011

「ん?あ……おう、リリナ、ビビ」

おれが雪から抜け出したらちょうどリリナとビビがいた。こいつ等についていきゃ他の奴らとも合流できる。
2人から眼を滑らせるとその隣に見かけねェ顔がいる。案内人にしては顔面が巨大で膨れあがっている。よく見ると顔の中心に一本伸びるものが……。

「ああ、ウソップか。お前ら何やってんだよこんなとこで」
「それはこっちのセリフだ!」
「おれは寒中水泳だ。川には魚がいたんだよ。こんな寒い村にもいるんだなと思って追いかけてたら、あがる岸を見失っちまって、歩いてたら森に迷い込んで」

お前バカだろ、って言うがウソップお前も同じようなものだろうが。そんな顔膨らませて呑気に何してやがったんだ。

「それよりウソップ。お前の上着よこせよ」
「いやだね」
「じゃ、靴!……片方!」

おれはこんなに寒い格好してんのにお前は何ひとつ貸してくれねェのかと詰め寄っても頑なに拒否する。なんて薄情な奴だ。

「あたしの帽子貸してあげる!」
「っぷ」

急に口を開いたかと思ったらリリナが被ってた帽子を被せられた。待てよ、この帽子変なポンポンみたいの付いてたろ。頭のてっぺんに……。そんなものをおれに被せたのか。
外そうかそのままにしておこうかと考えあぐねていると、おれを見た残りの2人が我慢できずに吹き出した。

「見てあれ!人が騒いでる」

話を聞いてると雪崩に追われたせいで元々いた町に戻ってきてしまっているようだ。

「おい、どうしたんだ」

聞くと町の住人がさっきの雪崩の下敷きになっているんだが変な奴らが邪魔で掘り返すことができないと困り果てていた。

「下がれ下がれ!ドルトンはもう死んだ!」

そいつ等の言い合いを聞いてる限りあの変な奴らは敵か?

「ウソップ。あの服見覚えあるぜ。あいつ等海であった奴らだろ、違うか?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ敵だな。敵だろどうなんだ!味方か!?」
「いや敵だけど何をそんなに……」

よし敵か。それなら身包み剥いでも文句はねェよな。あの偉そうに大口開けて笑ってるやつが良さそうだな。目標を決めて素手で殴りかかると不意をつかれたからか一発で気を失った。

「あったけえ!」

そいつの着ていたコートを剥いで着ると思っていた以上に上等なものを身につけていたようで外気が気にならないほど温かくなった。おれが殴り倒した奴をみて頭にきたらしいその仲間らが全員で走りおれに向かってきた。
1人ずつ相手にするよりは手ごたえがありそうだな。最初に剣を構えてるやつを狙って殴り倒し、そいつの剣を掴んで構える。いつもの感触じゃねェから変な感じはするがまあいいだろ。

剣士も銃士もひと振りふた振りしたぐらいで倒れていくもんだから、あっという間にカタはついた。

「なんだ、終わりか。はり合いのねェ奴らだ」
「よし!よくやったゾロ!おれの指示通りだ」

おれが奴らを片付けると周りにいた町の奴らは一斉に雪を掘り起こしはじめた。どうもいまいち状況がのみ込めねェんだけどよ。どうなってんだ?

「何なんだこの騒ぎは一体」
「話は後だ!おれ達も手伝うんだよ!」

すげェ勢いで掘り起こしはじめたウソップとそれぞれに掘りはじめたビビとリリナ。いちいち取り残されてはいるがおれも作業に参加しつつ先程無理矢理被せられた帽子を持ち主に返しておいた。