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朝起きてきたら何でか分からないけどサニーにケイミーが乗ってた。あとパッパグも。魚人島が近づいて来たからいてもおかしくないんだけど、ここにいるのはやっぱりおかしい。

話を聞いてると海獣に食べられて上の方まで来ちゃったんだとか。いつもはハチがいるから大丈夫なはずなんだけど、そのハチがマクロ一味にやられて捕まってるみたい。

「それよりおめェら軽く引き受けてくれたが、腕っぷしに自信あんのか?」
「うん、強ェぞ」
「先に言っとくがこの辺りにゃ人攫いって裏稼業の集団が何十チームも存在する!シャボンディ諸島という場所で人間の売買な盛んに行われてるからだ」
「人間を売り買いすんのか!?ひでェな」
「…………」
「中でも人魚はいーい値で取り引きされるからマクロ一味って魚人の3人組はしつこくケイミーを狙って来る。タコ焼き屋のハチはたぶん、今回おれ達が海獣に食われて帰って来ねェのをマクロ一味に攫われたと勘違いして乗り込んでったんだと思う」
「大丈夫だよパッパグ。ルフィ達すっごく強いから!」

少しルフィ達を疑いの目で見てたパッパグを安心させるために言ったのに、あたしのことはたまに信用できないって言われた。酷いよね、あたしが言うからこそ本当なのに。


ケイミーが呼んだ魚達の案内でハチが攫われてる場所に向かった。ブルックの歌と演奏で賑やかに進んでたところで遠くから、何かがこっちに向かってくるのを感じた。空から飛んできたのは魚とそれに乗ってる人。パッパグがいうには、あれが今回マクロ一味と手を組んでるトビウオライダーズって言うんだって。楽しそう。あたしも乗ってみたい。

そいつらは何回かサニーを砲撃したあと、すぐに引き返してった。

「あれ乗りたーい!」
「おれもー!」
「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ」
「なんで引き返してったんだ?」
「サニーが強すぎて勝てないと思ったのかもね」
「そりゃ良い!」
「馬鹿!」

5分の間空を自由に飛べるんじゃ対策を練らないとってナミが言うから倉庫から大砲を甲板に引っ張り出して、戦闘の準備を整えてからアジトに向かった。


着いた場所は島でもなくて海のど真ん中に立ってるちょっとした建てもの。その真ん中のあたりに立ってるカゴの中になぜか真っ黒になってるハチが閉じ込められてる。

「キャー!はっちん真っ黒け!どうしたの!?コゲたのー!?」
「ニュ〜!?いやあコレはちょっと……おれの都合だ。それよりコレ罠だから早く引き返せ!おれは強いの知ってるだろ!?大丈夫だ行ってくれ!」

ケイミーとハチの会話を聞いてたナミの顔が険しくなった。ゾロの眉毛のシワも深くなってるし、なにかまずいことでもあるのかな。

「……やっぱ聞いた声にあの珍しいシルエット。おいナミどうだ」
「うーん……怪しい、っていうかほぼ……」
「何が?」
「聞いてみよう。……おい!アーロンは元気かァ!?」
「ニュ〜!?あァ!アーロンさん!?あの人もチュウもクロオビもみんな海軍に捕まったままよ!おれ一人で脱獄してきて、今昔からの夢だったタコ焼き屋やってんだけど……しまったーー!!」
「おめェかやっぱりー!」

話を聞いてるとどうやらハチとナミ達は知り合いみたいで、昔ナミとアーロンとで何かいろいろあったんだって。知り合いって言ったら怒られたけど。

「何だお前だったのかはっちんっていうタコ焼き屋は!アーロンとこのタコッパチー!そうとわかりゃおれ達はお前なんか助けねェぞ!」
「ニュ〜……」
「……でも!お!お前のタコ焼き!そんーなにうめェのか!?」
「揺れんな、食欲と理性の狭間で!」

ルフィはタコ焼き食べたさに揺れ動いてるけど、他のみんなはもう助ける気はなくなったみたいで脱力状態。ケイミーは悲しそうに目に涙を浮かべてる。何があったのか分からないけど、あたしは別に動いてもいいよね。

「リリナちん!」
「うん、あたしが助けるよ!安心して」
「おいお前勝手なことすんなよ?」
「みんなが動かないならあたし一人で助ける!だってあたしまだこの船のクルーじゃないもん!」
「ずいぶん都合のいいこったな」
「石頭!」
「てめェ何も知らねェくせに……!」
「はっちん私も助けるから!」
「待ってろハチィ!」

あたしが頭の固いゾロと言い合いをしてる間にケイミーとパッパグが一足先にハチを助けに海に飛び込んでいった。そしたら海の中で待ち構えてたマクロ一味にまんまと捕まった。

「ケイミーとパッパグを返して!」
「誰が返すもんか!悔しかったら奪い返してみろー!」
「……うぅ……」

あたしが泳げないの知っててああいうこと言ってるんだ。悔しい!船の上からでも攻撃仕掛けたいけどあたしそんなに上手くないから、きっとケイミー達に当たっちゃう。でもどうにかしなくちゃ……!

作戦なんて何にも思いつかないけど、とにかく暴れてみれば向こうもどうにかなってくれるかもしれない。動かないよりは全然いいよね!

「WヴィントホーゼW」

海の表面に竜巻を起こして空中で待機してたトビウオライダーズの編隊を崩させた。油断しててよかったけど、やりたかったのはそれじゃないや。でもそのおかげで向こう側が少し乱れたからそれなりに効果あったみたい。

「女 子どもだって容赦しねェぞ!」
「あたし子どもじゃないもん!」

敵のアジトの方に構えてた奴らに向かっていくと、子どもだって言われた。久しぶりに言われてショックだった。前はよく言われてたけど、最近は言われなくなったから身構えが出来てなかった。確かにさ、ナミとロビンと一緒にいればあたしなんか子どもに見られるだろうけど、それでも二人といるからこそ最近は大人の女っぽくなってきたと思ってたのに。

「リリナちゃん!」

敵との距離が近すぎて風を起こすよりも先に手が出たとき、体格差リーチの差で男が持ってたナイフがほっぺを掠った。そのとき、サニーにいるサンジくんの声がしたから、こんなときなのにドキッてした。

切れたほっぺを構わず風を押し出して目の前にいた男を建物の壁に叩きつける。木の作りをした家だから真ん中で二つに折れて男と一緒に建物の中へ崩れてった。

「いいわ!ハチも解放しましょ。ハチは大丈夫!実は無害な奴だから!だってこれじゃケイミーとの約束が違うもんね!……ルフィ!」
「おめーがいいんなら仕方ねェ!タコッパチも助けよう」
「目がタコ焼きなんですけど!」

結局みんなも助ける事になったんだけどやっぱり人数は多い方がいいみたで、ルフィがケイミーとパッパグを助けてからはゾロがハチを助けたおかげでハチも自由になって味方が増えた。サニーに突撃してくるトビウオライダーもルフィとサンジくんが難なく防いじゃうし。そんなサンジくんを見てたら、何にもしてないのに心臓がドキドキしてきた。

飛んでくるトビウオ達にも苦労する事なく片付けてると、建物を壊して中から大きな動物に乗って人が出てきた。仮面をつけてるから顔がわからない。大きくて怪しい人。

「めでてェ日だ、今日は……!殺したくて殺したくて夢にまで見たその男が……今おれの目の前にいる!ありがてェ……神様ってのァいるんだな!ある日突然おれを地獄のどん底へと突き落としやがったその男!」
「アイツこっち見て喋ってねェか?」
「男だって。ゾロじゃない?」
「おれは今日ここで……!たとえ刺し違え様とも、必ずお前を殺す!!海賊黒足のサンジ!!会いたがったぬらべっちゃ……」

殺したくなるような恨みをかう人なんてこの船にはゾロくらいしかいないと思ってたのに、まさかサンジくんの名前が出てくるなんて思わなくて驚いた。サンジくんあの人に何したんだろう……。