紙の叢雲(2)
キン肉星での飲み会の後。席を外した際、すれ違いざまに甲賀流忍者は皆世話焼きなのかと、アシュラにからかわれてしまった。
「あやつめ…盗み聞きしておったな。実家にサンシャインの核を送りつけてやろうか」
しかし、仲間とはいえ、他人の家庭内の問題に口を出してしまうとは。
かつての自分であれば、他者が眉尻下げて泣き喚いても、気にも留めなかっただろう。
「…」
一人。宮殿の庭で、裂かれた胸に手を当てる。
傷は塞がり、奥の方で規則正しい鼓動を感じる。己は健康そのものだ。
だが、あの闘いの日を思い出す度、この鼓動は不規則になり、思考は千々に乱れる。
平穏な時間を過ごす度、覚えているその一時の光景に手を伸ばし、独占したい衝動に駆られる。
忍に本来必要無いとされるその感情に名前を付けるなら。
──恋。情愛。
ザ・ニンジャは、ベルリンで出会った一人の女性のことが頭から離れなくなってしまっていた。
「はぁ…どうしよう」
中心部から少し離れた公園で、彼女、名字名前は途方に暮れていた。
「スーパーに行きたかっただけなのに」
(お父さんが寄り道しようとか言い出すから!)
翔野ナツコの後輩で『週刊HERO』の女性記者である名前は、キン肉マンチーム以外の取材を担当していた。
ベルリンに来たのは残虐(血盟軍)チームの取材のため。
しかし、情報は秘匿され、メンバーの名前すら分からずにいた。
落ち込む名前は、休みを取り、観光と試合を見に来ていた父親と気晴らしをしていたのだ。
「……どうやったら、先輩みたいに上手く取材出来るんだろう」
(血盟軍の紹介したいのになぁ…無理矢理漫画の知識から書いちゃうか?)
街から離れた公園のベンチで暗い気持ちになっていると、何処からか強い風が吹いてきた。
「うわっ!竜巻地獄かと思った…あぁ?!原稿用紙が!」
空を舞う原稿用紙。
名前は急いで追いかけた。風に流された先に佇んでいた人がそれを拾う。
「すみませーん!それ私のなんです!」
(日本語通じるか、な……!?)
「お主のか…」
名前は自分の死を覚悟した。