浅き縁でも(4)
「命に別状はない。上半身に複数の打撲、それと右腕の骨折だ」
「すまない、少し用ができてしまった」
「今来たばっかですよ?!」
「……ロビンマスク」
「はは、冗談さ」
「あぁびっくりした!」
「ははははは!」
来たばかりの部屋から出て行こうとする突然の奇行に沙希は驚いたが、ラーメンマンが声をかければ冗談と笑ったため自身もそう思うことにした。
(それにしては険しい顔をしてたけど…正義超人も大変なんだなぁ)
ビビンバとはここで別れ、訓練の見学後に万太郎の父親が合流したら食事を取ることとなった。
長い廊下を歩き外へと向かう。
「空腹は大丈夫か?」
「ラーメンマンさんがくれたお茶とお煎餅のおかげで、少しは」
「ほう…」
「あんなことがあって彼女が疲れているようだったのでな」
「あぁ、ラーメンマンの入れる茶はうまいからな。今度は三人でお茶しよう」
「え」
「楽しみにしておこう」
何故か沙希も人数に含まれており、思わず聞き返す。
「駄目だろうか?」
「あ〜…ご迷惑でなければ」
「勿論」
力強く返答を受け、沙希は笑った。
「(気を遣ってもらって…)ロビンマスクさんって、まるで紳士みたいだ」
「!」
「よく分かったな」
「え?」
「彼はイギリス出身の正義超人で、ロビン
「イギリス出身なんですか!」
「あぁ!地球各国にも超人はいるんだ」
「ロビンマスクは英国女王より『騎士(ナイト)』の称号を贈られ、臣下の直属超人なんだ」
「ロビンマスクさんって、すっごい超人さんなんですね!」
「光栄の至りだ」
沙希からのキラキラとした尊敬の眼差しに、ロビンマスクは仮面の下で微笑み、彼女の頭を撫でた。
(また……家族以外の男性に頭を撫でられたのは小学生以来だろうか?)
「み、皆はどんな訓練を?」
「ランニング1万kmに野生の獣と一対一で檻の中で試合、重石をつけて崖上りが先程終わった」
「今は度胸と俊敏性を鍛えるために燃えるサンドバックに蹴りを入れる訓練だ。バッファローマンが監督している」
「怖っ!大変だなぁ…バッファ先生厳しそうだし、怒鳴られたら泣いちゃいそう。は、早く蹴れば大丈夫かな?」
沙希は照れて赤らめていた顔をさっと青褪めさせた。
「蹴りを入れることについての恐怖は無いかな?」
「…あ」
「それだけ奴が厳つい顔をしているということだろう」
「え?いや」
「はははははっ!」
「ちょっ、違いますよ!」
「俺がどうしたって?」
「わーーーっ!!?」
思わず叫び後ずさる。
沙希達の姿が見えたのだろう。
いつの間にかバッファローマンが訓練生に待機するように指示を出し、彼女等の前に来ていた。
「……そんな叫ばんでもいいんじゃないか?」
「す、すみません!」
「あ!サキさぁ〜ん!」
「こら二世!訓練中ですよ!」
「万太郎君!」
笑顔で手をぶんぶん振る万太郎。
彼に手を振り返した沙希は周囲にいた他の訓練生に向かっても手を振る。アポロンマンやガゼルマン、セイウチンなど船の中で知り合った訓練生は皆手を振り返してくれた。