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ルフィが連れてきたガイコツは陽気なガイコツでした。ガイコツなのにもさもさアフロで、能力者で。骨だけだからすらっと細長くて。だけどガイコツだっていう事実は頭の中でこびりついたまま。ぼんやりしながらガイコツのお話しを聞いてると急にバンザイしながら笑い出した。

「ヨホホホホホ!ヨホホホホ!」
「おいおい、どうした大丈夫か?」
「今日はなんて素敵な日でしょう!人に逢えた!!」

笑い声の後と今の気になる一言で一気にみんなからの視線を集める事になった。この広い海を航海するには航海士が必要になる。でもこのガイコツはあの大きな船に一人でいたんだって。だから航海士もいない。どこかの島に辿り着く事もできないまま、ずっとあの船に乗ってたんだ。

「今日か明日か、日の変わり目もわからないこの霧の深い暗い海でたった一人、舵のきかない大きな船にただ揺られてさ迷うこと数十年!私本っっ当に淋しかったんですよ!淋しくて、怖くて……!死にたかった!長生きはするものですね!人は喜び!私にとってあなた達は喜びです!ヨホホホ!」
「………」
「涙さえ涸れていなければ泣いて喜びたい所!……あなたが私を仲間に誘ってくれましたね!本当に嬉しかったのです。どうもありがとう。……だけど本当は断らなければ!」
「おい!何でだよ!」
「先程も話した様に私は影を奪われ、太陽の下では生きていけない体。今はこの魔の海の霧に守られているのです。あなた方と一緒にこの海に出ても、私の体が消滅するのも時間の問題。私はここに残って影を取り返せる奇跡の日を待つ事にします!ヨホホホ」

何十年もずっとこの暗い海で、あんな大きい船でたった一人。ゆっくりそんな光景を想像してみるけど、全然頭に浮かばない。もしかしたらあたしが生きてきたのよりも長い間かもしれない。一日だって耐えられるか分からないのに、助けも求められなくてどうしようもないままずっと一人だったなんて。

「何言ってんだよ水くせェ!だったらおれが取り返してやるよ!そういや誰かに取られたっつったな、誰だ!?」
「……!」
「どこにいるんだ!」
「……あなた本当にいい人ですね。驚いた!……しかしそれは言えません。さっき会ったばっかりのあなた達に私の為に死んでくれなんて言えるハズもない」
「敵が強すぎるって事か?減るもんじゃなし、名前を言うくらいいいだろ」
「いいえ言えません。当てもないのです。ヨホホホ」
「聞いてみたら意外とどうって事ないやつかもしれないよ?」
「………」

あたしがそう言うと顔だけこっちに向けられて目が合ったように感じた。目がないからちゃんとした感覚はないけど。あたしが言った言葉の意味に気付いたみたい。影って言ったらあいつしか浮かんでこないもんね。何秒か顔を合わせた後、ゆっくり小さく顔を横に振ってまた正面を向いてしまった。

「私の第二の人生が終わるまでに会えるかどうかもわかりません。もし次会った時にとは、私も戦いをハラに決めていますが……。それより歌を歌いましょう!今日のよき出会いの為に。私は楽器が自慢なのです!海賊船では音楽家をやってました」
「えーっ!?本当かァ!?頼むから仲間に入れよバカヤロー!」
「ヨホホ!では楽しい舟歌を一曲いきましょうか!……ギャアアア!!」

立てかけてあったバイオリンを持って弾き始めようとしたガイコツが大きい声をあげて腰を抜かした。震える体と手で指差した方向には大きくて真っ黒い目をしたおばけがこのキッチンの中に入ってきてた。思わず隣にいたロビンにしがみついたけど、一回おばけを見ちゃったからもう目が離せなくなった。それからおばけがいなくなるのと一緒に船にお皿が揺れるぐらいの震動が起きたから、もう何がなんだか分からない。

「何て事!まさかこの船はもう監視下にあったのか!?見て下さい!前方が門で閉ざされました!今の震動はコレです!これは門の裏側!という事は!……船の後方を見て下さい!」

慌ててるガイコツにつられて外に出ると薄暗くて霧のかかった海にぼんやり古そうな建物が浮かんでる。よく分からないけどあそこには行きたくない。

「もしやあなた方流し樽を海で拾ったなんて事は?」
「あ、拾ったぞ!」
「それが罠なのです。この船はその時から狙われていたのです!」
「狙うって?どういう意味だ?この船は今ずっとここに停まってたのに」
「これは海をさ迷う"ゴーストアイランド"スリラーバーク!!」

島が海を渡れるって事?それよりこんな怖そうな島が海を渡ってくるなんて冗談じゃないよ。普通の島みたいに大人しくしてくれていればいいのに!まさかこの島に降りるなんて言わないよね?ここだけは本当にごめんだよあたし。