017

Mr.2と呼ばれたオカマに驚くみんな。話を聞いてるとそのオカマは敵のオカマみたいで、そのメモリー機能を使われたら厄介なことになるって。しかもそのメモリーの中にビビのお父さんの顔があったらしい。

「確かに、敵に回したら厄介な相手よ!あいつがこれから私達を敵と認識しちゃったら……さっきのメモリーでこの中の誰かに化けたりしたら……私達仲間を信用できなくなる」
「そうか?」
「え?あのねえ、ルフィ」
「まあ待てよ。確かにこいつの意見にゃ根拠はねェがあいつにビビる必要はねェって点では正しい。今あいつに会えたことをラッキーだと考えるべきだ。……対策が打てるだろ」
「対策?どんなこと」
「ニャーーーーッ!!」

ゾロの言う対策って何するのか、話を続けようとしたら船尾の方向からいきなり猫みたいな海王類が海面からあがってきてルフィとゾロがすぐに向かって行くと、騒ぎを聞きつけたサンジくんもキッチンから出てきて船尾のほうに向かってった。かわいい猫だ。

「海ねこ!」

ルフィ達は海獣だーとか4日ぶりのメシだーとかいきり立ってて猫に夢中みたい。あんなかわいいの食べちゃうの?見境ないんだなあ、可哀想に。

そんなことを考えてるあたしを他所に3人は海ねこに狙いを定めてて今すぐにでも飛びかかって行きそうなところに、ビビがどこから出してきたのか分からないトゲトゲの鉄棒を横振りして3人の後頭部に直撃させて狩りを止めたけど、あのトゲトゲ刺さらないのかな?血出てないみたいだしあの3人の頭かったいんだな。

「な、なんで!?ビビちゃん!」
「ビビ、コノヤロ何すんだァ!」
「食べちゃだめなの!アラバスタで海ねこは神聖な生き物だから」

あんなかわいい海王類食べたら何かバツがありそうだよね。さすがはビビ。

「ビビ!風と気候が安定してきたみたい」
「ええ、アラバスタの気候海域に入ったの。海ねこが現れたのもその証拠」
「後ろに見えるあれらも、アラバスタが近い証拠だろう」

メリー号の後ろにはまだ距離のある船もあるけどたくさんいて帆にはバロック・ワークスって書かれてるから敵の船なんだな。会社の名前?

「船!」
「船があんなに!いつの間に!?」
「おいあれ全部バロックワークスのマーク入ってんじゃねェか!」
「社員達が集まり始めてるんだわ!あれはおそらくビリオンズ!オフィサーエージェントの部下達よ」
「敵は200人はかたいってわけだ」
「それもバロックワークス社精鋭200人、ウイスキーピークの賞金稼ぎとはわけが違う!」

ルフィとウソップは驚いて声が大きくなってるけど、他のみんなは意外と冷静でそれを見たら何故かドキドキし始めてきた。

「い、いい!今のうちに砲撃するか!!」
「行ってぶっ飛ばしたほうが早ェよ!いやまて!メシ食うのが先だろ!」
「バカ。気にすんなありゃザコだ」
「そうさ!本物の標的を見失っちまったら終わりだぜ。こっちは9人しかいねェんだ」

慌てる2人に対していつも通り落ち着いて話すゾロとサンジくんの声にドキドキしてた心臓が少しずつ治まりはじめた。


それからゾロがチョッパーに包帯を持ってきてもらってて、何するのか聞いたら対策とだけ言われた。当然理解できずに首を傾げる。

「腕に印を書いてその上から包帯を巻くんだ。そしたら、簡単に敵にバレねェしおれ達も確認しやすい」
「印ならバツがいい!」

ゾロの説明を聞くとすぐにルフィが声をあげたから、疑問を持ちかけると海賊だからっていつもより少し真面目な顔して言ってた。

「でもありゃ本来相手への死を意味するんだぞ」
「いいんだ、バツがいい。なァビビ、かっこいいもんな!」
「うん。私もそれがいい」
「何でもいいから描けよ。本題はそこじゃねェんだ」

そこまでの話を聞いてから腕にバツ印を描いて腕をあげて自分で見ると、自然とほっぺが緩んだ。

「いいか。あのオカマ野郎の変身は完璧だ。いつこの中の誰かになりすましてビビの命を狙ってくるかも知れねェ。仲間を少しでも怪しいと感じたら、この包帯を取って印を見せあう。それができなきゃニセ者だ」
「へェ、二段構えの印とは気が利いてておめェらしくねェな。……さてはおめェがすでにオカマ野郎!?」
「斬るぞてめェっ!!」
「お、ゾロだ」
「なんだゾロか」
「よかったゾロだ」

サンジくんの言葉にドキリとしたけどいつも通りの返しに胸を撫で下ろすと隣にいたルフィとウソップも同じだったみたい。

「とにかくしっかり締めとけ。今回の相手は謎が多すぎる」
「なるほど、これを確認すれば仲間を疑わずに済むわね。……リリナおいで。巻いてあげる」
「うん!」

なかなか包帯の結び目が作れないでいたらナミが声をかけてくれたから隣に移動した。ナミとビビはもう結んであって、それを見たらまたほっぺが緩んだ。


「港に近づいてきたぞ」
「西の入江に止めましょう。船を隠さなきゃ」
「よし!とにかくこれから何が起こっても、左腕のこれが、仲間の印だ!」

腕に巻いた包帯を見せるように拳を前に突き出したルフィにみんなが同じように前に拳を出して、それぞれの腕を確認した。なんとなしに目線をあげると向かいにいたサンジくんと目が合って目線を細めて柔らかく笑ってくれたから、あたしも笑い返した。

「……じゃあ上陸するぞ!メシ屋へ!あとアラバスタ」
「ついでかよ!」