爪先からハロウィンマーブル(3)
少しすると聞き覚えのある声が、沙希の名を呼んだ。「沙希さん!」
「あ、凛子ちゃん。お友達も」
「こんにちわ〜」
「ここでバイトしてんの?」
「今日だけなんだ。でもすごい人だから大変で」
「さっきみたいな人もいるし?」
「まぁね」
どうやら先程の光景を見られていたらしい。
「それより、サキさんはいつ仕事終わります?」
「いきなり頼まれたからねぇ〜、お昼までにしてもらったよ」
もうすぐ終わる。
そう彼女が言うと、凛子・たまき・恵子の3人は目を輝かせた。
「じゃあ私達と一緒に回りませんか?」
「え?いいの?若い子の邪魔じゃない?」
「邪魔じゃない邪魔じゃない」
「じゃあ…ご一緒します」
「やった!」
きゃあきゃあと喜ぶ三人に顔が綻ぶ。
以前沙希は、凛子達が不良に絡まれているところを助けてから、彼女らに慕われていた。
好意を嬉しく思いながら、沙希は従業員室で着替えて合流するのだった。
「これでナンパのメンバーは決まりね」
「もう…沙希さんに怒られても知らないよ!」
「まぁまぁ」
たまきのナンパに付き合わされた凛子と恵子は苦笑い。
「純粋だよね、沙希さん」
「なんというか…身内に甘い?」
「「それだ」」
自分達に声をかけられた時の嬉しそうな顔が浮かぶ。
「…なんか、申し訳ない気分」
「お昼ご飯奢ろう」
「そうしよう」
正午を少し過ぎた頃。
合流した四人はドーム内にある飲食店を目指し足を運んでいた。
ハロウィンということでオレンジや紫など鮮やかな色に装飾されている内部は、来場した子供らの笑い声により鮮やかさを増しているように思える。
「何食べようか?」
「う〜ん…」
「つーか何あんの?」
「沙希さんは何が食べたいですか?」
「肉。朝から立ちっぱなしだから、座れるところでがっつり食べたい」
「「「に、肉…」」」
ハロウィンは古代ケルト人が起源と考えられている祭で、子供が仮装しお菓子をねだる日である。そのせいか、期間限定と銘打ってる出店はほとんどが菓子、甘いものであった。
「…あっ!これなんてどう?」
「なになに?」
そんな中凛子がめぼしいものを見つける。それは1F内野の3塁側27〜29番にある弁当屋。
「正義超人がプロデュースしたお弁当だって!」
「へぇ〜!おもしろそう!」
「此処にしようよ!ね?沙希さん!」
「うん!」
嬉々とした表情で歩を進める沙希を、凛子達三人は微笑ましく見守った。
パンフレットに書かれた場所に着くと、さすが正義超人プロデュース。恐ろしいほどの賑わいである。
「す、すごい人ね?」
「弁当買うだけに何時間待つんだ…」
「アトラクションの人数待ちじゃないんだから」
「…」
「やばい!沙希さんが固まった!」
空腹とあまりの人の多さに沙希は呆然。
がっくりと肩を落としてしまった。
三人がなんとか慰めていると、恵子が気付いた。
「あ、あそこの列だけ空いてる!」
「じゃあその列で決まり!レジのとこで商品決めよう!」
「うん!」
他の列と比べると極端に少ない場所に並んだ4人は、レジに着いたところで驚愕の声を上げた。
「え!?」
「嘘ぉっ!」
「マジで!!?」
「「「「キン肉マン!?」」」」
「あぁ、いらっしゃい」
「おや、かわいいお客さんが来てよかったじゃないか、キン肉マン」
「うむ」
「て、テリーマン!?キッドのお父さんまで!」
なんと、此処は正義超人が売り子をする弁当屋だったのだ。
「ファンの子と直に会話する機会が欲しいと委員会に提案したらこの形になってね」
「今ニュージェネレーションと入れ替わりで店員さんをやっとったのじゃよ」
「…き」
「沙希さん?」
「来てよかったぁああ!キン肉マンさぁーーん!!」
「おっと」
「ははは!熱烈な握手だな!」
「わ、ワシみたいなジジイを見て喜んでくれるのはサキちゃんぐらいじゃよ」
「だって大好きなんだもん!マジ俺得!!」
「なはは…て、照れるのう」
興奮する沙希を凛子達が落ち着かせる。
「それで、ご注文は?レディ達」
「きゃぁ〜!!ならテリーマンさんで!」
老成した
「落ち着いてたまきちゃん」
「勿論…ザ・マシンガンズ弁当で!」
「ありがとう。此処の肉はテリーの牧場から提携でもらったものじゃから、美味いぞぉ」
「やったあ!」
購入したお弁当は優しい味でした。
〜モギリ編Fin〜