浅き縁でも(6)


振り向きざまに一発。
そのままの勢いで軸がぶれないよう身体を開かず回転を加え、中段・上段に向かって沙希は重ねて蹴りを放つ。
鋭い蹴りによって軌道の逸れたサンドバックは、凄まじい音と共に地面に突き刺さった。

「…」
「…」
「…」
「…大丈夫?二人共?」
「「あ、はい」」

沙希は万太郎とミートに怪我が無いか確認した後、キッドに向き直る。

「す、スマン。つい力が入ってしまった」
「大丈夫です。ほら、二人にも謝って」
「え?」
「二人は私の友達(だったらいいな)です。もし当たってたら大変なことになってました。だから、謝ってください」
「す、すまなかった…」
「い、いえ……」
「だっ、大丈夫…」
「まったく…ボーイ」
「え?」
「あまり人をからかっちゃいけないよ」
「わ、悪かった」

いつのまにか、炎は消えていた。

「沙希…?」
「はい?何か言いました?」
「あ、いやなんでも」
「ある」
「うぉっ!びっくりしたぁ」
「何をしているんだ!」
「え?見学、ですけど…」
伝説超人レジェンドウォーズマン!?」
「うわ!本物かよ!?」

訓練生から尊敬の眼差しを受ける男は、校舎の中から凄まじい勢いで此処に到着した途端沙希を怒鳴りつけた。

「戻ってきていたのか」
「あぁ…ロビンから聞いて先程な。まったく、サンドバックに襲い掛かられるのは見学とは言わないぞ!」
「お、襲い…すいません」
「バッファローマン!!お前が着いていながら!」
「か、返す言葉もない」
「人間の身体は超人より脆いのだから気をつけねばならないのに…悪行超人に攻撃されて全身打撲に骨折までしてる彼女を危険にさらすとは」
「えっ!?」

沙希の容態を知らなかった万太郎は唖然とした。

「とにかくまた検査だ。君の容態に変化が無いか確認しないといけないからな」
「きゃあっ!?」

そう言うとウォーズマンは沙希をひょいと姫抱きで持ち上げた。身体を痛めないようにする配慮だろう。
見知らぬ男性に抱き上げられ驚愕と羞恥に悲鳴を上げる沙希を彼はちらりと見たが、何も言わずに歩き出す。

「じ、自分で歩きますから!」
「足の骨に異常があったらどうする」
「い、今痛くないし…」
「身体に危険が迫ったためアドレナリンが分泌され興奮状態にあるからだろう。大事を取っておくに越したことは無い」
「うぅ…」

論破に次ぐ論破に沙希は諦めた。
校舎に向かい歩く二人を固まった面々が見つめていた。