148

ブルックが新しく仲間になってから二日後、やっとゾロが起きてきて船を出すことになった。あんなすごい血を流してもう死んじゃう寸前だったってチョッパーが言ってたのに三日寝ただけで治っちゃうんだもん、すごい生命力だよね。って思ったことをつい本人の前で言ったらわりと痛いデコピンをされた。

次の島は魚人島だってみんな浮き足立ってるけど寄らないといけないところあるんだよ。ってなかなか言いにくい。それから仲良くなった海賊団の船長のローラが自分のお母さんのだってナミにビブルカードがどんなものなのか、説明と一緒に渡してた。

「このママのビブルカードに私がサインしとくから、いつか何かに困ったらこれを辿ってママに会うといいわ。その時は私も元気でやってたって伝えてね」
「……おれ、それ一枚持ってるかもな。もしかして……」
「今私もそう思った。前にあんたがエースに貰った白い紙。同じじゃない?」
「そういう意味だったのか。コレだ」

前にアラバスタでエースがルフィにあげたビブルカードを麦わら帽子のリボンの中から取りだした。出てきたビブルカードを見たら一瞬心臓が止まったみたいになった。渡してたときはあんなに大きかったものが今は手のひらよりも小さくて、焦げてる。

「見せて!」
「あ、おい!」
「……どうしたの?リリナ」

ルフィの手から無理矢理奪ったビブルカードを見つめる。手のひらに乗せてみても全然動かない。

「エース……」
「これは確かにビブルカード。……でも、まだ言ってなかったけどこの紙は持ち主の生命力も啓示するのよ!これ、あんたの大事な人でしょ?」
「ああ、おれの兄ちゃんだ」
「気の毒だけど、この人の命!もう……消えかけてるわよ!」
「えェ!?」

エースに何かあったんだ。でも何があったの?ティーチとのことはどうなったの?エースがやられちゃうほどの強い人に会ったとか?

「……リリナ……」
「あたし、先に船に戻ってるね……。ルフィ、ビブルカードちょっと借りてるね……」
「おう」

みんなより先にサニー号に戻って部屋に入ってテーブルの上にビブルカードを置いた。焦げてるけどまだこれ以上小さくなってるわけじゃない。だけどいつ全部焼けてなくなるのか分からない。エースは今どこにいるの?どうしたの?ちょっとした怪我とか、一日寝こむほどの事があってもここまで小さくならないはずなのに。あたしどうしたらいいの?このままこの紙が全部なくなるところを見てるだけ?

「くまが言ってた兄弟って、エースのことだったんだ……」

新聞読めって言ってたからエースの記事が載ってたのかな。くまが知ってるってことはもしかしたら海軍が関わってるのかも。……捕まった?エースが?でもエースがそんなに弱いはずない。

ダメだ。考えれば考えるほどこんがらがる


・ ・ ・ ・ ・



スリラーバークとローラ達に別れを告げて、穏やかな海を渡り始めた。今まで暗いところにいたからこの優しい風と波の揺れが懐かしく感じる。

「ルフィ、本当にいいの?」
「ん?ああ、エースの紙か?いいんだ気にすんな」
「ルフィさん私構いませんよ?寄り道しても。今さら私とラブーンに時間などさしたる問題じゃありません。生きて!会う!これが大事!」
「ルフィ。おれ達ァ全員寄り道上等だぞ」

エースが今どこにいるのか分からないけど、アラバスタで会ったんだから向かうにはそう遠い場所じゃないと思う。あの変な小船で遠くまで行けるとは思えないし。

「いやいいんだ、本当に!万が一本当にピンチでもいちいちおれに心配されたくねェだろうし、エースは弱ェとこ見せんの大っ嫌いだしな。行ったっておれがどやされるだけさ。おれ達は出合えば敵の海賊。エースにはエースの冒険があるんだ」
「そうだけど……リリナはそうはいかないじゃない」
「んー、まあな。あいつとエースは前仲間だったしなァ」
「あいつもうリリナを引き入れた気でいるぞ……」

現にリリナは部屋に閉じこもったまま出てこようとしないし、ちょっと覗いたらベッドの上で転がってたし。

「そのビブルカードってのは本人が弱ると縮むだけで、また元気になったら元の大きさに戻るそうだな」
「うん。会うならそん時だ!その為にエースはこの紙をおれにくれたんだ!リリナのこともあるけど、どっちにしろ悩んで船を止めてる方が時間のムダだろ。それこそ間に合わなくなるかもしんねェ!」

ルフィが言うなら考え直させるわけにいかないから従うけど。でもエースの状況が分からないんじゃリリナはずっと引きこもったままって事じゃない。ニュース・クー新聞届けてくれないかしら。