勝負はうやむやになり、万太郎・キッド以外の超人たちも笑い出す始末。
沙希は頬を膨らまして拗ね、下船しても機嫌が直ることはなかった。
船の目的地であるレッスル星に着いた沙希達。
降り立った先には厳めしさを感じさせる男性の顔を模した岩壁を門とする、コロッセオ(円形闘技場)のような見た目の建造物があった。
つむじ風が身に沁みて中に入ると、暗闇の向こうから大きな三つの黒い影が彼らを迎えた。
その黒い影は伝説超人レジェンドであるロビンマスク・バッファローマン・ウルフマンであった。

「ようこそ。ヘラクレス・ファクトリーへ」
「お、お邪魔してます…」
「……!」
「君が先程報告にあった方かな?」
「え?」
「はい!そうです!」

ミートがそれに答えれば、バッファローマンは頷いた。

「分かった。少し待っていてくれ…お前達は、これより訓練を開始する」
「訓練?やだなぁ冗談でしょ〜?今来たばっかなのに…ちょっとは休ませてよ!」

万太郎が疲労を理由に反論するが、伝説超人レジェンド達は敵は待ってくれないと言い、取り合わなかった。

「ま、万太郎君…あの人達は一体…?」
「あぁ、あのおっかなーい人達は伝説超人レジェンドって言って」
「怖いの?私船に勝手に乗ったから、ボコボコにされちゃうの?」

万太郎の影に隠れてそう言えば、三人は唖然として固まった。