温い火に旋風(3)

「かくかくしかじか」
「さらばだソルジャー」
「うわぁぁあ!?」
「と、言うのは冗談だ」
「ガクーーッ!!」

ずっこけたキン肉マンは咳払いし立ち上がる。数瞬置いてアタルは語り出した。

「様子が以前と違う事に気づいたのは、王位争奪戦の数日前。自主練習を終え、外からお前が帰って来た時だ」
「どう違ったんじゃ?」
「何も無いのに夕食がめっちゃ豪勢だった」
「え?」
「後日……夜中に雑誌を読みながら笑みを浮かべ、それを目撃したとあるメンバーは悪鬼羅刹が夢に出てきそうと揶揄するほど」
「焦熱地獄に叩き込むぞ貴様」

剣呑さを帯びたザ・ニンジャの眼光にキン肉マンが短い悲鳴をあげ、居酒屋の看板の後ろに隠れた。

「サタンクロスとの試合で彼女は声を大にしてお前を応援していた。知らないとは言わせないぞ、試合中視線を送っていたくせに」
「なっ!?」
「ほほぉう…!」
「試合に敗れ、決勝が終わり。神々の力とスグルのフェイスフラッシュのおかげで我々は生き返った」
「…」
「その時彼女はな。ザ・ニンジャ、お前の名を呼んで涙を流した。お前の為に泣いて喜んでいたそうだ」

雷に打たれたようにザ・ニンジャは硬直する。

「己の誇りのために闘えるのならば、己の愛する者のためにも闘えるはず。今のお前は、それが出来るだろう」
「な、何を言う。忍びは」
「忍びの生き方ではない!今はお前の生き方について話している!」
「兄さん!こんな往来で大声は」
「ハッ!?す、すまない…」
「いや、今更だ」

キン肉マンの制止で、口論のボルテージは下がった。
護衛としての任務に戻ろうとするザ・ニンジャの背中に、キン肉マンは語った。

「私は、試合中応援してもらえた時とても嬉しくなる。手強い相手に立ち向かうやる気や勇気が湧いてくる。もし、彼女に応援されて勇気が湧いたのなら。会って話した方が良いと思う」
「…」

そんなことがあり、ザ・ニンジャはお見合いに出席することになった次第なのだが。
此処で誤算と偶然が生じた。
まず、相手である名前が乗り気でないこと。
そしてキン肉星近郊で事件が起こり、アタルとザ・ニンジャがキン肉星の警備と共に出動することになり、事後処理に時間が掛かって、返事が遅れてしまったこと。

「手紙には何と?」
「父親が酔っ払い、本人の承諾無しに決めたこと。自分はまだ働いていたいので、結婚し専業主婦として家庭に入ることはできないと…」
「そうか…」
「忠親殿は今単身赴任中だから、きっと伝えるの忘れてたんじゃな」
「……乗り気でない女子おなごを手籠めにするのは、拙者の矜持に反する」
「昔はブイブイ言わせてたのか?」
「顎ごと苦無で貫いてやろうか」
「謹んで辞退いたします」
「残念じゃが返事を書かんとな。この星の宇宙郵便から届けておこう」
「忝ない」

そして、手紙の郵送を頼まれたキン肉マンの机の上が書類まみれだったこと。

「おや?」
「どうしたスグル?」
「兄さん、書類の中に何か…!!?」
「こ、コレは!」
「「ア"アアアアアアァァァッ!?」」

お見合い当日に見つかったそれのせいで、キン肉星に野太い悲鳴が響き渡る。

「何があった!」
「「ぎゃあああああああ!!」」

更にザ・ニンジャの登場で彼等二人を阿鼻叫喚の状態へ突き落とした。

「どうした二人共。何があった?敵襲か?」
「ア、アウ…」
「ちっ、ちが…」
「血?」
「て、てが……」
「手?…何処も傷を負ってはいないが」

ふと、二人の視線が自分の背後に向かっていることに気づいたニンジャ。さっと振り向くと、机の上に見覚えのある筆跡の手紙が。

「お、送れていなかった」
「み、みたいじゃ…」
「ふむ、そのようだな」

後の二人は、その時の事をこう語った。
振り向いたら獄炎を背負った般若がいた。と。
急いで名前に連絡をつけようと電話したのだが、通信衛星に不調があり通じず。そのため、約束をすっぽかす結果になってしまったのだった。
その日、キン肉星(一部)は炎に包まれたらしい。