埋め隠す涙(1)

毎日の運動と間食の我慢で、体脂肪率と体重は減少した。
動物性タンパク質と野菜のバランスを考えた献立を作り、ビタミン等の必要栄養素を摂取すると共に規則正しい生活を心掛けたことで。
目に見える結果として名前の身体に表れた。

「ニュータイプ、私…!」

朝。姿見の前で思わずポーズをとる。
弛んだ脇と腹、逞しい後ろ姿になっていた背中の贅肉が減ったことでスッキリとしている。

「運動のおかげで体力ついたし、これで残業とも戦えるぜ…!」

数ヵ月の努力は無駄ではなかった。
修行を終えた勇者のように不敵に笑う彼女は、目標体重の数値より減量できたことに気分を良くしていた。

「リバウンドしないように注意しないと…あ!もうそろそろ出なきゃ!」

セルフライ●ップは今日休み、名前は今までよりサイズダウンした新しい洋服を身に纏い会社に出勤した。
世間に詳細はまだ非公開だが、三属性超人不可侵条約の締結が数週間後に迫っている。
その後、正義・悪魔・完璧超人による調停式と、関連するイベントが開催される予定だ。
大規模かつ盛大に執り行われるそれらに関する打ち合わせや取材には、頼もしい先輩も同行してくれる。

(皆さん元気にしてるかなぁ…代表は誰なんだろう?)

タイムカードを押し、心優しい脳筋達に思いを馳せながら仕事に取り組む。
何度かのトイレ休憩を挟み、正午を指していた針が1回転半した時。

「名前ちゃん。担当部分の進捗具合はどんな感じ?」
「ナツ子さん。レイアウト出来ました。どうでしょうか?」
「良いと思うわ。ねぇ、一緒にご飯行かない?その後そのまま取材に行くんだけど」
「勿論喜んで」
「その、僕らも」
「さぁ行くわよ!」
「え?あ、はい」
「あ…」

何か聞こえた気がしたが、ナツ子に背中を押され名前はロッカールームへ。ナツ子はカメラ等の必要機材を持ち準備万端。名前が鞄を持ったのを確認すると、ナツ子は足早に会社から彼女を連れ出した。

「さぁて!腹ごしらえよ!牛丼屋でいい?」
「はい。ダイエットは一旦終わりましたので」
「そうなの?名前ちゃんご飯三食食べてたじゃない!」
「ナツ子さん、必要なのは食事と運動のバランスですよ」
「え〜!其処んところも聞きたい!」
「其処のところ?」
「あ、いやぁ…とにかく!行こうか!」

またグイグイと背中を押され、会社から少し離れた牛丼屋に入る。昼時から少しずれていても中には何人かの客がいた。食券を買い、空いている席に腰を下ろす。

「別嬪さん二人!牛丼お待ち!」
「わぁ!ありがとう!」
「二人…?」
「アンタだよ!面白いねお嬢さん、ははっ!!」
「ど、どうも…」

店主のおじさんに笑い返して名前は牛丼を受け取った。手を合わせていただく。
美味い。肉のしっかりとした味わいと肉汁が舌の上で主張してくる。丼の中で艶めく白米を肉で包みまた口に運ぶ。

「お肉おいしい…っ!」
「ほんと名前ちゃんは美味しそうにご飯食べるわね。ダイエットの時はどんな食事してたの?」
「緑黄色野菜多めのサラダにスープ。鶏肉とかツナをメインにしたり、脂質や糖質の多い洋菓子を控えて和菓子に変えてました。よく噛んで食べることを意識付けして。あと運動。毎日ストレッチしたり、猫背になってたら直したり」
「激しい運動は?マラソンとか」
「ジョギングはしましたけど、回数はあまり。運動はほとんど室内で済ませました」
「へぇ〜〜〜〜!」

興味深そうに聞くナツ子はもりもりと牛丼を咀嚼している。
彼女はのびのびとしているほうが性に合っているのだろう。何もしなくてもプロポーション抜群だ。