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スリラーバークでモリアに言われた言葉で、今まで自分が何も考えないでここまで来てしまったことに気付いた。オヤジは今もあたしの帰りを待ってる。でもルフィ達はこのままあたしも連れて先の島へ進んでいくつもりだ。

どうしたらいいのか分からなくて毎日毎日考えてた。この島に着いて浮かれてるみんなを見たら、少しくらい休憩してもいいかって思ってナミ達と水着を買いに行った。早く海で遊びたいのに初めて着るタイプの水着に苦戦してたところで部屋にルフィが入って来た。しかも何か探し物をしてるみたいであたしに気付かずに堂々と中に入ってきたから、さすがに恥ずかしくて怒って部屋から追い出した。ゾロは何も考えてないルフィなんかに見られたって何ともならないだろって言ったけど、あたしとしては男の人に見られたことが問題なのに。

誰も分かってくれなくて負けそうになってたところにサンジくんが出てきてくれた。一番の味方のサンジくんに助けてもらおうとしたのに、あたしと目が合った途端に鼻血を出した。

なんだか裏切られたみたいで反射的にバカって言っちゃった。その後のサンジくんはなんて声をかけたらいいのか分からないくらい落ち込んじゃってて、話を切り出すタイミングがなくなった。

そんな時にオルジが出てきてまた誘ってきて、断ったのにしつこくて。そしたらサンジくんが割って入ってくれてどうにか追い返すことができたけど、その後ウジウジしてたからゾロを怒らせちゃったし結果的にこんなことになっちゃったし、なんだかもう悪い方向に向かってばっかり。


久しぶりに会った目の前のオルジは何一つ変わってなくて、あたしを仲間に入れようとすることさえ諦めてなかった。だけどどんなに優しく言われても、何があってもあいつの仲間になるつもりはない。あたしには大切にしたい仲間がいる。

「放っておけないからここに連れて来たんだ。おれの仲間になろう、リリナ。今度こそ」
「ならない。あたし、あなたの仲間になんて絶対なりたくない!」
「………お前の選択肢は二つだ。大人しく今おれの仲間になるか、このまま腕を切ってでも、あいつらの所へ帰るか、だ」
「……なに?」

二つ目の選択肢をあたしに迫るオルジの目はさっきまでとは違って、背筋が凍るような怖さが感じられた。

「はは。そう恐怖に怯えた顔なんてしなくていいのに。それが嫌ならおれの仲間になればいい話だろう?」
「……やだ……」
「さァリリナ、二つに一つだ」

あたしにとって腕は大事な攻撃手段なのに。この腕がなきゃ風を起こすことができない。もし腕を落としてみんなのところに帰っても、もうこの先戦闘に加わる事ができなくなる。そしたらみんなと一緒に航海するのも辛くなる。でも、だからってこいつの仲間にはなりたくない。だって、こんな選択させる人になんてついて行きたくない。

「やだよ!こんなの……」
「おれだって出来ればこんなこおしたくないさ。だがリリナを仲間に入れる為、仕方のないことなんだ」
「………」
「少しだけ、時間をあげよう。とにかく少し気持ちを落ち着かせてから答えを聞かせてくれ」

そう言って小屋から出て行った影に怖かったものが少しだけ薄れてった。時間をもらったってあたしの気持ちは変わらない。

なんであたしにこだわるの。強くもないしこれといって得意なものもない。それに泳ぐこともできないからただ足手まといになるだけなのに。

「……みんなっ」

サンジくん……ごめん。サンジくんに八つ当たりしたからきっと困ってるよね。あたしがまだ子どもだから、意地張って謝らなかったからこんなことになったんだ。みんなにもん…きっと、迷惑かけてる。……もうこんなところにいたくない。サンジくんに会いたいよ。ごめんなさいって言いたい……サンジくんの声が聞きたい……。