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ルフィってばアミとカゴでおばけ捕まえられるって本気で思ってるのかな?捕まえられるわけないのにね。それよりもまずおばけと海を渡るなんて絶対いやだ。もしルフィが捕まえてきてもルフィが見てない隙に逃がしちゃおう。……そもそも捕まえられないけどね。

「よし!さてお前ら。これより小舟を使って島へ上陸するわけだがおめェらにまだ見せてねェとっておきのものがあるんだ。ソルジャードックシステム、チャンネル2だ!」
「2?」
「このシステムのチャンネルは5つある。0が二つに1、2、3、4!各ドックより各種機能が発動するわけだ」

みんなが甲板に集まったとこでフランキーがなにか話し始めた。そういえばちょっと前に見せてもらったんだ。二つの0はパドルで、1は空島からもらってきたウェイバーを改良して作ったもので、3は海の中を探索するために使うサメの船だったっけな。

「0の外輪パドルと1、3はもう見せて貰ったけど2と4はまだ空だってお前言ったろ?」
「うははは!とっておきなんでそう言った。上陸する気のねェ奴らは試し乗りしてみろ!」
「望むところだ!」
「ソルジャードックシステム、チャンネル2!」
「何だ何だ、何が飛び出すんだ?」
「出動!買い出し船、ミニメリー2号!4人乗り蒸気機関、外輪船パドルシップだ!」

説明が終わったのと一緒にドックの出口から出てきたのは後ろからもくもく煙を出しながら海を走る小さなメリーだった。船の上からじゃよく見えないけど、あの後ろから見た船首は今までたくさん見てきたメリーと同じ。この船の下にメリーが隠れてたなんて。フランキーってば本当に人を喜ばせてくれるのが上手。あたしも乗りたいな。

「最高の心遣いだな」
「こんな買い出し船ならいくらでも買い出すぞおれは」
「うほーかわれー早くかわれー!」
「こっち来てー!あたしも乗る!」

煙をあげながら船から離れてミニメリーの乗り心地を楽しんでいる3人に聞こえるように声をかけてみたけど、届かなかったみたい。早く、早く帰ってきてよ。ってそわそわしながら待ってたら霧の中からナミの叫び声がした。

「ナミの声だ!」
「何やってやがんだアイツら。霧で何も見えねェ」
「だけど島の方からよ」
「お前らァ!おーーい!早くおれもミニメリーに乗せてくれーっ!!」
「そうじゃねェだろ!ナミさんの身の心配もしやがれ!」
「おめェこそあと二人の心配もしやがれ」
「今の悲鳴、ゴーストに呪い殺されたのかしら……」
「おばけ!?」
「縁起悪ィ事言うヒマあったら船を近づけるぞ」

ロビンが怖い事言うから落ち着いてたはずの恐怖心がまたこみ上げてきて、近くにいたロビンにしがみ付いた。さっきサンジくんに助けてもらうって約束したけど、まだロビンがいるからいいよね。そんな時、上げてたはずの錨が勝手に下りた。

「勝手に錨が!」
「錨なんて誰も触ってねェぞ!?」
「……作ったばっかで歯車が緩むわけねェしな……」
「とにかく巻き上げろ。船がバランスを失うぞ!」

いきなりの事だから当然みんな事態が飲み込めなくて冷静を保てなくなる。なんとなく、誰かの気配がするんだけど……でもなんだか薄っすらって感じだから少し怖い。もしかして……なんて考えたくないけど。

ロビンにしがみ付いたまま船を見渡してると今度はドックに続くハッチが開いた。もちろんみんなハッチを開けられる程近くにいなかったから、勝手に……だけど。

その事実に気付いて全身の血の気が引いていった。ああ、本物が現れたんだ。恐れていた事が起きてしまったんだ。

「…………」

今度はルフィの両頬が誰かに伸ばされてるみたいに横に伸びて、かと思ったらごろごろ転がってドックまで落ちそうになった。なにか、いるような気がする。でも目に見えない事に怖さが増えていく。誰かいる。そう気付いたら今度はゾロの刀がひとりでに動いてルフィに突き刺さりそうになった。すかさずフランキーがルフィを無理矢理庇ったおかげで助かった。

「誰か……いる……」
「……本当なの?」

おばけだ。この船に、おばけが乗りこんじゃったんだ。ロビンにぎゅっとしがみつきながらみんなに知らせようとすると思った以上に震えた声になった。