爪先からハロウィンマーブル(2)
「モギリくらいなら…」「そうか!やってくれるか!」
「はい。よろしくお願いします」
「いやぁこれでジャクリーンにどやされずに済む!」
ダハハと笑うイケメン・マッスルは当日必要な書類やの注意事項などについて説明すると、スキップしながら去っていった。
そして10月31日当日。早速彼女は後悔していた。
「どうぞ。楽しんでね」
「ありがとうおねえちゃん!」
「チケット拝見いたします」
「ほい」
「奥で手荷物検査を行っておりますので、鞄等の中身をご提示ください」
「わかったよ」
「ご協力ありがとうございます」
キン肉マンが現役で活躍していた頃の再現として、超人と子供たちのファン感謝デーが、ここ東●ドームにて開催されていた。
午前中にも関わらず人が押し寄せ、収容人数を上回らんとする勢いである。
たかが受付係と侮っていた沙希は、長蛇の列にてんてこ舞いだった。
特に受付が困るのがチケットを忘れたと言い、無理に入ろうとする客だ。
モギリの流れは止まるし、チケットの半券は東京ドームシティ内のハロウィンイベントで使えるフリーパスも兼ねているため高額だ。
そのため当日券を買うことを渋る客が何人もいたので、その対応もしなければいけない。
「本試合・ハロウィンイベントに参加いただくには、ご家族にチケットをお持ちいただくか、ゲート入り口の当日券をご購入する必要がございます」
「さっきまであったんだよ!」
「先程まで所持していた場合、警備の方に
「わ、分かった」
「私どもの方でも確認いたしますので、座席番号・購入IDのどちらかを覚えておりましたら教えていただけますでしょうか?」
「…購入確認メールの文面でも大丈夫かな?」
「はい。あ、警備員さんいましたね。すみませーんよろしくお願いします」
上記のように協力的に客が動いて解決することもあれば、ごねにごねて警備員が連れ出す、なんてことも何度かあった。
そして今。
「お客様。規則ですのでどうか…」
「うっさいわね!こっちは金払ってきてんだからいいじゃない!!」
「し、しかしチケットの提示は入場に必要で」
「しょうがないじゃない忘れてきたんだから!」
「ですから…」
別のゲートで揉めているらしく、また来場者の流れが滞っていた。同じ問答が続き周囲の来場者も不快な顔をし始めている。
「おい早くしろよ!」
「す、すみません」
キン肉マンら正義超人を見たいと来ている人達だ。ルールくらい分かると思っていたが。
これでは他の人の気分が台無しだ。
「お客様、鞄の中身を確認いただいてもよろしいでしょうか?」
「はぁ?そんなの確認したわよ!」
「念の為、もう一度お願いします。また、衣服やパンツのポケットをすべてご確認ください」
「だから!」
「どうか、お願いします」
「…チッ!」
盛大な舌打ちにもサキは怯まない。
そんなものより悪行超人のほうが恐ろしい。
喚いていた客がゴソゴソと確認していくと、チケットは胸ポケットに入っていた。
「…あっ」
「お持ちでしたねぇ!いやぁよかったです!はい、ご入場いただいて結構です!」
「…」
「ど〜うぞ、最後まで、ごゆっくりお楽しみください(プギャーm9(^ω^))」
先程までの威勢は何処へやら。
沙希の嫌味ったらしい笑顔と周囲の嘲笑と悪口にその客は急いで出て行った。
「入っていいと言ったのに…日本語通じなかったのかな?」
「あ、あの…」
「おっとごめんなさいね。仕事の邪魔して」
「い、いえ、ありがとうございました!」
「お昼まであと少しだから頑張ろうね」
「はい!」
困っていたアルバイトに声をかけ、沙希は自分に割り当てられたゲートに戻った。