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運よくゴーストシップ行きを免れた。けどまだ船の前の方にその船は止まってるし、ナミとサンジくんがルフィについて行く事になっちゃったから安心できない。そんな時にウソップがロザリオを作ってくれたからそれを首にかけた。でもこんなんじゃ気休めにもならないからすぐに外して返しちゃったけど。

それから少ししてボートが帰ってきた。なぜか塊が一つ多いけど。なんか違うものが乗ってる。付いてきたとかじゃなくてルフィが楽しそうに話してる。嫌な予感しかしない。

「ヨホホホホ!ハイどうもみなさん!ごきげんよう!私この度この船でご厄介になる事になりました。"死んで骨だけ"ブルックです!!どうぞよろしく!」
「ふざけんな!!何だコイツは!」

ご厄介……仲間?もしかして仲間になるの?このガイコツ。そんなのやだやだ。一日中怖い思いしなくちゃいけないなんて耐えられない。少しくらいあたし達の事考えてくれてもんじゃないかなルフィ。

「おや、美しいお嬢さん方!パンツ見せて貰ってよろしいですか?」
「やめんかセクハラガイコツ!」

しかもこれって変態ってやつじゃない?普通の人ならパンツなんて見たがらないもん。これからどうなっちゃうの……。



あたしの気持ちとは裏腹に船長ルフィの希望で、今日の夜ご飯はガイコツと一緒に食べる事になった。なるべく視界に入れないように、なるべく意識しないように食べる事に集中した。

「おや!お嬢さんお腹いっぱいでしたら私が代わりに食べましょうか?」
「ぎゃあぁ!あっちいけぇ!!」
「てめェクソガイコツ!リリナちゃんに話しかけんじゃねェ!怖がってんだろうが!」
「つーかお前なんでガイコツなのに生きてんだ?」
「あ、私ヨミヨミの実という悪魔の実を食べたんです」
「"ヨミヨミの実"?」
「やっぱり悪魔の実か……」

急に遠くから話を振られて驚いたけどサンジくんとルフィのフォローのおかげでなんとか切り抜ける事ができた。このまま仲間になって普通に話しするようになる日が来るなんて考えると恐ろしいよ。

「ヨミヨミの実とはヨミがえる。 つまり復活人間というわけで二度の人生を約束される、何とも不思議な能力でしてね!私、その昔海賊だったのですが。私の乗っていたさっきの船で仲間達と共にこの魔の海へ乗り込んで来たのですが……。運悪く、恐ろしく強い同業者に出くわし、戦闘で一味は全滅。当然私もその時死んでしまったのです!生きてる間はただカタヅチになるだけのヨミヨミの能力でしたが、ついにその日実の能力が発動しました」

ちょっとマナーがなってないけど、そこはルフィとかウソップもたまにするからいいかな。でもこのガイコツは今日さっき会ったばっかりなのに身をさらけ出しすぎだよね。……骨だけだから身とかないけど。

「私の魂は黄泉の国より現世に舞い戻ったのです!すぐに自分の死体に入れば蘇れる筈が私の死んだこの海はごらんの様に霧が深く迷ってしまい、霧の中魂の姿でさ迷い続けること一年!自分の体を発見した時にはなんとすでに白骨化していたのです!びっくりして目が点になりましたよ、目玉ないんですけども!ヨホホホ!!」
「マヌケだなー。ゾロみてェな奴だな、なはは!」
「あのな……」

話を聞いてるとオバケじゃないみたい。だけどガイコツってやだよね。他に乗り移る事できなかったのかな?ガイコツだといろいろと不便だと思うんだよね。こうやって無駄に怖がらせる事になるし、悪魔の実って本当に厄介だね。

「じゃ、お前オバケじゃねェんだな!?つまり!」
「人間なのか!人間じゃねェけど!」
「ええ、私オバケ大嫌いですから!そんなものの姿見たら泣き叫びますよ私!」
「あんた鏡見た事あるの?」
「ギャーー!やめて下さい鏡は!」

ナミが出してきた鏡を向けられると声をあげてすごく嫌そうにしてる。なんで嫌なのかな?自分のガイコツ姿は見たくないとか?それはそれで可哀想。やっぱり損しかしてないって思ってたら鏡の中にはウソップとチョッパーしか映らなかった。ヨミヨミの実を食べて生き返ったただのガイコツなはずなのになんで鏡に映らないのかってみんな動揺して身構えた。

「よく見りゃお前影もねェじゃねェか!」
「うわー!本当だ!お前実は何者なんだー!!」
「……。ズズ……」
「いや落ち着くとこかよ!!」
「こっちは騒いでんだぞお前の事で!」
「全てを一気に語るには……私がこの海を漂った時間はあまりに長い年月。私がガイコツである事と、影がない事は全く別のお話なのです。……続く」
「話せ!今っ!!」
「影は、数年前ある男に奪われました」

影を奪われたって……影なんか奪う人なんてあいつしかいないよね。という事はまた政府関係者?あいつは海賊だけど。それならそれでまた面倒だ。しかも不気味悪いから好きじゃないし、むしろ嫌い。

「お前が動いて喋ってる以上今更何言おうと驚かねェがそんな事あんのか?」
「あります。影を奪われるという事は光ある世界で存在できなくなるという事で、直射日光を浴びると私の体は消滅してしまうのです!同じ目に遭った誰かが太陽の下消えていく所を目のあたりにしました……!それはもう身の毛もよだつ光景でした、ガイコツなのに。光で地面に映るハズの影がない様に鏡や写真などに私の姿が映る事もありません!つまり私は光に拒まれる存在で!仲間は全滅。"死んで骨だけ"ブルックです!どうぞよろしく!」
「何で明るいんだよ!!さんざんだなお前の人生」

その話を聞いてたら少しだけ怖くなくなった。全部好きでこうなったわけじゃないからかな。同情なのかもしれないけど。動くとやっぱり怖いけど。だけどやっぱり同じ船に乗るのはいやだ。