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「本来20年前に死んでおかなければならなかった女だが手遅れになる前にあの女が死ぬ事になって本当によかった」
「いい加減にしろてめェ!それ以上口を開くな!!」
「ただし政府はこの先何年もかけてニコ・ロビンの知識・経験・頭脳の全てを絞り出すだろう。これからあの女がどれ程の苦痛の末死んでいくのかよく噛みしめてお前達
「そんな事はさせねェよ!!」

そんな事させない!あいつらにロビンは渡さないんだから!

「おいおい待てロビンそっちへ行ったら!」
「ロビンちゃん!!」
「ロビン!」

そげキングを引きずりながらと一つ前の車両から出てきたロビンは傷一つなくて安心した。

「よかった無事なのかケガは!?何もされてねェか!?コイツらすぐぶちのめすからよ!今度こそ一緒に皆んトコ帰ろう!」

これでちょっとはあたし達にも分ができたかなって思ったら、ロビンがハナハナの実の能力でそげキングをねじ伏せた。

「ウソップ!ロビンちゃん……何すんだ!?」
「口で言っても分からないでしょ……?」
「なんで?」

せっかくここまで助けに来たのに。もう目の前にいるのに。ロビンは帰りたくないの?そんな事ないよね、だってあたし達のために自分から捕まりに行ったんだもん。

「フランキー君!第3車両を切り離したまえ!」
「何すんだよ!」
「逃げる!!」
「逃げる!?」

逃げるってこんな狭い中で逃げられるの?どどうやって!?

「"そげキーング煙星スモークスター"」

何がなんだか分からないうちに、とにかく一つ前の車両に戻るのと一緒にそげキングが煙幕を張ってロビンを連れて逃げてきた。

「ニコ・ロビンは頂いたァ!!」
「よっしゃーー!」

すぐに連結部分を切り離したからちょっと突破口が見えたけど、でもまだ安心できないよね。向こうはサイファーポールだもん。

「あんな恐ろしい奴ら戦わずに目的が果たせるんならそれが一番だ……!」
「だがそう簡単にいくかどうか……」
「ああ、車両が完全に離れるまで気ィ抜くな。その辺のザコとは違うんだ」

向こうの車両の様子を見てると棘のある茨みたいなのがこっちの車両に絡まって捕まって、すぐにすごい力で引き戻された。

「ぎゃーー!引き戻されたァー!」
「煙幕とはつまらねェマネを」
「……やっぱ無理あったか。そげキング!!ロビンちゃんを死守しろよ!!」

場所が狭いと一緒に仕掛ける事ができなくてむず痒い。けどすぐにでも応戦できるようにって構えてはおくけど。

「せっかく引き寄せたトコ悪ィが……!その手離して貰うぞ!!」
「鉄塊」

サンジくんの蹴りは見慣れた技のせいでビクともしなかった。でもあの技には打撃が効くはず。だからサンジくんの技だって効かない事はない。逆にあたしじゃあんまり効果ない。

「"粗砕コンカッセ"!」

遠心力を使った蹴りに揺らいだ隙をついて追い討ちをかけようとすると後ろからそげキングの声が聞こえてきた。

「うわっ!ロビンちょっと待て!」
「"八輪咲きオーチョフルール"クラッチ!」

8本の腕を咲かせてそげキングの体を捕らえたロビンに技をかけられて泡を吹いちゃってる。ここまでしなくてもいいのに。なにがロビンをそこまで追い込んでるんだろう。

「ちょ、何で……ロビンちゃん!?」
「何度言わせるの!?私の事は放っといて!!」
「ロビン!大丈夫だから!!」
「ホラどこに気を取られとる……」
「"シルト"!」

隙をついて向かってきたウソップみたいに鼻の長い奴とサンジくんの間に入って、手のひらで円を書くとその流れに従って風が起きて、そいつを弾き飛ばす。

「リリナちゃん……!」
「……そういう使い方もあるのか。これはちと厄介じゃな」
「そう簡単にロビンを渡すつもりはないの」

今みたいな打撃のだいたいは弾き返せる。けどそればっかりじゃここからロビンを連れて逃げられない。一番いいのは目の前にいるあの4人をみんな倒していく事だけど、それはできないだろうから他を考えなくちゃ。鼻の長い奴に睨まれたから睨み返して言ってから、これからどうしようかってあれこれ考える。

「まったくお前らどいつもコイツも何でそう仲間同士で意地をはるのか!せっかく逃げられる……チャンスだろうがァ!!」
「フランキー!!」

フランキーがドアのある壁ごと前の車両に押し倒して足止めするように一人で乗り込んでった。だけどおかげでこっちの車両を掴む手を離す事ができて、向こうの車両とどんどん距離が離れていく。

「アウ!おめェら!おれの事は心配すんな!策がある!麦わら達と合流したら何とか町へ引き返せ!」
「何て事を……待って!!私は逃げたりしないわ!」
「待てよロビンちゃん!この後に及んで何だってんだよ!オレ達ァ全て事情も知って助けに来たんだぞ!政府のバスターコールって攻撃さえ何とかすりゃロビンちゃんはあいつらに従う事はねェハズだろう!?」
「サンジくん後ろ!」
「そのバスターコールが問題なんだ」
「え……」
「嵐脚」

変な能力を使ってさっき車両を掴んでいた奴がサンジくんの後ろに現れて、斬ったような蹴りで切り傷を作ってその勢いのままサンジくんは壁に叩きつけられた。あの技は何回も見てきたからどういう技なのかなんとなく分かる。だけどあたしにはできないから足を振り下ろしてできた風に、いつもみたいに風を重ねてできた風圧であいつの体にサンジくんと同じように切り傷を作った。

「ランキャク」
「なん……!」
「なんちゃってね」
「お前が風弄ふうろうのリリナか……」
「やめて私は逃げる気はないわそれでいい筈よ!」
「向こうからかかって来るんだ仕方ない」
「……じゃあ早くここを離れましょう」
「ロビン!待ってよ!!」
「待て!!」

とにかくあいつ等から逃げようとするあたし達を置いていこうとするロビンを引き止めようとするあたしを無視して行っちゃいそうになったのを止めたそげキングの声。

「……大丈夫だ!ロビンお前、大丈夫だぞ。……お前まだなんか隠してんな!別に、それはいい。……ただし海賊は……船長の許可なく一味を抜ける事はできない!だからお前……ルフィを信じろ」

そんな言葉も無視して歩いて行っちゃうロビンを引きとめようとすると間を割りこんで来るから、それを躱そうとすると横から伸びてきた手に首を捕まれて、後ろの壁に叩きつけられる。

「ロビンちゃん!!」
「っロビン!!」

痛む身体に逆らってロビンを呼んでもそのまま歩いて行っちゃうから、どんどん小さくなってって最後には見えなくなった。身体を動かそうとしても軋んで動けない。でも行かなきゃ。手遅れになる前に絶対、行かなきゃ……!助けなくちゃ!

「ムダだ。ニコ・ロビンは協定を破らない」
「……何でそう言える!!」
「その昔発動された海軍のバスターコールによってある島が焼き尽くされ跡片もなく滅びる事件が起きた。その時のたった一人の生き残りがまだ幼い日のニコ・ロビンだ」
「何だと……!?」
「つまりバスターコールとはあの女にとってのぬぐいきれない悪夢。幼い頃植えつけられた恐怖の記憶そのものが仲間達に向けられていては……もはや我々に逆らう気力も失せる」
「まさか、それ全部知ってて……!」
「当然だ」
「どこまで腐ってんだてめェらはァ!!!」
「全ては正義の為。あの女には深く同情している」
「ふざけんなァ!!」

ロビンがいなくなった穴の中に入っていこうとする奴に向かって蹴りあげたけれど、同時にその穴がなくなってしまい空気を切るだけになった。

「畜生ォーーー!!」

膝をついて固い拳で床を叩くサンジくんの声があたしの心臓をぎゅっと縮めた。そのバスターコールがロビンをあんなに強くあたし達から離れようとする理由なんだ。そんなものに負けやしないのに。ロビンが一人で苦しむ事なんてないのに……あたし達ならロビンをそんな悪夢忘れさせる事だってできるのに。