169

ハチを捕まえて麦わらの一味を誘き出したトビウオライダーズのボスの鉄仮面男は、ずっとサンジくんを探してたんだって。サンジくんも恨みを買う覚えがありすぎて検討がつかないみたい。さすが、海賊って感じ。関心してたら銛がメリーに向けて飛んでった。しかも毒付き。

「おれ、あの仮面の下見た……!」
「本当か!?何者だよ」
「今見せる!驚くなよ!?お前らも知った顔だぞ」
「おれらも?」

ルフィが勢いよく仮面の男のところへ走っていって、勢いのまま足を伸ばして上手く仮面だけ外してみせた。

「いいさ、よく見ろ……!このおれの傷ついた顔をよく見ろよ……!」
「こいつ……!」
「あらら」
「……おぉ」
「今日という日を待ってたんだらべっちゃ。貴様をブチ殺すと心に決めてオラは海さ出た……!だどもおめェを探すのは、大変だったべっちゃ……!手配書と本人の顔が違ーがらなァ……!海軍や賞金稼ぎはもすかすて本人を身がげでも素通りがもすれねェぬらなァ!……いィや、そんだらことはねェ!奴らはお前を見づげる!見づけでそいづらこう言うぬら。見づげだどー!黒足のサンジ!そしてオラは言う。オラ違うよォー!!オラそんな奴知らねェよー!海賊ですらねェぬらべっちゃ!!」

仮面の中から出てきたのはあの海軍が出した手配書のサンジくんと同じ顔だった。こんなことってあるものなんだなあ、世界は広いなあ、なんて思う。きっとあの似顔絵の手配書が出回ってからあの人は、何回も何回も間違われて殺されかけてきて本当に死に物狂いでここまでやってきたんだろうな。そりゃあサンジくんを殺したくもなるのかもしれない。

「オラが一体何をすた!?オラの人生を返せェー!」
「知るかァーー!!」

サニーから走って降りてきたサンジくんは一直線にあの男のところに走ってきて、ツッコミを入れた。

「……ふふ」
「おい笑うな。あいつ怒るぞ」
「あたしもそう思うんだけどね……」
「……お前ってたまに酷ェやつだよな」

二人が並んであーだこーだ言ってるのを見ると、堪えきれなくて笑っちゃったら近くにいたゾロに聞こえちゃったらしい。あたしだって出来れば笑いたくなかったよ。あの手配書を見たサンジくんがウォーターセブンでどれだけ落ちこんでたことか。
だけどあの絵のままの人が動いてるところを見ちゃうと、どうも堪えきれなかったんだよ。あたしの小さく漏れた笑い声は、隣にいたブルックの笑い声のおかげでサンジくんには届かなかったみたいで安心した。

「おれ達ァなァ黒足ィ。おれ達ァ……!この海の片田舎で、しがねェマフィアをやってたんだよ……!村の住人達をオドし回って暮らす、それなりに幸せな人生だった……!それがどうだ。ある日突然現れたレベル違いの海兵達。背中に大きな逃げ傷をうけ、世間にゃ二度とツラを晒せず鉄仮面……!おめーのせいでオラの人生メジャグじゃだらっちゃ!オラはおめーを地獄の果てまで追っていぐべっちゃ!それがイヤなら今ここでオラを殺せばいいぬら!」

その言葉通りにサンジくんがあの男の首を握ると、予想してなかったのか一気に青い顔になった。この話はどっちも可哀想でしょうがないね。どうしようもないもんね。サンジくんは全然似てないし、あの男はそっくりだけど本人じゃないし。どっちかがどうにか変わるしかないよね。……でもサンジくんには今のままでいてほしいからぜひあっち側に変わってもらいたいな。

「てめェのくだらねェ言いがかりで何でおれのレディが危ねェ目に遭わにゃならねェんだ!!」
「おめーが海賊として名を揚げちまった原因の船!おめェら全員死ぬがいいー!」

至近距離で打たれた毒の銛を躱したサンジくんにトビウオライダーズが用意してた網にサンジくんを捕まえてそのまま海の中へ飛び込んでった。

「サンジくん!!」
「くそォ!今助けに」
「お前が行くなバカ!おれが行って来るからよ!」
「あたしが行く!」
「リリナは泳げねェだろ!それに人間じゃ追いつかねェ!おれに任せろ」

サンジくんが海の中にさらわれた。助けに飛びこもうとしたらハチに止められた。確かにあたしじゃ助けられないけど、早くしないとサンジくんが苦しくて死んじゃう。陸地のギリギリまで出て海の中のサンジくんを確認したけど、ずっと深くまで行っちゃったみたいでもう見つけられない。

「サンジくん……!」
「大丈夫だよ!」

どうしたらいいのか分からなくて動く事ができないでいたら、あたしの隣からケイミーが海の中に飛びこんでった。そうだ。人魚は泳ぐのが一番速いんだって聞いたことがある。ということはケイミーにならサンジくんを助けられる。

ケイミーに助けられて海からあがってきたサンジくんは鼻血をすごい勢いで流してて、あんなに心配して損した気分。無事でなによりなんだけどね。

「もうずいぶん部下が減ったな」
「おのれ。……ならばモトバロの恐ろしさを知るがいい!今日の日までにこの強靭なツノの餌食となった者の数計り知れず。村のダムに風穴を開けたのもコイツのツノ!檻に入れりゃあ突き破る!海軍の追っ手から命からがら逃げ果せたのもコイツのツノがあったお陰だ!」
「よーし止めてやる」
「人呼んで心臓破りのツノ。行けモトバロ〜!」

大きい牛が目の前のルフィに向かって突進してきたのを、がっちり止めて睨みつけると牛は急に震えだしてルフィにおしりを向けて歩いてったら限界が来たのかそのまま倒れた。

「何が起きたの?ルフィ何したの!?」
「……?おれなんもしてねェぞ?」
「………これって……」

見覚えのある光景だ。そこらへんの人が持ってるようなものじゃないやつ。王の、資質を持った人だけが得られる覇気。それがルフィに?……でもそんなに不思議なことじゃない。だって、エースが持ってるんだもん弟のルフィが持ってたっておかしくない。でも驚いた。