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フランキー一家が見せてくれた手配書はこの麦わらの一味みんなの分だった。ルフィの金額は当然跳ね上がってるし、ナミとチョッパーの手配書すごい上手く撮れてるし、金額の差は激しいけどこれで晴れてみんな賞金首になったって事だね!あたしもだいぶ金額あがったし!


それとフランキー一家がここに来た本題は、今回の件で賞金首になっちゃったフランキーを一緒に海に連れ出してほしいって事で、まだ包帯だらけの子分達はみんな膝をついてルフィにそうお願いをしてきた。ルフィはその頼みを考えるそぶりも見せずにオッケーを出した。そういう事ならログもたまったし、船が出来たってさっき報告あった事だしって身支度を整えて今から島を出る事になった。


「お前らウソップの事はちゃんとハラくくったな!?これが筋ってもんだ」
「……わかった。おいいつまで落ち込んでんだ最初からその額はすげェぞ」
「うるせェ!!何でおれだけ絵なんだよ!!これのどこがおれだ!?あァ!?」
「リリナを見てみろ、あんなに喜んでんじゃねェか。それにそんなもんだぞお前は……」
「△□×〜◯※◇@*〜×◯」
「言葉にしろわからねェ」

手配書の写真に本人と似てない絵が使われてる事にサンジくんはすごい勢いで抗議してるし、チョッパーも二桁の金額に泣いてる。ナミも写真には満足してるもののちょっと憂鬱そう。これだけ金額があがったらオヤジ達も喜んでくれるかもしれないね!みんな元気にしてるかなぁ?

「おいリリナあのぐるぐる動かねェから引っ張って連れて来い」
「うん、わかった」

ってゾロは言ったけど言われた通りに引きずるつもりはないから、床に力なく倒れてるサンジくんに起きあがってもらうためにまず肩を叩いた。

「……サンジくん、みんな先に行っちゃったよ?」
「おれ……おれ……」
「あたしはよく書けてると思うんだけど……」
「リリナちゃんの目におれはあんな風に映ってんのか?」
「あ……」

自分で言っておきながら、しまったと後悔した。あんな事言ったらそりゃ逆効果だったよね。人を励ますのって難しいな。けどサンジくんはあの絵とは似てないし……そんな落ちこむ事ないよって言いたいのに……。確かによく書けてはいるんだけどな。ああいう人いそうだし。

「さ、サンジくんはさ、こうやってちゃんと見た方がこの絵より何倍もかっこいいよ」
「……さっきは違う事言ってた……」
「う……。ご、ごめんね。で、でもかっこ悪ーいって思ってたけど、本物のサンジくん見たらこんなにかっこいい人だったんだー!ってみんながそう思うんじゃないかな?」

あたしの励ましはあんまり効果がなくて、サンジくんは未だにうつ伏せの状態で気力をなくしたまま。そのせいで髪が顔全部を隠しちゃってて表情が見えない。耳の場所からしてどこに顔があるのかは分かるから慰めるように毛の流れにそって髪を撫でると、サンジくんの左手が髪を撫でてる手に重なったから心臓がドキって大きくなって一瞬だけだったけど、息ができなかった。

「……リリナちゃんに……かっこいいとこ見せようと思ってたんだ。絶好のチャンスだって……。なのに懸賞金の額も負けてるし、挙げ句の果てにこんな絵を使われるなんて。……リリナちゃんは本当におれの事かっこいいって思ってくれてる?」
「うん。これは本当だよ」

そっと髪をかき分けるとサンジくんの青くて綺麗だけど、いつもよりずっと弱々しい目があたしの方を見てた。その目に今度はきゅっ心臓が握られたような痛みが走ってまた一瞬息ができなくて。なにか病気にでもなったのかと思うけど、あたしの事よりも今はサンジくんに元気だしてもらわなくちゃ。

「ほら、みんなに置いていかれちゃうよ。あっ!そうだあたし寄りたいところあるんだ!サンジくんも一緒に来て!」

用事を思い出して、サンジくんの腕を引っ張って無理やり立たせて、脱力したままのサンジくんの手を引きながら廃船島に行くまでの通り道にある昨日のアクセサリー屋さんに向かった。お金と交換で出来あがったものが入った小さい箱と残りのものを受けとって、今度はみんながいる廃船島に向かった。

「これ、サンジくんにあげる!」
「え……おれに?」

手に持ってた小さめの箱をサンジくんに渡すと、サンジくんはあたしと受けとった箱を交互に見て戸惑ってたから箱の中身を見てもらった。あたしがあげたのはもともとサンジくんにあげるために作ってもらったネクタイピン。空島に行くときにサンジくんがあたしにくれたあの綺麗な色の石を使って作ってもらったんだ。そっと箱の中を覗いて見ると、シックで大人っぽくてサンジくんに似合いそうな出来あがりだった。デザインは店員さんに丸投げしちゃったけど、十分いいものを渡せてよかった。

「こんなもの、もらっていいのか?」
「うん、いつもいろいろしてくれてるお礼にね!もらってくれる?」
「もちろんだ!すげェ嬉しいよ」

さっきまで顔に力が入ってなかったのが嘘のみたいににっこり嬉しそうに笑ったサンジくんにほっとした。

「喜んでくれてよかった!」
「まじでありがとう、リリナちゃん。大事にする!」

お礼を言うといきなりサンジくんが廃船島に向かって走り出したから、あたしも完全に置いてかれないように走って小さくなってくサンジくんの背中を追いかけた。遠くの方でぴょんぴょん跳ねてるのを見たらあたしまで嬉しくなるよ。本当によかった!