「ああ。おめェはしょうがねェ。少しは移動できるか?ちょっと避けてろ」
「あいつって変なところで役に立つやつだよな」
「弱ェくせになんか強ェよな。訳わかんねェし」
オーズと睨み合ってるとあたしの後ろで倒れてたみんなが起き上がって怖い顔をしてた。
「あ、みんなおはよう」
「うるせェ」
「寝起き悪くない?」
「おいオーズ!」
「てめェの中身がルフィの影なら、てめェの仲間の底力、見くびっちゃあイカンだろう……!」
みんななんとか無事そうで良かった。ちょっと心細かったところだよ。私一人じゃどうにも出来なかったし、とにかくこれで一安心だ。
「一つ提案なんだが……コイツを一丁投げ飛ばすってのどうだ?」
「な、投げ飛ばす!?こんなでけェ巨体をー!?」
「成程。そりゃさぞ気持ちいいだろうな」
「しかし、このデカさでルフィの動きとは恐れ入る」
「でも海賊王は似合わないわ」
「どう切り崩すかだ。作戦はいくらでもあるぜ!」
「何か弱点があるはずだ」
「デケェ魚は少しずつ弱らせるってのが定石だが」
「超コワイ」
投げ飛ばすってどうやるの?そんな怪力持ってる人なんて誰もいないし、オーズに対抗できるくらい背の高い人だっていないのに。みんなそれぞれの能力を合わせるの?……あたしには全然考えつかないや。諦めずにぐるぐる考えてるとオーズのお尻が降ってきた。それぞれ散らばって誰かが仕掛けるのを待つことにした。先手を切っても上手く行かないだろうから、あたしがみんなに合わせるのがいい。
最初に動き出したのはフランキー。ウソップとチョッパーに声をかけて何か始まりそうな予感。三人はサンジくんとゾロも巻き込んでスムーズに合体した。サンジくんとゾロが足、ウソップが右腕、チョッパーが頭、フランキーが胴体。ちなみに左腕はなし。
「ちょっと待ってフランキー!
「何!?おい!何してる、ニコ・ロビン!早く左腕にドッキングしろ!」
「来い!ロビン!おれの様にやれ!」
「人として恥ずかしいわ」
ロビンの一言にショックを受ける三人。そして何故かオーズが残念がっててショックを受けて反応に遅れて壁に叩きつけられた。やっぱり中身がルフィってだけあって、今のオーズもああいうものが好きらしい。
「フランキー!このデケェの借りるぞ!」
「あっ!てめェおれのヘビーヌンチャク!貸すっ!」
「ロビン!おれがあいつの左腕をハジいたら関節をきめろ!」
「了解」
「くらえ必殺"特用油星"三連発!」
フランキーが用意したガレキで作ったヌンチャクにゾロが刀を刺して何かに使うみたい。それにタイミングを計るようにウソップが地面に手をついているオーズの手元に油をかけて体勢を崩した。ゾロとロビンがバランスを崩してるオーズに追い打ちをかけるように体を傾けて、片腕を使えなくするように関節技をかける。それでもまだもう一歩足りない。
「おい嬢ちゃん!おれら二人をあいつの顔まで飛ばしてくれよ!」
「分かった。"アップ"」
「すげーーー!!」
「スーパー"フラッパーゴング"!!」
「ぐるぐる回転させるのもありかも」
「ぎゃあああ!!!」
「さすがに可哀想だから事前に言ってやれよ……」
フランキーとチョッパーがタイミングを揃えて拳を構えてたところで、回転させれば威力があがるって閃いたから即興でやってみた。その効果は抜群で、オーズは目を回したようにフラフラし始めた。一緒にふらふらになったフランキーとチョッパーのことも忘れずに、着地させてあげたよ。
「後の支えはその足一本だな、ルフィの化け物!"アンチマナー・キックコース"!」
唯一の支えだった一本の足を無くしたら、豪快に頭から転んだ。しかもツノが刺さって抜けないっていうからチャンスだと言わんばかりに総攻撃をかけてみたけど、あれだけ大きいからやっぱりタフでなかなか弱ってくれない。
そんなことをしてるうちに霧の向こう側が少し明るくなってきた。夜明けまでもう本当に時間はない。早くしないとルフィ達がいなくなっちゃう。やっと早くモリアをどうにかしないといけないって危機感が出てきた。モリアじゃなくても三人の影が入った体を探せばいいんだけど、やっぱりモリアをどうにかした方が手っ取り早いし。
「キシシシシ。図らずも清々しい夜空。もう夜明けも近いが、ぐずぐずしてていいのか?貴様ら」
「モ、モリアだ!何でここに?ルフィは!?」
オーズのお腹が捲れたと思ったら中からモリアが出てきた。なんて悪趣味な登場の仕方なんだろう。いや、あいつにはお似合いだけど。そんなモリアの登場にルフィのオーズはのんきに喜んでる。
「キシシシ!さァお前ら、おれと戦うチャンスをやろう。おれを倒せば全ての影を解放できる。全員でかかって来い!ただしオーズを倒さねばこのおれは引きずり出せねェがな……!」
「あのヤロー汚ねェぞ!」
「モリアを倒さなきゃオーズを浄化できねェのに、そのモリアがオーズの中に入っちまった!」
「かえってスッキリしたじゃねェか標的がよ」
「やるしかねェ!」
ゾロの指示でオーズを浄化するのに使うたくさんの塩をウソップが取りに走り出した。でもあたし達が大声で話してたから、ウソップの行き先をモリアに聞かれてたみたいでオーズにウソップを狙うように指示を出すと、素直に下された言葉に従ってオーズの腕がウソップを巻き込むように壁を壊した。
「しまった!ウソップ!」
「まずい!モリアが加わる事でオーズに頭脳がついちまった!」
「ウソップ返事しろー!」
「ご無事ですっ!」
あたし達とは違う声がしたのは、オーズが壊した壁を見ていたあたし達の背中から。振り返れば大きいガレキの上でブルックがウソップと大きい袋を抱えてた。そんなブルックの姿が輝いて見えた。骨なんだけどね。
「遅くなってもうしわけありません!大量に塩が必要かと思い!集めていました!」
「ブルック!お前、動けるのか!?」
「確かに、重傷だった私!体を引きずり厨房へ塩を探しに行きましたところ、牛乳を発見しましておいしく戴きこの通り!」
「イヤどんだけカルシウム効いてんだ!」
「牛乳で骨折治りますよね!」
「ウソつけ!」
思わぬ助っ人ブルックのおかげでウソップがどうにかなることもなくて、たくさんの塩も用意することもできた。まさに一石二鳥!
「キシシシ!おれが戦いの場に出向いてやったことに感謝しろ!そして充分に気をつけるんだな……!おれはただ乗ってるだけじゃねェ。最高の悪夢を見せてやろう」
それからあたしは覇気を使って守りに徹底してみんなをフォローするように言われた。あんまり喜べないけどしょうがない。あたしは大きい一撃を放てるほどの技ないし。
「私も共に!戦わせて頂きますよ!精一杯!影を取り戻して頂いた大恩ちょっとやそっとで返せるものとは思いませんが!精一杯っ!……きしむ」
「無理すんな!その塩しっかり持ってろよ!」
ゾロが細い塔をブロックみたいに切り分けたものをサンジくんがオーズに向かって蹴り飛ばす。珍しい連携だったけど体の大きいオーズにしてみれば目に捉えてしまえば簡単に防いでしまえるもので、返り討ちに遭うようにあたし達の方に飛んで返ってくる。
「"ブリーゼ"」
あたし達に飛んでくるガレキを風を起こして勢いをなくして目の前に落とす。その横で今度はウソップが作ったパチンコにフランキーが乗ってオーズに向かって飛んでいく。フランキーから放たれた砲弾は軽々しく避けられて後ろにあった建物に当たった。
「何て身のこなし……!時々忘れるぜあいつがルフィだってこと!」
オーズかフランキーに反撃をしようとするのに備えてまだ空を飛んでるフランキーの体を風でさらって阻止する。あれだけ大きいと連携して攻撃を仕掛けないといけないけど、フォローするあたしとしては大忙しだ。大変。
「"サンダーボルト・テンポ"!」
構えていたオーズに空から大きな雷が落ちた。いいタイミングで落ちてくれて助かった。この雷はナミ?でもどこから?いつの間に?
「雷!この攻撃……!」
「
今の一撃でどこかにナミがいることが分かったサンジくんが建物の上にいるナミを見つけてハートを飛ばす。そんなサンジくんのせいでオーズの標的がナミに変わった。お馴染みのルフィの技の構えをとるオーズだけど、どうせ伸びないだろうと思ってたあたし達の考えとは裏腹にオーズの腕が伸びてナミのいるところまで伸びた。
「え!?伸びた!なんで!?」
ナミはロビンがハナハナの能力で助け出してあたし達のところに降りてきた。なんでも影が実体になったんだとか。……全然理解できないけど、とにかくこれもモリアの能力のせいらしい。厄介だ。どうにかしなくちゃ。