浅き縁でも(3)
「お待たせ沙希ちゃん!」「ビビンバさん!」
「さぁ手当てするわよ!終わったらこれに着替えてね…ラーメンマンさん、なんでそんなに疲れた顔してるの?」
「な、なんでもない……」
何故か疲れているラーメンマンに首を傾げながら、二人で沙希の手当てが始まった。
問診と触診により手際よく治療が行われていくが。
「安静が必要だな。右腕の骨にひびが入っている」
「え!?だって沙希ちゃん、さっきまで普通に動いていたじゃない」
「そうだな…しかし、現に骨は折れている。ただの人間が悪行超人に暴行されたらこんなものではすまない。内臓の破裂や複雑骨折などのショックで死んでいた可能性が非常に高い」
青褪め固まるビビンバと沙希。
「よく我慢したもんだ」
「っ…!」
骨折部分を触られて沙希は身を捩る。
悲鳴を上げはしなかったが、奥歯を噛み締めて痛みをこらえていた。
「子供の前だ。心配かけまいと平気なふりをしていたんだろう」
「すいません。なんか、万太郎君たちの顔見てると、泣かせたくないなって思うんですよね…なんでかな?」
「沙希ちゃん……」
彼女は湿布と包帯に包まれた肢体をぼんやり眺め、どこかに思いを馳せた。
それが何処かも思い出せないまま。
「ビビンバさん、着替え手伝ってもらっていいですか?」
「あ?え、えぇ…ほらラーメンマンさんはあっち!」
「す、すまない」
物思いが終わったせいか。
朧気な雰囲気はたちどころに霧散し、ケロリとしている沙希に虚を衝かれた形になった二人は、ワタワタと行動を始める。
「ビビンバさん」
「なぁに沙希ちゃん?」
「これ、可愛過ぎません?」
「そんなことないわ!とっても似合ってる!」
「そ、それはどうも…」
ビビンバがどこからか持って来た着替えは、Vネックの総レースワンピースに、黒のシフォンカーディガン。黒いブーツと合わせたそれは。
「でもこれ…恥ずかしいです」
ジャージなどのラフな服装を希望していた沙希からすると、ギャップが激しかった。
最後にスカートを履いた記憶が高校在学中であった彼女は、しきりに着慣れていないスカートの裾を気にしている。
「ごめんなさいね。着替えしやすくて痣や怪我が隠れる洋服がこれしかなかったの…嫌だったかしら?」「えっと、嫌いじゃないです。用意してくださってありがとうございます」
「よかった!」
「せめてペチコートかスパッツください」
「えぇ!」
悲しげに顔を俯かせたビビンバに気を遣い、礼を言う沙希。
にやりと笑ったビビンバの顔を見たのは、向かいに座っていたラーメンマンだけだった。
「うむ。可愛らしい格好じゃないか」
「ロビンマスク」
「へぁ!?こ、コンニチワ!」
「今訓練が一区切りついてね。教師も交代するのでその前に顔を見に来たんだ。体調が良いようだったら訓練場まで案内しよう。傷の具合はどうかな?」
沙希が着替え終えると、タイミングよく医務室に来たロビンマスクは、穏やかに声をかけて彼女の服装を褒めた。どうやら向かえに来たらしい。