浅き縁でも(2)


「それよりまず手当てが先でしょう!」
「「あ」」
「まったく!超人はみんな戦うことしか頭に無いのかしら!」

プンプンと怒るビビンバに沙希とラーメンマンは宥めながら謝罪した。
護身術の話は他の伝説超人レジェンドと相談するため一時保留ということになった。
怪我の具合を見るために、カーテンで仕切りを作りビビンバに手伝ってもらいながら着替えていると。

「沙希ちゃん。このスーツ破れちゃってるわ。ブラウスも」
「え!?」
「悪行超人の攻撃を受けたせいね…替えの洋服を持ってくるから、ちょっと待っててね!」
「あ!」

急いで出て行ってしまった彼女。
沙希は焦った。

「ジャージとかでいいんだけどな…動きやすいし」

医務の備品棚を見て彼女は言う。

「諦めて着飾ってもらいなさい。彼女なりのお礼だろう」
「お礼…あっ!」
「どうした?」
「万太郎君と、彼からお詫びとしてお母さんが作ったカルビ丼一緒に食べようって約束してたんだった!」
「お詫びはそれでいいのか?」

ラーメンマンは尋ねた。キン肉族は超人界で、他のあらゆるヒーローより優れ、ヒーローの頂点に立つ一族とされている。
その息子からの侘びとあれば、本人が願えば大抵のものは叶うだろう。

「もっと他に願いはないのか?欲しい物などは?」
「特に無いです!晩御飯を食べれられてないので、本当にお腹空いてます!」
「…そうか(今までで一番勢いのある返事だな)」
「万太郎君の練習って一区切りつくのにどれくらいかかるか分かりますか?」
「そうだな…確認しておこう。とりあえず、今はこれを食べて空腹を紛らわすといい」
「わぁお煎餅!ありがとうございます!」

もう一度服を着直し、お茶を飲みながらラーメンマンが出した茶菓子を味わう。

「あぁ…おいしい。まさか地球の外に来てお煎餅とお茶をいただけるとは思いませんでした」
「万太郎の父親・キン肉星の現大王は、幼少の頃とある事情から地球の日本で育ったんだ」
「へー!だからか」
「ちなみに好物は牛丼だ。もっとも最近は体調のせいでミキサーにかけないと食べれないそうだが」
「うわぁ…好きなものを食べられないのは辛い」

自分のことのように顔をしかめた沙希。

「よかったらお大事にって伝えてください」
「分かった。だが、万太郎と食事する際に彼も来るかも知れんぞ?」
「え?」
「子が世話になったんだ。親が来ないことは無いんじゃないか?現にビビンバさんは君の顔を見にここまで来た訳だ」
「あ、そうか」

(此処に来るまでにどれくらい時間が掛かるんだろう?)

非難するように腹が鳴ったが仕方が無い。
待ち人が来るまでは、食事にありつけそうに無いことが分かり、彼女は遠い目をした。

「…ラーメンマンさん?」
「なんだい?」
「もう先に手当てしてもらっていいですか?」
「なっ…ゴホン。ビビンバさんが戻るまで待ちなさい」
「だってもうお腹空いた!!」
「ちょっ、君は女性だぞ!男の前で無闇に肌を出すものでは」
「うわぁあああ!!」

やけになって脱ごうとした沙希のYシャツの前をなんとか閉め留めながら、ラーメンマンはビビンバの帰りを待ちわびるのだった。