「"ブリューテンレーゲン"」
違い方向に二回腕を振るえば部屋の中はやわらかい風に包まれた。バスタブに残ってた泡も風の中をふわふわと舞ってから壁にくっついて、少しずつ跡形もなく消えていく。
「……いい風だわ。でも私の泡まで巻きこんで何をするつもり?風の中に刃が含まれてるわけでもなさそうだけど……」
部屋の中を見渡して何も起きないって思ったのか、剃を使ってあたしの目の前まで間合いをつめたけど後数センチのところで全身が切り刻まれて、力をなくしてうつ伏せに倒れこんでいった。
「……今のは、何?」
「油断だよ、弱い風だからって甘くみてたから。春の花びらと一緒に舞う風は止まっていればただ綺麗だけど、動いてしまえば花びらが行く手を邪魔する」
「……そう。あなた、小悪魔だったって事ね」
「引っかかったのはそっちなんだから悪魔だなんで言われたくないな。もう動けないでしょ?鍵はもらっていくよ、急いでるから」
ちょっとドキドキするけど女の人の服の中を探ってると、服の内ポケットから子電伝虫と鍵が出てきた。3って数字が彫られてる。
『おいっ!おいっ!』
「あ、誰かからかかってきた」
『畜生しまった こっちだ子電伝虫は!何て事を!ウッカリした!よりによってゴールデン電伝虫を押しちまった!!よりによってバスターコールをかけちまったァーっ!!』
床においといた子電伝虫を手のひらに乗せて、勝手に話してくる声を聞いた。うっかりバスターコールかけたって……あんなに金ピカの電伝虫なのに間違えるって何してたんだろう。
『バカな事を……!今すぐ取り消しなさいっ!!大変な事態になるわ!』
『何をォ!?取り消しなさいィ!?……オイオイ誰に口を利いてんだてめェはァ!!ワハハハ結構じゃねェかバスターコール!何が悪い!?』
ロビンの声だ。よかったまだ声の届く場所にいるんだ!まだ間に合う、バスターコールもかかった。それならもうここにはいられない。持ってた子電伝虫は持ち主に返して走って部屋を出た。
『そうさ……いいじゃねェか、おれはサイファーポールNo9の長官だぞ。貴様を無事政府へと受け渡す為のバスターコールをかけた!ハハ、それでいいじゃねェか!万が一ここで何が起きようとも最終的には海賊共を確実にみな殺しにできるんだ!』
『バカな事を……言ったハズよ!それだけでは済まない!あの攻撃に人の感情なんてないわ!このエニエス・ロビーにある全てのものを焼き尽くす!建て物も人も!島そのものも……!何もかも犠牲にして目的を達成する悪魔の様な集中砲火!それがバスターコールよ!!20年前のオハラで何が起きたかあなたは知らないから……!!』
『あァ結構。政府にとってもそれだけのヤマだって事さ!カティ・フラムのバカがプルトンの設計図を燃やしちまった今、お前の存在だけが古代兵器への手がかり。一時代をひっくり返す程の軍事力がかかってるんだ……!!そのお前を奪い去ろうのするバカ共をより確実に葬り去る為ならばたとえ兵士が何千人死のうとも……!栄えある未来の為の仕方のねェ犠牲といえる!何よりおれの出世もかかってるしなァ!!』
一刻も早くロビンのもとへたどり着くために走り出したけど、その間もどこかのスピーカーから流れてくる声が聞こえる。味方が死んでも自分の出世のほうが大事だって。あいつの冷酷さはさっき知ったから今更そんな事聞いたって今さら驚きはしないけど。ただもっとあいつが嫌いになるだけ。
『人の命を何だと思ってるの!?』
『忘れてくれるな、CP9とは政府の暗躍機関。1000人の命を救う為に100人の死が必要ならば、我々は迷わずその場で100人殺してみせる。真の正義にゃ非常も必要なのさ。そもそも侵入した海賊共を全く止められねェ能なしの兵士共など死んだ方がマシなんだバカ野郎!!』
『その子電伝虫……通話中に』
「……え!?うげェッ!!しまった!今の会話つつぬけか!?……そ、そんなわけでおれの名は麦わらのルフィだ』
バカなんじゃないかな?あたしも人の事言えないけど、だけど今さらルフィの振りなんてできるわけないのに。それに、自分の言動に覚悟が決められないなんて……気弱すぎる。余計にムカつく!
『全員島を離れて!エニエス・ロビーにバスターコールがかかった!!島にいたら誰も助からないわ!!』
『余計な事言ってんじゃねェよ!』
向こう側でロビンが殴られる音がした。急げ急げ、この鍵でロビンの手錠があきますように……!早くロビンを助けに行かなくちゃ。