爪先からハロウィンマーブル(4)

しばらく悩んでいるとイケメン・マッスルが質問を投げかけてきた。

「そういえば、沙希さんは製菓衛生師の資格をお持ちだとか?」
「は、はい。食べるのが好きなので、自分で作ろうと思ったのか資格を取ってたみたいです」
「なら試合終了後会場でファンに配布する菓子を作ってくれないか!」
「え?」

店で働いていない(記憶が無い)ため、力になれるか分からない。と続けるはずの言葉を遮られた沙希。

「実はイベント開始前に菓子類を全て作る予定だったのだが、採用者の確認不足で資格も経験も無い素人ばかりを雇っていて…」
「何も、無いんですか?」
「既製品はあるんだが、それではファン感謝イベントに来てもらった意味が無いのだ」
「…」
「…材料は」
「へ?」
「好きなもの使っていいですよね?」
「あ、あぁ!それに、ハロウィンらしい菓子ならどんなレシピでも構わない!」
「分かりました。数は限られると思いますが、お受けします」
「ありがとう!じゃあ今からすぐ来てくれないか?」
「もう作り始めないと間に合わないですからね」

サキは超人委員会の者に自分の荷物を持って来るように頼むと、すぐさま会場へ向かうのだった。



「では、よろしく頼む」
「はい」

結局使える人材はほとんどおらず、いたとしても菓子の納期が明日なため無理と判断して帰ってしまっていた。サキは作業途中のまま放置された厨房で、たった1人で菓子作りに励むことになった。

「よし!私の時代!やるぞ!」

食材を自分の自由にできると気合いを入れた彼女。こうして厨房での戦いが始まった。
カボチャや生クリームとの戦いが始まって早数時間。

「はぁ…疲れた」

サキはバテていた。
来場者数が分からないため、とにかく多くの菓子を作らねばならないのだが、1人では完成する菓子の数も限られる。

「家でやるパーティーならもう充分な量なのになぁ〜」

ステラお●さんもびっくりするんじゃないかというくらいクッキーを焼きまくったのに。まだ先は見えない。

「いたいた〜!」
「沙希さーん!」
「?」

自分を呼ぶ声が聞こえ顔を上げると、いつの間にか万太郎等Team-AHOの4人とジェイド達ジェネレーション-EXの4人、合計8人が集まって厨房を覗いていた。

「ふふふっ、皆トーテムポールみたい」
「オイオイ、こんなイケメン見ておいてそりゃ無いだろ」
「ごめんねスカー君。でも、スカー君も皆も、こんなところに来てどうしたの?」
「俺達、委員長に言われてサキさんの菓子作りのお手伝いをしに来ました」
「えっ?」
「イベントの菓子、1人で作ってるって聞いたグギ」
「正義超人によるファン感謝のイベントです。俺達が菓子を作ったって文句は言われねぇでしょう?」
「…クリオネって、ツンデレ?」
「いやぁスカーもじゃね?」
「キッドはツンギレ?」
「「「黙れ小鹿」」」
「何で俺だけ!?」

彼らのじゃれあいに表情が緩む沙希。

「皆ありがとう。じゃあ、手伝って貰おうかな?」
「はい沙希さん!まず何をやればいいですか?」
「良い質問です万太郎君。全員手を洗って、エプロンとマスクと帽子または三角巾を身に付けてください」
「え?」
「食品衛生上重要なことなので絶対に守ってください。あ、万太郎君」
「はい?」
「いつもみたいに鼻ほじったりしたらお湯の中にキン肉ドライバーで突っ込むから。煮沸消毒するからね」
「絶対しません!!(ガクブル)」
「よろしい」

震える万太郎を見て満足そうに頷いた沙希に、逆らわないようにしようと他の面々の心は一つになった。

「キッド君、スカー君にはカボチャを適当な大きさに切って潰すという力仕事を頼みます」
「任せとけ」
「こんなの朝飯前だ」
「万太郎君、ジェイド君、デッド君にはクッキーのアイシングをお願いします」
「あ、の…アイシングって何グギ?冷湿布?」
「卵白や粉砂糖を泡立てた甘いクリーム状のペーストのことだよ」
「クッキーの上にハロウィンらしい絵を描けばオッケーだよ!ね?沙希さん」
「うん。二人に教えてあげて?」
「はーい!」

仲良く作業に入った3人を見送ると、沙希は最後の3人に向き直った。

「あの、僕等は何をすれば?」
「セイウチン君は洗濯超人の腕の見せ場、洗い物の手伝いをお願いします。それまで3人は…これやってくれるかな?」