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「あいつが、この船を下りるなんてこと……考えるはずがねェ!!ロビンだってあんなに必死になって助けたじゃねェか!」

あれこれ考えてたら頭にのぼった熱がやっと冷えてきて、ひと息ついたら思ったよりも長くて溜め息みたいになった。ルフィはいつも通り大口をあけて船から飛び出していきそうになったが、ナミさんが無理やり止めに入った。

「ルフィあんたは行っちゃ駄目!」
「なんでだよ!リリナが連れてかれたんだぞ!!」
「でもロビンのときとは状況が違うわ!敵は強くなさそうなあいつだけだし!」
「おれは勝手に船を下りるなんて許さねェぞォ!」
「ほら変な勘違いしてるじゃない!」
「どんな奴がいんのかなァ……。強そーな奴いねェよな?あいつだけだよな!?」
「リリナ元気にしてるかしら?血だらけになってなきゃいいけど」
「ひいいいい!!」
「……おれに行かせてくれ。みんなはここで待っててほしい」
「なんでだよ!」
「こんなことになったのはおれせいだ。あの時おれが馬鹿になってなきゃリリナちゃんは今もこの船にいたはずだ。だから、おれが助けたい……!」

確かに決定打はクソ剣士が無神経なこと言いやがったからだ。あんなこと言わなかったらリリナちゃんが攫われることもなかったんだ。だが元はといえばおれのせいだ、おれがリリナちゃんを一人にさせる原因を作らなかったら攫われることもなかった。だからおれが助け出したい。ルフィの目を見て言えば渋々だったが許可が出た。必ず連れ戻してくるという約束をつけて。


すぐに船を降りておれを心配するチョッパーの声を背中で聞きながら暗闇の中を走り出した。この島に着いてからおれは食い物屋が建ち並ぶ通り以外は行ってない。だからリリナちゃんが連れていかれた場所なんて検討もつかないが、町の中ではないはずだ。何も聞かずに出てきたことを後悔するが、迷ってでもおれが必ずリリナちゃんを助ける。頭の中はそれしかなかった。