012

雪崩が運んできた雪は想像してたよりも多くてなかなかドルトンを見つけられない。

手袋が溶けた雪を吸収して直接手を冷やし始めて痛くなってきた。早く見つけてあげなくちゃ。止めていた手を動かそうとするとどこからかドルトンを見つけたという声があがってみんなが作業を止めてそこに集まる。

「なんてことだ……。手遅れだった」

ドルトンの心臓は止まってる。二言目にそう聞こえてみんなの動きが止まった。呆然として言葉を失っていると大勢で同じ服を着た怪しい人たちが出てきてドルトンは生きている、と言った。体が冷凍状態にあるだけだから我々に任せてくれ、と。

「おい、医者いるじゃねェか」
「みんな同じ格好」
「……どうして?」
「もしかしてワポルの船に乗ってたんじゃねェのか!?……じゃあ悪医者か!?」

ドルトンはこの国に医者は1人しかいないって言ってた。さっきワポルが帰ってきたって言ってたから、あの人達はワポルの船に乗ってたってことになる。任せろと言われた町の人たちは批判の声をあげて拒否をしてる。気持ちは分かるよ、みんな同じ格好だし怪しいし。

「ワポルに、王の権力に屈したお前らにドルトンさんを任せろだと!?一体ドルトンさんをどうする気だ!」
「彼を救いたくば言う通りにしろ!」
「……おれ達だって医者なんだ。奴らの強さにねじ伏せられようとも、医療の研究は常にこの国の患者たちのために進めてきた!……とあるヤブ医者に、諦めるなと教えられてからだ!もう失ってはならないんだ!そういう、バカな男を!」

彼らの言うヤブ医者が誰かは分からないけど、気持ちは一緒らしい。それならこの国を作り直すのも難しいことじゃないよね。

「山を登りましょ!ウソップさん、リリナさん、Mr.ブシドー!じっとなんかしてられないわ!さっきの雪崩のことだってあるし、ワポルが後を追ったことも。Dr.くれはが城へ戻ったかどうかも分からない!なによりナミさんはすごい高熱が……」
「その上ドルトンも心配でアラバスタも心配か?」
「落ち着けよ、ビビ。お前は何もかも背負いすぎだ。ナミにはルフィとサンジがついてる。何とかやってるさ!あいつらなら大丈夫。おれはあいつらを信じてる!」
「………。ありがとう、ウソップさん。私……」
「おめえは山登るのが恐えだけだろ」

真面目な顔してビビちゃんを諭してるみたいだけど、山を登りたくないだけだと図星を突かれたウソップはこんな寒いにも関わらず冷や汗を流した。

「だ、だってなおめェ雪男だの熊うさぎだのいるらしいぜ!?恐えもんは恐えんだ文句あんのか!」
「最初からそう言えよ」
「大丈夫!あいつらなら何とかするさ!」

そこでさっき家の中に担ぎこまれてったドルトンが家から出てきた。

「国の崩壊という悲劇の中にやっと得た好機じゃないか!今はい上がれなければ永遠にこの国は腐ってしまうぞ!」
「……だがあんたもそんな状況だし。おれ達にゃどうすることも」
「私がケリをつけてみせる!刺し違えようとも、どんな卑劣な手をつかおうとも!」

その声を聞いた隣のウソップは歩きだしてドルトンの前で背中をみせてしゃがんだ。おんぶする気なのかな。

「おれが連れていってやる!城へ!!」
「た、頼んでいいのか?」
「任せろ!……待ってろよ!今城へ、連れていく!」

ドルトンを背負って低い体勢のままずるずるとゆっくり進み始めたウソップを目で追いかける。背負われているドルトンが余計に大きく見えて、ウソップが埋もれてしまいそうだ。

「おい。ウソップくん、やはり無理が……」
「無理じゃねェ!連れていく!国のために戦うんだろ!あんたのケジメつけるんだろ!?安心しろよ!その決意は無駄にさせねェ!」
「……これは助けてあげたほうがいいんじゃないかな」
「……ったくしょうがねェバカ野郎が」

ウソップから視線をゾロに変えて呼ぶとブツブツと文句を言いながらもドルトンをウソップから奪いとって担ぎあげた。

ゾロとウソップに小走りでついて行くと町の人に止められた。30分でロープウェイを修理できるから、それに乗ったほうが断然早いみたい。じっとしているのは嫌だけどその修理が終わるのを待つことになった。