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フランキーの足に自分の能力で腕を二本生やしたロビンは迷いなく中心にあるモノを握った。私にはルフィ達みたいに痛みなんて分からないけど、けれどあの能力ってちゃんと本体であるロビン自身にも繋がってるんだろうし、その……感触とか伝わってくるのよね。私ならそんなの嫌。そう思うとロビンの事末恐ろしく思うわ。

「宝を目前にした海賊に手を引けと言うのなら、それなりの理由を言って貰わなきゃ引き下がれないわよ」
「……だ、だからこの島にいてェんだよおれァ!お、お前らにゃ……感謝してるさ!したってしきれねェくらいにな!一緒に行ってやりてェが……おれにはここでやらなきゃならねェ事がある!だから船を贈ったんだ!!そもそもおれは船大工をやめた身だ!だからそいつはおれの造る生涯最後の船になる!念願だったんだ……それこそが夢の船だ!!」
「待て……フランキー。コイツはまだお前の言う夢の船には成ってねェハズだ」

フランキーの思い描く夢の船っていうのは、こうして思い通りに作り上げた船じゃなくてフランキー自身が自分で作った船に自分も乗りこんで、荒波や困難を乗りきってこの海の果てに到着したとき初めて夢の船になるんだ。それを見届けたいって昔嬉しそうに話してたって、アイスバーグさんは言った。

「……やりてェ事が変わったんだ!」
「やりてェ事……!?それは違う。お前が今この島でやってる事は全て償いだ……!あの日、トムさんが連行されて行った事を自分のせいだとお前はまだ悔いているんだ。だがトムさんはあの日すでにお前を許し道を示していた……!お前が裏町のチンピラ共をまとめあげた事も、賞金稼ぎを名乗り略奪者達からこの島を守っていた事も、全てはトムさんの愛したこの水の都を守り抜くというせめてものお前の罪滅ぼし。端からはとてもそうは見えねェだろうがな」
「見えねェだろうよ……そんなつもりは毛頭ねェ!!」
「大好きな船造りもやめて自分を押し殺して生きてきた。これからもずっとそうするのか!?たとえトムさんが許してくれてもおれがお前を許してやっても……何も変わらねェんだろうな。もういい加減に、自分を許してやれよフランキー!!……もう、てめェの夢に生きていいだろ?」

フランキーの涙を見る限りアイスバーグさんが言ってる事は本当で、結局はあいつもただ素直になれない不器用な男だったってわけね。夢を押し殺しながら生きていくっていうのは簡単なものじゃないのはよく分かってる。私とは状況が違うけど、大切な人が好きだったものを守りたいっていう気持ちもよく分かる。でも、今まで一緒に生きてきた人に背中押されるのってすごい心強くて励みになるのよね。そうなったら男の頑固なところも簡単に砕けるのも頷ける。


「ルフィーーっ!」

そんな感動的なところにフランキーをおびき寄せに出てたゾロとサンジくんが帰ってきた。

「あ、ゾロサンジ」
「大変なコトになって来た!!」
「お前のじいさんが戻って来たぞルフィ!!向こうの海岸で攻撃態勢でおれ達を探してる!!」
「って!フランキーてめェクソ野郎!!リリナちゃんの前でなんてモン晒しとんじゃ!汚ねェ!!」

2人が慌ててた原因はそれなのね。向こうの海岸って、海軍のあの大きな船だったら見つかるのも時間の問題じゃないのよ。早く出港しなくちゃ、せっかくこんなすごい船作ってくれたのに早々に海に沈める事になっちゃうじゃない!それにこのルフィのあのおじいさんじゃ手強そうだし。

「さァ乗れよフランキー!おれの船に!!」
「……へへへ、生意気言うんじゃねェよ!ハリボテ修理しかできねェド素人共め。これだけ立派な船に大工の一人もいねェとは船が不憫だ。仕方ねェ!世話してやるよ!!おめェらの船の船大工!!このフランキーが請け負った!!」
「いやったァー!!新しい仲間だーー!」

「ちょっと行ってくらァ!!!」

背中を押されたフランキーは子分達から投げられたバッグとルフィが返したパンツを両手に持って、この船の船大工として船に乗ってくれた。これで船の事は心配ない。その上こんなに素敵な船だもの。島に着く間も快適に過ごせそう。何より腕が鳴るわ!