016

「チョッパー、これなーに?」
「これは痺れをとるための飲み薬だ」
「飲み薬?こんなちょっとだけでいいの?」
「これでも充分なんだぞ」

いま、キッチンでチョッパーがリュックの中を整理してるのを見学してるところ。中から出てきた薬は透き通った綺麗な色をしてるものとか、ちょっとくすんだ色をしてるもの、濃い色や薄い色たくさんあってとても綺麗。この痺れ薬も綺麗な青色で透明な小瓶に入ってるから目に近づけると、ほら!前に座ってるナミが見える。小瓶越しにみるものが周りが全部青になる。海の中みたい。青いナミ、青いチョッパー、サンジくんも青だ。

「楽しー!」
「あんた青好きなの?」
「すき!だって海も空も青だもん!」

にっこり笑ってそういうとふーん、って頬杖をついてるナミが笑い返してくれた。チョッパーに小瓶を返すと整理が終わったみたいで今度は分厚い本を取り出して読み始めた。ナミも海図を描いてるし、急に暇になっちゃった。サンジくんは黙々と何かやってるから邪魔しちゃ悪いし。


「ナミさん来て!正面に何かあるみたい!」

ビビがキッチンのドアを開けて来た。外に行くと少し先の海面から煙が立ち上がってた。あ、あれ知ってる。ホットスポットって言うんだよね。マルコが前に教えてくれたんだ。

その蒸気の中に入ると硫黄の臭いがすごくて周りが何も見えなくなった。臭い!硫黄の蒸気の中を少し進んだところで人の気配を感じた。知らない人だ。しかもいっぱいいる。でも抜けた頃にはその気配は1つだけになっててその方向を見るとカルーにしがみ付いたオカマがいて、それに気づいたみんなが驚いて叫んだ。

「オカマが釣れたああああ!!」

得体の知れないオカマにみんな口をあんぐり開けていると事態をのみ込んだオカマが驚いて海に落ちた。知らないオカマだし、まあ自力で上がってくるだろうと思ったらカナヅチだってもがいてたから冷静に釣りあげた。そこでオカマは遠目で見てたほうが綺麗だと気付く

「死ぬかと、思った。いやーほんとに、スワンスワン。見ず知らずの海賊さんに命を助けてもらうなんて、このご恩一生忘れません!あと温かいスープを一杯いただけるかしら」
「ねえよ!」
「こっちが腹減ってんだ!」

ここ最近はまともにご飯を食べられてない。特につっこんだ男性陣。

「お前泳げねえんだなー」
「そーうなのよー、あちしは悪魔の実を食べたのよう」
「へー、どんな実なんだ?」

ルフィ、ウソップ、チョッパーが興味あり気にオカマのところに行っちゃって、あんな近くには行きたくないけど見たくないわけじゃないからゾロと一緒に遠まきに見ようと隣に座る。そしたらオカマがいきなりルフィを平手打ちしたから隣のゾロにつられて立ちあがって身構える。前に立ったゾロは剣を抜いてる。

「まーってまーってまーってよーう!余興だって言ったじゃなーいのよーっ!」
「なっ!?」
「ジョ〜〜ダンじゃなーいわよーう!」

顔を隠してた手をどかしたオカマの顔はルフィの顔で声もルフィで、でもルフィはいて、でもこっちもルフィだからって2人を交互に見る。

「はっ?おれだ!」
「びびった!?びびった!?がーっはっはっはっは!右手で触れればホラ元通り。これがあちしの食べたマネマネの実の能力よーう!」
「体格まで同じだったぜ!」
「声もルフィだった……」
「スッスゲーー!」
「まあもっとも殴る、必要性はないんだけどねーいっ……ん?え?……ちょっと」

オカマはこっちに歩いてきてみんなの顔を順番に触ってて、あたしも触られそうになったとこを避けると空振りしたことに驚いてそれが何回か繰り返される。知らないオカマに触られたくない!

「あ!あなた白ひげ海賊団のリリナじゃないのよう!なーんであなたがこんなとこにいるの!?」
「教えないもん」
「さすがだなーお前」

名前を知られてたことが嬉しくて少し口が緩んじゃったけど平気。怪しい人に簡単に近づいちゃいけないんだから。

「ま、まあいいわ。……この右手で顔にさえ触れればこの通り誰のマネでもでーきるってわけよう!体もね」
「ぶうっ!!」

ナミのオカマは大胆にも前を露出させて、怒ったナミはいつものようにオカマをぶってた。

「……さて、残念だけどあちしの能力はこれ以上見せるわけに」
「お前すげー!」
「もっとやれー!」
「さ〜ら〜に〜、メモリー機能つきぃっ!過去に触れた顔は決して!忘れなーい」

そこで終わりだったはずなのに、ルフィ達に囃し立てられてもう1つの能力を見せていて、変わるがわる顔が変わっていくけど、知らない顔ばかりで隣のゾロがくだらねェってボヤいてた。

「どぅーうだったあ!?あちしのかくし芸っ!普段人には決して見せないのよう!?」
「イカスー!!」
「ジョーダンじゃなーいわよーう!ジョーダンじゃなーいわよーう!」

盛りあがった4人は肩を組んではしゃいでいて、楽しそうだから混ざりたいなーって思った。でもオカマはやだな。そこで船をみつけたナミがオカマに教えてあげててお別れの時間だって別れを惜しんでた。オカマのどこがいいの?

「悲しむんじゃないわよう、旅に別れはつきもの!でもこれだけは忘れないで。友情ってやつぁつきあった時間とは関係ナッスィング!」
「また会おうぜー!」

最後の言葉を聞いて、意外と悪いオカマじゃなさそうだったからあたしも心の中でもう少しいて欲しかったなって思っちゃってて。

「さあ行くのよお前たち!」
「はっ!Mr.2ボン・クレー様!」

Mr.2ボン・クレーって名前を聞いた途端表情が変わったみんなに首を傾げる。変な名前だけどそんなに驚くことなのかな?分からないことはナミに聞こう。