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3人とは完全にはぐれちゃったけど、でもみんな上に向かって進んでるみたいだしゾロが1人だけど、どうにかなるだろうからあたしはこのまま先に進もう。……だけど敵が多すぎる。どこに隠れてるのかどんどんわいてくるし、追い払っても立ち向かってくる。ゴキブリみたい。

「もうっ!どこからこんな数わいてくるの?なんだかもうキリがない。早く上に行こうよサンジくん」
「いやでもせっかく2人なんだ、恋の迷子になるのも悪くないんじゃねェかな?」
「……!!!や、やだ!今はロビンだから!ロビンロビンロビンロビンロビン!!ロビンだから!ね!!」

はめられた!まさか味方に惑わされちゃうなんて!敵地に乗りこんでるからって油断してた!あたしが弄ばれちゃうなんて……やめてよそんな楽しそうな顔であたしを見ないで!

あたしが必死に邪念を振り払ってると横から割りこんで来た海兵達に気付くのが遅れた。

「この野郎が!おれとリリナちゃんのせっかくの舞台を台無しにするんじゃねェよ無神経共が!!猛進っ!"猪鍋シュート"!!どォりゃああああ!!」
「そっか!その手があったか!」

サンジくんが海兵ごと破った天井を進んでいくと風に髪がなびいた。上にはもう天井がなくて、あたし達よりも先にナミもゾロもチョッパーもいた。

「間違いなく一番乗り……!どうだいリリナちゃんおれの打開策、藻っ!!」
「もうみんな来てたんだね!」
「マリ藻!てめェなぜおれより先に!?」
「ああ……お前遅かったな迷ってたのか?」
「オ……!オ、オホホイオホホイ……!どこでそんな言葉覚えたんだてめェェ!!」
「あ!そげキング!!」
「え、空を飛んでるっ!」
「あいつどこで何してやがった」
「ロケットみたい!」
「着地大丈夫か?」

下から飛んできたそげキングは無事にあたし達のいる場所に落ちてきた。不時着だったけど意識ははっきりしてるし、大丈夫みたい。一気に集合したし、ルフィももう戦闘終わってるし。

「頼むからよ!ロビン……!!死ぬとか何とか……何言っても構わねェからよ!!そういう事はお前、おれ達のそばで言え!!」
「そうだぞロビンちゃん!」
「ロビン来たよ!!」
「ロビン帰って来ーい!!」

結んでる髪をもう一度きつく結び直してからルフィが立ってる眺めのいいところに立つと、向こうの建て物にロビンとあと汽車の中にいたCP9がいた。

「あとはおれ達に任せろ!!」

ほら、ロビンここまで来たよ。あとは手を伸ばせば届きそう。ここまで来ちゃったんだからもうロビンと一緒に帰るしかないんだよ。

「そういやーさ、ずっとわかんねェ事あんだけどよ。向こうにはどうやって行くんだ?飛ぶのか?」
「馬鹿か。誰もがてめェみてェにゴムじゃねェんだ、んな事してみろそこの知れねェ谷に落ちて死ぬ。……跳ね橋だ」
「跳ね橋?」
「ああ、今フランキー一家が奮闘中だ」
「お前が先走ってこんな屋上にいやがるからおれ達もここに集合するしかねェだろ」
「風が気持ちいいねー」
「ロビン……」

横から吹いてきたり、ちょっと乱暴な風だけどそれでも気持ちいい。あのツノの生えたやつはルフィが倒したからいないけど、大きくて丸い人と髪の長い変な人と、あと長いひげを生やした人以外の3人は汽車に乗ってた奴だ。あと少し離れたとこに顔に変なのつけた奴もいる。向こうも7人だし、ちょうど同じ数だね。

「ワーッハッハッハッハッハッハッ!!このタコ海賊団!お前らが粋がった所で結局何も変わらねェと思い知れ!!この殺し屋集団CP9の強さ然り!人の力じゃ開かねェ正義の門の重み然り!!何より今のおれにはこのゴールデン電伝虫を使い、バスターコールをかける権限がある!!」

バスターコールか。確かそれがロビンが怖がってるやつなんだよね。でもそんなのかけられても怖くないし海軍なんかに負けやしないから。

「そうさちょうど、20年前。貴様の故郷を消し去った力だニコ・ロビン!!オハラという文字は……翌年の地図から消えてたっけなァ……!」
「ロビンの故郷!?」
「クソマスク、今すぐ滝に蹴り落としてやりてェ!」

大人しく聞いていればなんだかよく喋る人だな。ああいうのに限って大した事ないんだよね。強い人ほど無口だったりするし、わーわーお喋りしないもん。

「やめて!!それだけはっ!!」
「ウーーウいい反応だぜゾクゾクする 何だァ!?そりゃこのバスターコール発動スイッチを押せって意味か?えっ!?おい……!」
「それを押せば何が起こるかわかってるの!?」
「ロビン」
「ロビンちゃん……」

今までにないくらいに声を荒げたロビンにもうのん気な事考えられなくなった。そうだ、あんな奴はどうでもいい。目的はロビンを助け出す事。バスターコールなんかに負けない。

「わかるとも……!海賊達がこの島から出られる確率がゼロになるんだ!このゴールデン電伝虫のボタン一つでな……!!何か思い出す事でもあるのか?」
「そんな簡単な事じゃ済まないわ!!やめなさいっ!!」
「……んん?生意気な口を利くじゃねェかァ……!」
「地図からオハラが消えたって言ったわね……!地図の上から人間が確認できる?あなた達が世界をそんな目で見てるからあんな非道な事ができるのよ……!!」

ロビンの言った事は本当にそうだった。確かにここを目標にするって作戦をたてているときに見ている地図には人はいない。ただ平坦な色の塗られた紙だ。ここに何があるのか、誰が住んでいるかなんて地図を見ただけじゃわからない。

「今ここでバスターコールをかければ、このエニエス・ロビーと一緒にあなた達も消し飛ぶわよ……!」
「何をバカな!味方の攻撃で消されてたまるかっ!何言ってんだてめェはァ!」
「20年前、私から全てを奪い大勢の人達の人生を狂わせた……たった一度の攻撃がバスターコール!その攻撃が……やっと出会えた気を許せる仲間達に向けられた。私があなた達と一緒にいたいと望めば望む程、私の運命があなた達に牙をむく!!私には海をどこまで進んでも振り払えない巨大な敵がいる!!私の敵は……世界とその闇だから!!」

見えなくなったロビンがまた見えたとき、ロビンの本当に思っている事を話してくれた。ここまであたし達の助けを拒む理由、ロビンがずっと戦い続けて苦しめられてきた敵の大きさ。

「青キジの時も!今回の事も!もう二度もあなた達を巻き込んだ…!これが永遠に続けばどんなに気のいいあなた達だって……いつか重荷に思う!!!いつか私を裏切って捨てるに決まってる!!それが一番恐いの!!……だから助けに来て欲しくもなかった!!いつか落とす命なら私は今ここで死にたい!!」

そんな事言ったって。ロビン、こんなところで死んでいいの?世界にはもっと、きっとロビンが今まで見てきたどんなものよりも綺麗で感動するようなものがあるんだよ?そういうものを見てからでもいいと思う。ここから離れれば、ここでなら死んでもいいって思えるところがあるはず。

「ワハハハハハハハ!成程なァ、まさに正論だ!そりゃそうだ!お前をかかえて邪魔だと思わねェバカはいねーよ!ワハハハハ!あの象徴バッヂを見ろ海賊共ォーー!!あのマークは四つの海と偉大なる航路グランドラインにある170国以上の加盟国の結束を示すもの……!!これが世界だ!!!盾突くにはお前らがどれ程ちっぽけな存在だかわかったか!!この女がどれ程巨大な組織に追われて来たかわかったかァ!!」

何を言ってるんだろう、あいつ。あたし達海賊は自分達が海賊だって名乗った瞬間から海軍にも世界政府にも敵に回してるんだから、今更そんな脅し効くはずない。

「ロビンの敵はよくわかった!そげキング」
「ん」
「あの旗撃ち抜け」
「了解!」

それにこのエニエス・ロビーに来る前に覚悟は決めてある。あたしは何よりも仲間を大事にするように言われてきた。だからその大事な仲間を助けるんだ!