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モリアの悪夢から解放され清々しい太陽の下、成り行きで一緒に戦っていた他の海賊団の奴らとメシを食うことになって、ありったけの食材を余すことなく使ったらどうにか全員に行き渡るくらいの量を用意できた。そしてルフィを中心に騒ぎ始めて、いつしか宴に成り代わっていた。

「リリナには何をやったら起きるんだ?エースか?」
「リリナの寝起きの悪さを舐めんじゃないわよ。尋常じゃないんだからね」
「アラバスタであいつナミに叩き起こされてたよな!ニシシ!」
「ほんとに起きないんだから!」
「こんなに騒がしいのにな……」

その最中、あれから一日経った今でも寝てるリリナちゃんとマリモのところにルフィがやってきて、寝ているリリナちゃんの顔を物珍しそうに覗いている。マリモは受けたダメージの大きさから気絶し寝ることで自分の身体を治しているらしいが、リリナちゃんはただ寝ているだけらしい。

あの七武海のくまの強烈な一撃の後、リリナちゃんが倒れていなかったことに驚いたが、マリモにやられてあいつが七武海に何をされたか分からないがまさかリリナちゃんまで加担してたんじゃないかと肝を冷やした。やんわりチョッパーにリリナちゃんの身体のことを聞くと、大したダメージは受けていなくてただ眠っているだけだった。お騒がせレディ炸裂だ。


しかしあれだ。今までもそうだが島に行く度なにかゴタゴタに巻き込まれて、その度に傷ついて寝ているリリナちゃんをこうやって見ている。今回はただ寝ているだけだがやっぱり同じことだ。おれ達みたいなタフさはないがやっぱり後半の海に構える白ひげ海賊団の一人なんだもんな。自分で言っときながら傷ついた。馬鹿みてェだ。

「おれが守るって言い出したのにな……」

約束を守れないことほどかっこ悪ィもんはねェよな。しかも仲間とはいえ他の女を助けに行くためにリリナちゃんの傍を離れたとあっちゃ救いようがねェ。リリナちゃんに合わせる顔がねェな……。



・ ・ ・ ・ ・



「んー、うるさい……」
「あらリリナおはよう」
「……ロビン?」

ピアノの音と食器が鳴る音、たくさんの手拍子と笑い声。一気に頭の中に入ってきて二度寝ができなくなった。しぱしぱする目をこすって明るさに慣れようとしたらすぐ傍にいたロビンがジュースを用意してくれた。

「なんでこんな賑やかなの?」
「影が戻ってみんな喜んでるのよ」
「……そっか」

みんな嬉しそうに食べもの頬張って、笑いあって楽しそう。ロビンもそれをみて笑ってる。周りを見ればフランキーとウソップとチョッパーが真ん中に立ってヘンテコな踊りをしてて、その近くでナミが向こうの船の船長と笑いながら話ししてる。ゾロはあたしの隣で寝てるし、ルフィは端っこの方にあるピアノの上に乗ってピアノを弾いてるブルックと話してる。

ブルックが頭の中を開けて取りだしたのはトーンダイアル。それに録音されてはのはブルックが前の船のクルーと最期に歌ったビンクスの酒。たくさんの楽器の音とたくさんの歌声は今ここにいる人達に負けないくらい賑やか。

「かつて仲間達と共に命いっぱいに唄ったこの唄。ルンバー海賊団最期の大合唱。……暗い暗い霧の海を一人さ迷った50年間。何度聴いたことでしょうか……。一人ぼっちの大きな船で…この唄は、唯一……私以外の命を感じさせてくれたのです。しかし今日限り私は新たな決意を胸に、このトーンダイアルを封印します」

やっぱり何もないみたいに頭の中にトーンダイアルをしまった。いろいろ教えてほしいところはあるけど、あの陽気な感じが逆に怖い。

「ラブーンが元気で待っていてくれてるとわかった。影も戻った、魔の海域も抜けた……!このダイアルに蓄えたみんなの唄声は、もう私が一人昔を懐かしむ為の歌じゃない!……これはラブーンに届ける為の唄!辛くない日などなかった……。希望なんか正直見えもしなかった。でもねルフィさん……私!生きててよかったァ!本当に!生きててよかった!」
「そらそうだ」
「今日という日が!やって来たから!……あ、私仲間になっていいですか?」
「おういいぞ!」
「さらっと!入ったァーー!!」

まさかこんなに簡単に仲間に引き入れていいの?でもブルックには大きいクジラに会いに行くっていう目標があって、ルフィ達はそのクジラに会ったことがあるって言うんだから一緒に会いに行くためにはこうなってあたり前なんだけど。だけどブルックもルフィの次くらいに大変そうな感じ。大丈夫かな?


「改めまして!」

みんなで騒いで一息ついたところでブルックが片膝をついて、内ポケットから手配書を出して麦わらのみんなに見えるように床に開いて見せた。

「手配書!?賞金首なのかお前!」
「申し遅れました。私!死んで骨だけ、名をブルックと申します!フダツキでございます!通称"鼻唄"のブルック!懸賞金3千300万ベリー!昔とある王国の護衛戦団の団長を務め、その後ルンバー海賊団の船長代理、音楽家兼剣士。今日より麦わらのルフィ船長にこの命!お預かり頂きます!みなさんのお荷物にならぬ様に、骨身を惜しまず頑張りますっ!!」

ブルックの挨拶にワッとみんなが騒ぎ出して一気に賑やかになった。新しい仲間にみんなが笑って歓迎した。新しい仲間が出来てよかったね。ルフィ音楽家を仲間にしたがってたし、すごいいいタイミングだよ。