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さっき動かなくなった足はもう大丈夫かと思って立ちあがったけど、まだ足が小刻みに震えてずっとは立っていられない。動かなければその分だけ身体が固くなっていくみたい。それなら動こうと無理矢理足を動かしてみたけど、やっぱり思うように動かなくてさっきみたいに膝から倒れちゃうだけ。ナミが慌ただしくあっちこっちに動いてても、何もできなくて悔しい。そういえば……アラバスタでも空島でも大事なときにはいつもこうやって怪我してたな。

アラバスタのときは油断して銃で撃たれたし、空島のときは一瞬にしてやられた。青キジに会ったときは手も足も出なくて氷漬けにされたけど、今こうしていられるのはきっと他のみんなが守ってくれたから。大事なところではいつも守られてる。あたしは強いと思ってたのは完全に自惚れだった。しかもエースとかオヤジに守られてただけだって思うと恥ずかしくもなる。馬鹿みたい。

「顔をあげて、風使いさん」
「ロビン……」

ロビンの優しい声がすぐそこに聞こえた。いつの間にか俯いてたみたいで顔をあげると、ロビンはあたしと目線を合わせるようにしゃがんで優しい笑顔を浮かべてた。

「そんなに考え込む事ないわ。誰だって守られる事はよくある。私だってついさっきあなたに守ってもらったじゃない」
「だけどあたし……」
「誰も彼もが守られなくても強い人ばかりじゃない。船長さんだってこうやってたくさんの仲間がいて、その仲間を助けたい、守りたいって思うから挫けない心を持っているの。それってその挫けない心は私達が守ってるって事にならないかしら?」
「……」
「挫けない心が船長さんを強くする。だからもし私達の誰かがいなくなったら船長さんも弱い人になってしまうかもしれない。コックさんも同じようなものね。守る人も守られる人もいてちょうどいいバランスが保てるのよ。風使いさんだって十分強くて、頼りになる。だけどそんなに気負いして、いつもの笑顔が見られないと他のみんなも元気がなくなるわ」

ロビンは優しくあたしに言い聞かせるように一つひとつをしっかり伝えてくれた。それはあたしが今まで考えた事がないような考え方なのに、妙に納得できた。オヤジは何より家族であるあたし達を大事にしてくれた。それが家族を傷つけないようにっていうための強さだって分かるから。エースとルフィもそうだとしたら……ただ嬉しいしすごい事だと思う。

となるとあたしもやっぱりもっと守れるような力が欲しくなるけど、今はこれがあたしの精一杯なら変に足掻くよりもじっとしてようと思う。ロビンはすごいな。あたし何も言ってないのに考えてた事が分かっちゃうんだもん。ありがとう、ロビン。