111

「おい嬢ちゃん!どうした!」
「フランキー。足がね……上手く、動かなくて……」
「っ時間がねェんだろ!」

後ろから来たのはフランキーだった。一緒に走り出して最初はあたしのペースに付き合ってくれてたけど、こんなペースじゃロビンには追いつけないからあたしの持ってる鍵を渡そうとしたら視界がぐるって回ったからついに倒れたのかと思った。でもよく見るとさっきよりも目線が高くて体を動かしてないのに勝手に揺れてるし、腰のあたりに何か巻きついてる。痺れを切らしたのかフランキーがあたしを担いで走ってくれてた。

「あたしは、置いてってくれてよかったのに……」
「何言ってやがんだ!ここまで来たんだからお前が助けに行かねェでどうする!おれが行ったってしょうがねェだろ!」
「……ありがとう!」

フランキーって、こんなにいい人だったんだね……!最初はあたし達の2億ベリー盗んだりウソップをボコボコにしたりしたけど、こんなにいい人だったなんて。その優しさにうるっときて、鼻水が出たからシャツで拭いちゃったけど怒らなかった。鼻水拭いても怒らない人はほんとにいい人な証なの知ってる!

そんなフランキーの優しさに感動してるときにピピって音がしてすぐに地面と壁が爆発した。一瞬の出来事にただ放心してたら、あたしを担いでたフランキーは服を掴んですごい腕力であたしを橋の上に投げ入れてくれた。

「フランキー!!」

なんて、なんていい人なの!自分を犠牲にしてまであたしを助けてくれたなんて!あたしこの命大事にするから!フランキーの優しさ無駄にしないから!!

「ロビンっ!」
「っ!風使いさん!!」

ボロボロになりながらこっちに走ってくるロビンに止まった涙がまた溢れそうになったけど、その後ろで海兵がこっちに銃口を向けてたから背中にロビンを隠すように立った。でもさっき受けた傷が痛んで膝に力が入らなくなって、地面に足がつきそうになったのと同じタイミングであたしの前にフランキーが現れた。ああもうっ。どこまでも優しい!自分を盾にするなんて男らしい!

銃声だけが聞こえてすぐに鉄にあたったような音が聞こえた。後ろからじゃ分からないけどたぶん、フランキーのサイボーグ部分に当たったんだと思う。

「丈夫なのよ、鉄だから。地雷はねェな、スパンダ」
『フランキー君、フランキー君。こちらそげキング』
「ん?あん?この電伝虫はおめー……」
『ナミから私が受け取った!それよりその付近に小さな赤い布の包みが落ちてるハズだ』
「おお、あるぞ」
『鍵が2本入ってる。君とリリナ君のを合わせて鍵は全て揃うハズだ!確かに届けたぞ』

そげキングが向こうの塔から届けてくれた赤い包みものの中にはしっかり3つの鍵が入ってて、最後にはめた5番の鍵でやっとロビンの手を塞ぐ海楼石の手錠をはずす事ができた。

「バカなァーーっ!!ほ、本物の鍵!?そんな!……って事はおめェら!司法の塔のCP9を全員倒したってのか!?いやそんなハズはねェっ!!うまく奪って逃げたなさては!チキショー!!」
「こちらフランキー!おい長っ鼻!ニコ・ロビンの手錠は外したぞ!」
「長鼻くん、ありがとう!」
『礼なら全てが済んでから必死に鍵を集めた者達に言いたまえ。君は紛れもなくルフィ君達の仲間だ!もう思うままに動けばよい!』

そげキングってばなかなかいい事言うねえっ!そうだよロビンはあたし達の仲間だよ。もうどこにも行かせたりしないよ!

「"六輪咲きセイスフルール""スラップ"!!」

変なのを頭につけた偉そうな奴の体から6つの腕を生やして、休む暇もなく次々にそいつの顔を平手打ちしていくからどんどん顔が膨れあがってって、終わった頃には元の顔が分からないくらいパンパンだった。

「存分に……!やらせて貰うわ」
「オシ!おめェら急いでこっちへ来い!脱出の準備は整えとく!」
『フランキーロビンちゃんリリナちゃん、こっちは無事だ!今すぐそっちへ向かう!』
「じゃあこの場は何とか……おめェ戦力に数えていいのか?」
「勿論」
「おめェは動くなよ!体力温存しとけ!」
「ちょっとくらいなら……」
「大人しくしてろ!!」

電伝虫を通じてサンジくんの声が聞こえて、それだけでもドキドキした。あたしどうしちゃったんだろう、サンジくんの事怖がってるのかな?そんなはずないのに……。


フランキーは休んでろって言うけどロビンもフランキーも戦ってて、ここが正念場だしあたしだけ座ってなんかいられないのに、それでもフランキーは立ち上がろうとすると無理やり座らせてくるからもう少しだけ大人しくしてる事にする。隙をついて参加しよう。

「急げーっ!ニコ・ロビンを捕まえて護送船にのせるだけだ!グズグズするな軍艦が来るぞ!!」

慌てる海兵が立ち止まった頃にはもう霧を抜けていくつもの軍艦がこっち向かって来てた。久しぶりに見るからなのか、いつもと違う景色だからか軍艦がものすごく大きく見えて少しだけ怖くなった。

「軍艦の艦隊だ!!バスターコールが始まるぞーっ!!!」